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お茶会改めケーキバイキング
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私は父から買って貰った牛革の手袋と、パッションピンクのケースに入ったドラゴン用のブラシがポケットに入っているか確認する。物が物なだけにポケットはパンパンに膨れ上がっているが、今日も今日とて盛り盛りピンクなドレスではポケットに注目する暇もない。この前屋敷で着た時はなかったはずの大きめのリボンがちょうどポケット脇に装着されているから目立ちにくいというのもあるのだろう。
両親の意図とはまるで正反対にドン引かれるであろう服装で会場へ闊歩する。
そのまま会場端の、お菓子が大量に用意されているテーブル近くの場所を確保。会場内を巡回する使用人達がそれぞれどんなお茶を持っているのかを確認するのも忘れない。
あ、あとは王子の現在地。
相変わらず死んだ魚のような目をしているフレインボルド王子だったが、私の目が会った瞬間、ほんの一瞬だけ笑ったような気がした。
笑ったというか、嗤われたというか。
今日もあいつやべえドレス着ているな、とかそんな感じだ。私もこのドレスで王子様の心が射止められるなんて思っちゃいない。
そもそも王子様には興味がない。
私の目的はフレイムさんだ。
今日もほぼ確実に迷うこととなるので、早めにバラ園を目指したい所だが、さすがに開始すらしていないのに会場を抜け出す訳にもいかない。どうせ始まるまで待機しなければならないのなら、フレイムさんに差し入れる用のお菓子をいくつかパクっていきたい。だがお皿を持って会場の外に歩いていたら怪しすぎる。
前回がたまたま声をかけられなかっただけのこと。
途中で止められても厄介なので、今回はお菓子を持っていくことを諦め、お手洗いに向かうフリして会場を出る作戦でいこうと思う。
その作戦を決行するにしてもスタート直後で、というのも変なので、とりあえず20~30分は適当に飲み食いする予定だ。
王子様と周りのご令嬢達を観察しながらお茶会が開催されるのを待つ。
今回から採用されたのだろう、鐘の音でお茶会がスタートする。
時間入れ替え制のケーキバイキングっぽいな~なんて思いながら、早速お皿を片手に先ほどから目をつけていたお菓子を載せていく。一度お皿を置いて、好みの紅茶を持つ使用人に声をかければ私の一回目のセットが完成する。
まずはケーキから。
小さくなっているとはいえ、ご令嬢なら三カットくらいにしてから小さな口に運んでいくのだろう。だが私は大口を開けて頬張る。豪快な食べっぷりに、至るところから視線を感じる。無視してもごもごと口を動かし、次の物に手を伸ばした。すると視線の端でつい先ほど私が食べたばかりのケーキ確保に向かうご令嬢達が映り込んだ。
どうやら今回もお菓子セレクトの参考にされたらしい。
お茶会もとい王子の婚約者選考会はまだ二回目だが、離脱者は意外と多いようだ。
王子を囲っているご令嬢は前回とほぼ同じメンツ。皆、公爵家のご令嬢達だ。
私と違い、彼女達には婚約者がいるはずだが、第一王子との婚約がもぎ取れた暁にはそちらを解消するのだろう。この年で婚約解消なんてお相手も可哀想だよな~。
そこそこお金を積まれ、今後何かを優遇すると約束させるのだろうが、捨てられたことに変わりはない。
その自分を捨てたご令嬢は数年後に、今度は王子様に捨てられるーーと。
なんだろう、この誰も幸せにならなさそうな負のループ。この流れでヒロインと王子様だけ幸せ街道を突っ走ることへの違和感を覚える。
はっ、これはもしや私の中に眠る悪役令嬢が将来立ち塞がるヒロインに嫌がらせしろと騒いでいるのだろうか!?
早すぎる。
まだ悪役令嬢役ですら本決まりしていないのに、気が早すぎる!
収まれ~。私は悪役令嬢になるつもりがないから、適当に祝っとけ~と自分に言い聞かせる。
胸を軽く叩けば、シュルシュルと悪役っぽい感情はどこかへと消えていった。危なく闇落ちするところだったわ……でももう大丈夫だ。
皿の上のお菓子を次々に口に放り込み、第二陣の回収に向かう。
あ、マカロンが増えてる。
チョコレート系を攻めようと思っていたが、前回はなかったキャラメルシリーズに心が揺れる。
一緒に載せてもいいんだけど、口の中で混ざって十分に楽しめなかったら勿体ないしな~。だが新作だからか、数が少ない。
追加される確証もないし、後で取られても嫌だ。
いっそフルーツシリーズを攻めることにして、初めに数少ないキャラメルマカロンを制覇する? でもお腹は完全にチョコモードに入っているし……。
お皿片手に攻める順番を熟考していると、先ほどよりもずっと強い視線が背中に突き刺さったような気がした。
「ん?」
気になって振り返ると、すぐ近くまで王子様ご一行が足を運んでいた。
どうやらお菓子コーナーで長時間陣取るのは邪魔だったらしい。確かにマナーがなっていなかった。
ぺこりと頭を下げてから、チョコもキャラメルもフルーツもジャンル関係なしに目についたものをお皿の上に載せていく。明らかに一回に取る量ではない。山積みになったそれを落とさないようにゆっくりと先ほどの場所へと持ち帰る。
これ食べ終わったらフレイムさんの所に向かうか。
予定より少し早いが、王子ご一行はお菓子コーナーに陣取ることを決めたらしい。広がってお菓子を確保しながら、お皿片手に会話を弾ませている。あれでは次、いつお菓子確保に迎えるか分かったものではない。通りがかった使用人からお茶のおかわりをもらい、限りあるお菓子を楽しむことにした。
両親の意図とはまるで正反対にドン引かれるであろう服装で会場へ闊歩する。
そのまま会場端の、お菓子が大量に用意されているテーブル近くの場所を確保。会場内を巡回する使用人達がそれぞれどんなお茶を持っているのかを確認するのも忘れない。
あ、あとは王子の現在地。
相変わらず死んだ魚のような目をしているフレインボルド王子だったが、私の目が会った瞬間、ほんの一瞬だけ笑ったような気がした。
笑ったというか、嗤われたというか。
今日もあいつやべえドレス着ているな、とかそんな感じだ。私もこのドレスで王子様の心が射止められるなんて思っちゃいない。
そもそも王子様には興味がない。
私の目的はフレイムさんだ。
今日もほぼ確実に迷うこととなるので、早めにバラ園を目指したい所だが、さすがに開始すらしていないのに会場を抜け出す訳にもいかない。どうせ始まるまで待機しなければならないのなら、フレイムさんに差し入れる用のお菓子をいくつかパクっていきたい。だがお皿を持って会場の外に歩いていたら怪しすぎる。
前回がたまたま声をかけられなかっただけのこと。
途中で止められても厄介なので、今回はお菓子を持っていくことを諦め、お手洗いに向かうフリして会場を出る作戦でいこうと思う。
その作戦を決行するにしてもスタート直後で、というのも変なので、とりあえず20~30分は適当に飲み食いする予定だ。
王子様と周りのご令嬢達を観察しながらお茶会が開催されるのを待つ。
今回から採用されたのだろう、鐘の音でお茶会がスタートする。
時間入れ替え制のケーキバイキングっぽいな~なんて思いながら、早速お皿を片手に先ほどから目をつけていたお菓子を載せていく。一度お皿を置いて、好みの紅茶を持つ使用人に声をかければ私の一回目のセットが完成する。
まずはケーキから。
小さくなっているとはいえ、ご令嬢なら三カットくらいにしてから小さな口に運んでいくのだろう。だが私は大口を開けて頬張る。豪快な食べっぷりに、至るところから視線を感じる。無視してもごもごと口を動かし、次の物に手を伸ばした。すると視線の端でつい先ほど私が食べたばかりのケーキ確保に向かうご令嬢達が映り込んだ。
どうやら今回もお菓子セレクトの参考にされたらしい。
お茶会もとい王子の婚約者選考会はまだ二回目だが、離脱者は意外と多いようだ。
王子を囲っているご令嬢は前回とほぼ同じメンツ。皆、公爵家のご令嬢達だ。
私と違い、彼女達には婚約者がいるはずだが、第一王子との婚約がもぎ取れた暁にはそちらを解消するのだろう。この年で婚約解消なんてお相手も可哀想だよな~。
そこそこお金を積まれ、今後何かを優遇すると約束させるのだろうが、捨てられたことに変わりはない。
その自分を捨てたご令嬢は数年後に、今度は王子様に捨てられるーーと。
なんだろう、この誰も幸せにならなさそうな負のループ。この流れでヒロインと王子様だけ幸せ街道を突っ走ることへの違和感を覚える。
はっ、これはもしや私の中に眠る悪役令嬢が将来立ち塞がるヒロインに嫌がらせしろと騒いでいるのだろうか!?
早すぎる。
まだ悪役令嬢役ですら本決まりしていないのに、気が早すぎる!
収まれ~。私は悪役令嬢になるつもりがないから、適当に祝っとけ~と自分に言い聞かせる。
胸を軽く叩けば、シュルシュルと悪役っぽい感情はどこかへと消えていった。危なく闇落ちするところだったわ……でももう大丈夫だ。
皿の上のお菓子を次々に口に放り込み、第二陣の回収に向かう。
あ、マカロンが増えてる。
チョコレート系を攻めようと思っていたが、前回はなかったキャラメルシリーズに心が揺れる。
一緒に載せてもいいんだけど、口の中で混ざって十分に楽しめなかったら勿体ないしな~。だが新作だからか、数が少ない。
追加される確証もないし、後で取られても嫌だ。
いっそフルーツシリーズを攻めることにして、初めに数少ないキャラメルマカロンを制覇する? でもお腹は完全にチョコモードに入っているし……。
お皿片手に攻める順番を熟考していると、先ほどよりもずっと強い視線が背中に突き刺さったような気がした。
「ん?」
気になって振り返ると、すぐ近くまで王子様ご一行が足を運んでいた。
どうやらお菓子コーナーで長時間陣取るのは邪魔だったらしい。確かにマナーがなっていなかった。
ぺこりと頭を下げてから、チョコもキャラメルもフルーツもジャンル関係なしに目についたものをお皿の上に載せていく。明らかに一回に取る量ではない。山積みになったそれを落とさないようにゆっくりと先ほどの場所へと持ち帰る。
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予定より少し早いが、王子ご一行はお菓子コーナーに陣取ることを決めたらしい。広がってお菓子を確保しながら、お皿片手に会話を弾ませている。あれでは次、いつお菓子確保に迎えるか分かったものではない。通りがかった使用人からお茶のおかわりをもらい、限りあるお菓子を楽しむことにした。
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