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第1章 変則ポーカー
第3話 勝負 その①
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入念にシャッフルを繰り返し、ディーラーである幸太は二枚のカードを裏のまま場に置く。
「先攻後攻を決めて下さい。どちらのカードを選びますか?」
ディーラーとして無機質な声で言う幸太に促され、新和と真志の二人はカードに視線を注ぐ。
(まずは不運を、取りに行かないと)
新和の最初の選択は、それだった。
勝つために、運と不運を意識する。
それが新和のギャンブルでの流儀だ。
どうしようもなく運が欲しい。その時に巡り合わせる為に、まずは不運を積み上げる。
現実的に考えれば意味がない。
それを理解した上で、なお新和は、そのやり方を今回の勝負では選び取った。
けれど、それは真志に防がれる。
「こちらを選ぶよ」
カードが場に出され、幸太が促すとほぼ同時に、真志はカードを選んでいた。
新和が何か言うよりも早く、カードを捲る。
クラブのJ。
「まぁまぁ、かな? さて、早くそちらのカードも見せてよ」
僅かに言葉を早め、真志は急かす。
勝負が始まる前の、どこかゆったりとした声とは意図的に変えている。
リズムを崩されプレッシャーを受けながら、新和は残されたカードを捲った。
「おめでとう。君の先攻だ」
ダイヤのK。それを見た瞬間、新和は思う。
(幸運を、押し付けられた)
じわりと、自分の周囲の空気が薄くなったような気配に、新和は思わず表情に出そうになった怯えを飲み込む。
勝負の流れ。それが明らかに自分から離れたのを感じ取ったからだ。
(ダメだ……どこかで、不運を飲まないと)
それはいつ、どのタイミングで?
ポーカーフェイスのまま思考を巡らせる新和を見詰めながら、真志は思う。
(先攻の第一回目。ここで選択を間違えると致命的だが……頼むから、悪手は取らないでくれよ。つまらないから)
期待に目を細める真志を前に、新和はカードを一枚捲る。
ダイヤの4。それを確認すると同時に、新和はコインを積み上げた。
「十枚、ベットします」
「好いね」
返す真志は即座にコイン十枚を積み上げ、
「フォールド。九枚、貰うよ」
初回の勝負を迷いなく捨てた。
「このゲームの最悪な手は、なにか気付いてるかな?」
裏になったままの、場に出されたカードを手元に寄せながら、真志は新和に呼び掛ける。
「勝てないのに最後まで勝負する。これが最悪だね。負けた挙句に、相手にも全てのカードを知られてしまうんだから。なら、二番目に最悪な手は?」
返事は間を空けず返された。
「最初からフォールドするつもりの相手に、コイン一枚でカードをあげちゃうこと。ですよね? 先輩」
「うん、その通り。好かった。君が遊べる相手で」
新和の応えに真志は、にっこりと笑顔を浮かべ賛同する。そして表情や視線の長さで内心を気取られないようにしながら、裏になっていたカードを確認した。
真志のカードは、ダイヤのAとQ、そしてスペードのK。
残りのハートの8とクラブの6を入れても役なし。
それに対し新和のカードは、ハートのQ__クイーン__#と10、そしてスペードとクラブの7。
一枚目のダイヤの4を入れてワンペアだった。
(運が良い、というべきだな、これは)
幸運な敗北を、真志は冷静に判断する。
新和の読み通り、真志は最初の勝負は捨てるつもりで挑んでいた。たとえどれほど自分の元に来たカードが良かったとしてもだ。
今回の勝負は、配られたカードの中身を、プレイヤーは賭ける前には知ることが出来ない。その上、交換すら出来ない。
つまり、運不運の要素が強すぎる。
ただし、それは前半の話。勝負が進み後半になればなるほど、使用しなかったカードのみでゲームを続ける以上、予想が可能になって来る。
前半を捨て、後半に賭ける。それが今回の勝負で、真志が選んだやり方だった。
(もっとも、このやり方だと致命的な欠点があるけれど……いや、より正確に言えば――)
カードを確認し終えた真志は、僅かに幸太へと視線を向ける。
(――ゲーム自体に欠陥があるよねぇ……意図的な物だろうけどさ)
真志の内心での呟きなど気付けない幸太は、
「第二ゲームを始めます。よろしいですか?」
あくまでもディーラーとして勝負を進めて行く。そんな彼を見詰めながら、
「良いよ、続けよう」
真志は、第一ゲーム敗北の重さを感じさせない気軽さで返す。
その一方、新和は勝負の始まりからずっと、真志を見詰めている。
自分のカードを見ている時ですら、視界から可能な限り外すことなく。
今も、視線を外さぬまま、
「私も準備は良いですよ、先輩。続けましょう」
勝負の続きを促した。
それとほぼ同時に、新たなカードが二人に配られた。
「先攻後攻を決めて下さい。どちらのカードを選びますか?」
ディーラーとして無機質な声で言う幸太に促され、新和と真志の二人はカードに視線を注ぐ。
(まずは不運を、取りに行かないと)
新和の最初の選択は、それだった。
勝つために、運と不運を意識する。
それが新和のギャンブルでの流儀だ。
どうしようもなく運が欲しい。その時に巡り合わせる為に、まずは不運を積み上げる。
現実的に考えれば意味がない。
それを理解した上で、なお新和は、そのやり方を今回の勝負では選び取った。
けれど、それは真志に防がれる。
「こちらを選ぶよ」
カードが場に出され、幸太が促すとほぼ同時に、真志はカードを選んでいた。
新和が何か言うよりも早く、カードを捲る。
クラブのJ。
「まぁまぁ、かな? さて、早くそちらのカードも見せてよ」
僅かに言葉を早め、真志は急かす。
勝負が始まる前の、どこかゆったりとした声とは意図的に変えている。
リズムを崩されプレッシャーを受けながら、新和は残されたカードを捲った。
「おめでとう。君の先攻だ」
ダイヤのK。それを見た瞬間、新和は思う。
(幸運を、押し付けられた)
じわりと、自分の周囲の空気が薄くなったような気配に、新和は思わず表情に出そうになった怯えを飲み込む。
勝負の流れ。それが明らかに自分から離れたのを感じ取ったからだ。
(ダメだ……どこかで、不運を飲まないと)
それはいつ、どのタイミングで?
ポーカーフェイスのまま思考を巡らせる新和を見詰めながら、真志は思う。
(先攻の第一回目。ここで選択を間違えると致命的だが……頼むから、悪手は取らないでくれよ。つまらないから)
期待に目を細める真志を前に、新和はカードを一枚捲る。
ダイヤの4。それを確認すると同時に、新和はコインを積み上げた。
「十枚、ベットします」
「好いね」
返す真志は即座にコイン十枚を積み上げ、
「フォールド。九枚、貰うよ」
初回の勝負を迷いなく捨てた。
「このゲームの最悪な手は、なにか気付いてるかな?」
裏になったままの、場に出されたカードを手元に寄せながら、真志は新和に呼び掛ける。
「勝てないのに最後まで勝負する。これが最悪だね。負けた挙句に、相手にも全てのカードを知られてしまうんだから。なら、二番目に最悪な手は?」
返事は間を空けず返された。
「最初からフォールドするつもりの相手に、コイン一枚でカードをあげちゃうこと。ですよね? 先輩」
「うん、その通り。好かった。君が遊べる相手で」
新和の応えに真志は、にっこりと笑顔を浮かべ賛同する。そして表情や視線の長さで内心を気取られないようにしながら、裏になっていたカードを確認した。
真志のカードは、ダイヤのAとQ、そしてスペードのK。
残りのハートの8とクラブの6を入れても役なし。
それに対し新和のカードは、ハートのQ__クイーン__#と10、そしてスペードとクラブの7。
一枚目のダイヤの4を入れてワンペアだった。
(運が良い、というべきだな、これは)
幸運な敗北を、真志は冷静に判断する。
新和の読み通り、真志は最初の勝負は捨てるつもりで挑んでいた。たとえどれほど自分の元に来たカードが良かったとしてもだ。
今回の勝負は、配られたカードの中身を、プレイヤーは賭ける前には知ることが出来ない。その上、交換すら出来ない。
つまり、運不運の要素が強すぎる。
ただし、それは前半の話。勝負が進み後半になればなるほど、使用しなかったカードのみでゲームを続ける以上、予想が可能になって来る。
前半を捨て、後半に賭ける。それが今回の勝負で、真志が選んだやり方だった。
(もっとも、このやり方だと致命的な欠点があるけれど……いや、より正確に言えば――)
カードを確認し終えた真志は、僅かに幸太へと視線を向ける。
(――ゲーム自体に欠陥があるよねぇ……意図的な物だろうけどさ)
真志の内心での呟きなど気付けない幸太は、
「第二ゲームを始めます。よろしいですか?」
あくまでもディーラーとして勝負を進めて行く。そんな彼を見詰めながら、
「良いよ、続けよう」
真志は、第一ゲーム敗北の重さを感じさせない気軽さで返す。
その一方、新和は勝負の始まりからずっと、真志を見詰めている。
自分のカードを見ている時ですら、視界から可能な限り外すことなく。
今も、視線を外さぬまま、
「私も準備は良いですよ、先輩。続けましょう」
勝負の続きを促した。
それとほぼ同時に、新たなカードが二人に配られた。
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