【R18】王太子は初恋の乙女に三度、恋をする

瀬月 ゆな

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プロローグ

きっとこれが最後の繋がり  ☆

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 リヒトは性急な仕草でネクタイを外し、シャツを脱ぎ捨てた。
 程よく筋肉のついた引き締まった身体は、記憶にあるものよりまた少し逞しくなっているような気がする。
 顔もアリーシェリナの知るあどけなさは完全に影を潜めていた。リヒトはアリーシェリナが知らない間に母親の身体になっていると、彼自身も大人になったと言ったけれど、その通りだ。
 アリーシェリナが知っているようで知らない大人の男性がそこにいる。

「リヒト様は……ますます大人っぽくなった気が……します」
「うん。そうだね。僕はもう子供でも、記憶を失って何も持たない存在でもない」

 そうやって先程から何度も見せてくれる笑顔は、アリーシェリナも知る好きな表情だ。

 胸が痛い。
 アリーシェリナは心臓の辺りをそっと右手で抑えた。
 心臓がうるさいくらいに高鳴っている。それは今にも飛び出してしまいそうな激しさを伴い、もしも飛び出したのなら彼への思慕も消えてしまうのだろうかと思った。

(でも、私のこの気持ちは消えて欲しくない)

 無意識に右手に力がこもる。宥めるように上から抑えつけ、静かに息を吐いた。

「ごめんね、君だけ素裸だから冷えて来てしまったかな」
「あ、いえ……」

 寒さを覚えたと勘違いしたらしい。リヒトは形の良い眉をわずかに下げた。
 熱を分け与えるように肩口に触れる。
 触れられれば奥底に熱が灯った。

 切なさを孕んだ吐息がこぼれる。

 寒くはない。
 でも、身も心も温めて欲しい。

 想いを乗せた目で訴えかければリヒトもまた、頷き返した。

「身体中が燃え盛ってると勘違いしてしまうくらい、温めてあげる」

 くつろげたトラウザーズ中に収められているものは、すでにその存在を主張して屹立している。
 何度もアリーシェリナを貫いては穿つ熱杭に、どれほどの快楽を与えられたことか。それを刻み込まれた身体は久し振りの恋にときめく鼓動に煽られ、ひっそりと情欲の炎を燃え上がらせた。

「胸は、あまり触れない方がいい?」

 刺激を与えたらまた母乳が潤むことを気にしているのだろう。
 アリーシェリナに覆い被さるリヒトは心配そうに尋ねた。

 肌と肌が、触れる。
 お腹の辺りにひときわ強い熱量を感じ、表層に芽吹きはじめた情欲が完全に煽られた。早く来て、とねだるように甘く切ないものが奥底からじんわりと湧き上がった。
 アリーシェリナは自分で思う以上に"凍えている"と気づかされる。

 リヒトにたくさん触れて欲しい。
 でも、以前のように触れられたら、離れられなくなる。たとえ彼もそれを望んでくれているのだとしても、アリーシェリナにはもう手を取る資格はないのだ。

「君の胸を愛でるのも好きだから残念けど、今は仕方ないね」

 しばしの別れを惜しむようにリヒトがそっと胸の頂に唇を寄せた。
 再び唇は下りて行き、手が優しく太ももを撫でる。それから膝裏に手を添えて左右に割り開けば、わずかに響いた水音にアリーシェリナの肩が震えた。

「可愛いね、アリィ。もう濡れてる」
「ゃ……。あ……」

 まだ、脇腹を幾度か啄まれただけだ。
 それでもアリーシェリナはリヒトを受け入れる準備をはじめていた。

 細い指が、遠慮もなしに秘裂をなぞる。
 その度に淫らな水音が上がり、新たな蜜がどんどん溢れているのが自分でも分かった。
 アリーシェリナの本能はこんなにも簡単に、あけすけにリヒトを求めている。
 はしたなくて、でも欲しい気持ちに嘘はつけない。蜜にまみれた指が固く尖った蕾をつまんで上下に扱くと、背筋に甘い痺れが駆け上がった。

「だめ……。あ……、リヒ、ト、様……」
「だめじゃないだろう?」
「いじわ……。んっ、あっ」

 小さな蕾が大きな快楽をもたらし、あっという間にアリーシェリナを侵食して行く。目の前がちかちかして、身体中を駆け巡る快楽を逃がそうとシーツをきつく掴んだ。

「あ……っ! ひぁっ、あ……っ、や……! あ――!」

 絶頂の波が押し寄せ、アリーシェリナを攫った。

「アリィ、もう達したの? 相変わらず敏感で可愛いね」

 リヒトの優しい声が心をくすぐる。
 アリーシェリナは心地良さに身を委ねて吐息をこぼした。

「でもこれからもっと気持ちよくなるよ。――まずは、指からだね」

 その言葉に下腹部が反応を示す。
 ごく小さなはずの動きが見えたのか、リヒトの指が下腹部をなぞる。そしてよりいっそうと意識させるかのように軽く指先で突いた。

「アリィの好きだった、ここ・・。内側からたくさん触れて、蕩けてしまいそうなくらい気持ち良くしてあげる」
「っふ……!」

 秘裂をかき分け、ぬかるみの中心に指先が触れたかと思えばゆっくりと胎内に入って来る。

 たった指一本なのに、とても大きなものに感じられた。
 久し振りに触れ合ったことだけが理由じゃない。
 リヒトの身体の一部が自分の中に入っている。
 それはアリーシェリナの身も心も満たすには十分なことだ。

「きつ……。子供を生んだ後、ここには誰も入らなかったの?」
「あ、ぅ……っ、ん……っ」

 もどかしさすら感じるような速度で人差し指が根本まで入り、アリーシェリナは吐息交じりに頷いた。

 子供が生まれる前も後も、触れたのはリヒト一人だけだ。
 でもそれは言えない。だから彼の言葉に頷くだけに留めた。

 嘘はついてない。
 誰も入らなかった。
 触れて欲しい人なんてリヒト以外には誰もいなかった。

「まだ、ここも好き?」

 探るように動く指がざらついた場所を捉える。
 途端にアリーシェリナの身体が跳ねた。弱くて敏感な場所を擦られ、甘い快楽をもたらすリヒトの指に貪欲に絡みつく。

「あっ、ゃ……。ん……っ」
「指を増やしても大丈夫かな」
「ひ、ぁ……っ」

 答えるより先にもう一本の指が新たに押し当てられ、入って来た。
 アリーシェリナはゆっくりと息を吐いて受け入れる。
 自分の中にあるリヒトの存在が大きくなった。忘れようと懸命に心の奥に追いやっていたものが蜜と共に溢れて身体中に広がって行く。

 アリーシェリナの反応に大丈夫そうだと判断したのか指はさらに増やされた。
 小さな蜜口が押し広げられ、でもそれは決して不快な感覚ではなかった。むしろさらなる歓喜を呼び起こし、アリーシェリナは啼き声をあげる。

「リヒト、様ぁ……っ。あ、ん、ぁ……っ。も、だめ……っ!」

 蜜壺が激しくうねりはじめた。

 中に、欲しがっている。
 たった一人愛した彼が欲しいとアリーシェリナに訴えかけた。

「あ……っ!」

 二度目の絶頂を迎えた身体からリヒトの指が離れて行く。
 
(だめ……。行かないでリヒト様)

 声に出せない想いを心の中で形にすれば、ぬかるみの中を熱杭が上下に滑る。

「ん……っ。あぁ……」

 目眩がした。
 腰が揺れるのが止められない。蜜壺で熱杭を咥え込もうと本能が求める。
 リヒトが欲しい。
 欲しくないはずがなかった。

「アリィ……。焦らして意地悪をしようかと思ったけどごめん、無理だった」
「え……」
「優しくする。でも、力を抜いていて」

 その言葉でこれから起こることを察し、胸が期待にざわめく。
 しとどに濡れた蜜口に懐かしさすら感じる、重みのある熱量がくわえられて反射的に息を飲み込んだ。
 それから、力を抜いていてと告げた彼の言葉を思い出して、無意識の強張りをそっと緩めると共に息を吐く。

「ふぁ、ひ、あ――!」

 アリーシェリナは背中をのけぞらせた。

 狭くなった胎内を、大きくて硬いものがこじ開けて来る。
 それは初めての時ほど痛くはなかったけれど、相応の圧迫感があって少しだけ苦しい。でもそれ以上に嬉しくて幸せで、涙が頬を伝った。

「あ……っ、は……。ん、ん……っ」
「痛い、かな」

 リヒトは緩やかに律動をはじめた。

 痛がっていると誤解して気を遣ってくれているのかもしれないし、ベッドが軋む音が外に聞こえにくいようにしているのかもしれない。
 だけど二年の空白ができている今、以前と同じ激しさをぶつけられたらきっと、受け止めきれずに壊れてしまう。だから、これくらいで逆に良かった。

 激しさはない代わりにお腹の裏側辺りから奥にかけてをじっくりと抉られ、アリーシェリナはたまらずにリヒトの首に縋りついた。

「ん……っ。平気、です。このま、ま、続けて下さ……。気持ち、い……から……っ」
「うん、アリィ。僕も、二年振りだから……少しでも気を抜いたら吐精しそうだ」

 アリーシェリナは目を見開く。

 二年振りと、言った。
 じゃあ、リヒトも――誰の中にも入ってない。

 状況を理解した身体が歓喜でうごめく。
 これからもアリーシェリナ以外の中に入って欲しくなくて、今できる最大の快楽を与えて引き留めた。

「すぐ吐精するかもって言ったそばから……そんなに強く締めつめないで」
「ごめ、なさ……。でも、気持ち……よく、て……」

 今も想っていると、好きと伝えられない代わりに快楽を得ていると口にする。
 リヒトは困ったように、けれど嬉しそうに口元を綻ばせてアリーシェリナの額や頬に幾度も口づけを落とした。

 彼が動く度にどんどん高められて頭の中が真っ白になる。
 アリーシェリナはひたすらリヒトに縋りつき、それでも懸命に動きを合わせた。切なさの滲む啼き声に切羽詰まった色が濃く混じりはじめ、蜜壺が吐精を促すよう激しくうねった。

「リヒ……様……っ! あ、あっ、あ――!」
「アリィ……!」

 ひときわ大きな絶頂を迎えた胎内に熱い液体が迸る。

 許されるなら、またリヒトの子供を授かりたい。
 彼を三度裏切ろうとしているくせに自分のわがままを叶えたくて、子種が奥に辿り着けるようにそっと腰を揺すった。

「アリィ、もう離さない。君は僕のものだ」

 同じことを、アリーシェリナを身籠らせたいと、そう思っているのだろうか。
 自らが放った精液を奥底に送り込むよう最後に腰を深く突き入れ、リヒトは身体を離す。
 途端にこぷりと中から溢れ、それがひどく寂しく思えた。



「ふあああああ!」

 情事の後、リヒトの腕の中でまどろんでいると我が子の泣き声が響き渡った。

 目が覚めたのだろう。
 そしてアリーシェリナはリヒトの恋人などではなく、あの子の母親として生きて行くことを決めたのだ。少女だった頃のように、いつまでも淡い恋に浸っていてはいけない。
 慌てて身を起こし、余韻もなく服を着てベビーベッドに駆け寄った。

「ごめんねリアナ。ママはここにいるからもう泣かないで」
「リアナ?」

 我が子を抱き上げて優しくあやす。リヒトの小さな呟きが背中に届いた。

 子供の名前は聞かれなかったから教えなかったのに、知られてしまった。
 だって可愛い我が子が泣いているのだ。名前を呼ばないわけにはいかなかった。

「君の子供……リアナっていうの?」

 大切で、文字の一つ一つにも意味を込めたその名を誤魔化したり、偽ったりなんてできない。

 だから震える声での確認に、アリーシェリナはただ頷いた。

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