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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
183-2.正しさと罪
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「その後、見せしめとして集落の中枢を担っていた者の首は落とされ、一族は同胞でなければ即座に牙を剥く獰猛且つ危険な人物の集まりだという判断が下された。……その後、アタシ達を襲った魔導師達に連れられ、捕縛された一族はばらばらになり、アタシは一部の者とこのフォルトゥナへ運ばれた」
ヘマは先程ほんの少し感情を顕わにしたものの、その後は落ち着いた声音で話し続けている。
もしこの話がつい最近起こったことであったのだとすれば、こうも冷静に話は出来ないだろう。彼女の話す過去が近くはない物である事は想像に難くない。
「アタシ達の汚名は世界中に広がり、魔導師の手から逃れた生き残りも捕えようと動く国もある。一族を生かしておくことが危険だと判断された国では命を落とした同胞の為と移送した部族全員の首を刎ねたらしい」
部外者であるクリスティーナ達はヘマの主張だけを鵜呑みすべきではない。
恨みや妬みという感情から生まれ、語られる記憶には主観が入りやすい。そのことをクリスティーナは理解していた。
だがそう理解していたとしても、彼女から語られる話はあまりにも理不尽で嫌悪を抱くような物だ。
「フォルトゥナでも無暗に抵抗した者は殺されたし、一族の壊滅へ携わった者達の思い通りになるくらいならと自死した者もいる。……怒りに任せて暴れたアタシが生きているのは処刑の直前、偶然ディオンさんと出会えたからに過ぎない」
ヘマはそこで間を空けると、重苦しい空気を和らげるように大袈裟に肩を竦めた。
そして呆れ混じりの苦笑を漏らす。
「……まあ、これはディオンさんから聞かされた事でもあるし、自分で調べて確信した事でもあるんだが。集落の派遣の主導権を握っていたのは一国であり、他の国は研究の成果の共有を条件にその国へ人手を貸していたに過ぎなかったらしい。フォルトゥナもそうだ」
「どういうこと?」
国境を越えた騎士の派遣による討伐遠征や魔導師の派遣による共同研究等は珍しい話ではない。
その際、互いに求める結果は同様であり、故に手を差し伸べ合うのが普通だ。遠征や研究には詳細の話し合いや下準備等、互いの利益の為を考えれば人材の派遣以外にもすべきことは多くある。
故に人手を貸していただけという言い回しはどうにも違和感があるとクリスティーナは感じた。
「協力した国々は魔導師を何名か派遣したものの、この件に殆ど口を出さなかった。そして丸投げにしている内、この件を任されていた国から好ましくない事の顛末を聞かされた――つまり、協力した殆どの国は真相を知らない可能性が高いという事だ」
ヘマは先程ほんの少し感情を顕わにしたものの、その後は落ち着いた声音で話し続けている。
もしこの話がつい最近起こったことであったのだとすれば、こうも冷静に話は出来ないだろう。彼女の話す過去が近くはない物である事は想像に難くない。
「アタシ達の汚名は世界中に広がり、魔導師の手から逃れた生き残りも捕えようと動く国もある。一族を生かしておくことが危険だと判断された国では命を落とした同胞の為と移送した部族全員の首を刎ねたらしい」
部外者であるクリスティーナ達はヘマの主張だけを鵜呑みすべきではない。
恨みや妬みという感情から生まれ、語られる記憶には主観が入りやすい。そのことをクリスティーナは理解していた。
だがそう理解していたとしても、彼女から語られる話はあまりにも理不尽で嫌悪を抱くような物だ。
「フォルトゥナでも無暗に抵抗した者は殺されたし、一族の壊滅へ携わった者達の思い通りになるくらいならと自死した者もいる。……怒りに任せて暴れたアタシが生きているのは処刑の直前、偶然ディオンさんと出会えたからに過ぎない」
ヘマはそこで間を空けると、重苦しい空気を和らげるように大袈裟に肩を竦めた。
そして呆れ混じりの苦笑を漏らす。
「……まあ、これはディオンさんから聞かされた事でもあるし、自分で調べて確信した事でもあるんだが。集落の派遣の主導権を握っていたのは一国であり、他の国は研究の成果の共有を条件にその国へ人手を貸していたに過ぎなかったらしい。フォルトゥナもそうだ」
「どういうこと?」
国境を越えた騎士の派遣による討伐遠征や魔導師の派遣による共同研究等は珍しい話ではない。
その際、互いに求める結果は同様であり、故に手を差し伸べ合うのが普通だ。遠征や研究には詳細の話し合いや下準備等、互いの利益の為を考えれば人材の派遣以外にもすべきことは多くある。
故に人手を貸していただけという言い回しはどうにも違和感があるとクリスティーナは感じた。
「協力した国々は魔導師を何名か派遣したものの、この件に殆ど口を出さなかった。そして丸投げにしている内、この件を任されていた国から好ましくない事の顛末を聞かされた――つまり、協力した殆どの国は真相を知らない可能性が高いという事だ」
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