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曇った王
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リオンは離宮から戻って来てすぐラキと一緒にラミアの元へ向かった。
「ラミア、一人にして悪かったな。今戻ったぞ。」
「お帰りなさいませ。」
「ラキがクレアに泣かされしまった。悪い、なぐさめてやってくれないか?」
「まあ……。」
「お父様!私は大丈夫です。それより今日1日お寂しかったお母様と過ごして下さい!私はその方が嬉しいです。」
「孝行娘だな、わかった。
ラキ、ホームパーティーは絶対にやろうな?」
「はい!楽しみにしています。それではお休みなさいませ、お父様!お母様!」
ラキは夫婦の部屋から出て行った。
リオンはラミアの肩を抱いて座る。
「ホームパーティーですか?」
「ラキが今日のパーティーで、俺達3人でも小さなパーティーをやりたいと言ったんだ。可愛らしいだろ?」
「え…あちらの方の前で言ったのですか?」
「正確にはやろうと言ったのは俺だ。俺もお前達とやってみたい。」
リオンはラミアの額にキスを落とした。
「今日は一緒にいれずに寂しかったよ。……いいかな?」
「……はい。」
「愛してるよ、俺のラミア……。」
リオンは壊れ物を扱うように、そっとラミアをベッドに寝かせた。
それはカレンが予想したとおり、最近カレンに対して行う乱暴な動きとは全然違っていた。
リオンがラミアを丁寧に抱いた翌朝、家来が耳打ちしてきた。
「カレン様とクレア様が離宮から居なくなりました。」
「………は?」
ラミアを気にして、寝てて良いと言い置いて、別室に詳しい話を聞きに行く。
「どういうことだ?拐われたのか?」
「わかりません。忽然と姿を消されました。二人が出ていく所を見た者もおりません。」
「そんな馬鹿な話があるか!」
リオンは慌てて離宮へ向かった。
2日続けて離宮へ向かうのは10年ぶりのことだった。
離宮でおろおろしている使用人を問い詰める。
「おい!説明しろ!」
「はい!クレア様が泣いておられまして、それを慰めているカレン様と二人で自室に籠っておられました。
静かになりましたので、そのままお眠りになったのかと思っていましたが、朝起こしに参りますと誰もおらず、離宮中を探してもいらっしゃらなかったのです。」
「クレアが泣いていた?なぜだ?」
「誕生日パーティーから戻られた時点で泣いておられましたので、理由は分かりません。」
「なんだ、ラキと首飾りが被る事をそんなに嫌がって泣いていたのか。強情な娘にも困ったものだな…。」
ため息をついてリオンはしばし考えた。
「つまり、拗ねて母子で家出したということか。
人騒がせな……。カレンもカレンだ、娘の我が儘に付き合ってどうする。
お前、二人の世話係なんだから今仕事が無いだろう。探して来い、頼んだぞ。」
リオンはすぐに戻ってくるだろうと簡単に考えた。
しかし、二人は中々見つからなかった。
「カレン、どこへ行ったんだ……。」
リオンにとって一緒に暮らして無く、思い入れの無いクレアはどうでもいいと思えた。
しかし雑に扱っておきながら、カレンとは笑い会った日々を思い出して切なくなっていた。
「カレン、俺を愛してるだろう?早く帰って来てくれ。」
リオンが落ち込んでいるとラキが来た。
「お父様、お父様にはお母様がいるではありませんか!
お父様の真心も分からない薄情なカレン様ばかり気にかけて、お母様を悲しませないで下さい!
今まで隣でお父様とこの国を支えていたのは誰ですか?!」
「……そうだったな、ラキ。
ありがとう、おかげで目が覚めたよ。
カレンはただ離宮で何もせずタダ飯を食べていただけだ。
即位した俺をずっと支えてくれたのはラミアだ!」
リオンはラミアの元へ走った。
「ラミアすまなかった。
お前は王になったばかりの俺を、ずっと隣で王妃として支えてくれていたのに、居なくなった愛妾など気にして悪かった!
もう他に心を移したりしない、お前とラキだけを大切に守るよ。」
「リオン……。」
「俺が愛しているのはラミアだけだ。
離宮は閉鎖してカレンの捜索も中止する。俺には愛妾など必要なかったのだ。
それに気付かせてくれたラキはやはり幸運の天使だ。」
ラミアは何故か背中に寒気が走った。
カレンは恋敵に間違いは無い。
でもリオンが何を言ってるのか、理解出来ない所があった。
それは、いつもラキから始まっている気がする。
ラミアは漠然と不安を感じながらも、甘い言葉に抗えずにリオンの胸に寄り添った。
「ラミア、一人にして悪かったな。今戻ったぞ。」
「お帰りなさいませ。」
「ラキがクレアに泣かされしまった。悪い、なぐさめてやってくれないか?」
「まあ……。」
「お父様!私は大丈夫です。それより今日1日お寂しかったお母様と過ごして下さい!私はその方が嬉しいです。」
「孝行娘だな、わかった。
ラキ、ホームパーティーは絶対にやろうな?」
「はい!楽しみにしています。それではお休みなさいませ、お父様!お母様!」
ラキは夫婦の部屋から出て行った。
リオンはラミアの肩を抱いて座る。
「ホームパーティーですか?」
「ラキが今日のパーティーで、俺達3人でも小さなパーティーをやりたいと言ったんだ。可愛らしいだろ?」
「え…あちらの方の前で言ったのですか?」
「正確にはやろうと言ったのは俺だ。俺もお前達とやってみたい。」
リオンはラミアの額にキスを落とした。
「今日は一緒にいれずに寂しかったよ。……いいかな?」
「……はい。」
「愛してるよ、俺のラミア……。」
リオンは壊れ物を扱うように、そっとラミアをベッドに寝かせた。
それはカレンが予想したとおり、最近カレンに対して行う乱暴な動きとは全然違っていた。
リオンがラミアを丁寧に抱いた翌朝、家来が耳打ちしてきた。
「カレン様とクレア様が離宮から居なくなりました。」
「………は?」
ラミアを気にして、寝てて良いと言い置いて、別室に詳しい話を聞きに行く。
「どういうことだ?拐われたのか?」
「わかりません。忽然と姿を消されました。二人が出ていく所を見た者もおりません。」
「そんな馬鹿な話があるか!」
リオンは慌てて離宮へ向かった。
2日続けて離宮へ向かうのは10年ぶりのことだった。
離宮でおろおろしている使用人を問い詰める。
「おい!説明しろ!」
「はい!クレア様が泣いておられまして、それを慰めているカレン様と二人で自室に籠っておられました。
静かになりましたので、そのままお眠りになったのかと思っていましたが、朝起こしに参りますと誰もおらず、離宮中を探してもいらっしゃらなかったのです。」
「クレアが泣いていた?なぜだ?」
「誕生日パーティーから戻られた時点で泣いておられましたので、理由は分かりません。」
「なんだ、ラキと首飾りが被る事をそんなに嫌がって泣いていたのか。強情な娘にも困ったものだな…。」
ため息をついてリオンはしばし考えた。
「つまり、拗ねて母子で家出したということか。
人騒がせな……。カレンもカレンだ、娘の我が儘に付き合ってどうする。
お前、二人の世話係なんだから今仕事が無いだろう。探して来い、頼んだぞ。」
リオンはすぐに戻ってくるだろうと簡単に考えた。
しかし、二人は中々見つからなかった。
「カレン、どこへ行ったんだ……。」
リオンにとって一緒に暮らして無く、思い入れの無いクレアはどうでもいいと思えた。
しかし雑に扱っておきながら、カレンとは笑い会った日々を思い出して切なくなっていた。
「カレン、俺を愛してるだろう?早く帰って来てくれ。」
リオンが落ち込んでいるとラキが来た。
「お父様、お父様にはお母様がいるではありませんか!
お父様の真心も分からない薄情なカレン様ばかり気にかけて、お母様を悲しませないで下さい!
今まで隣でお父様とこの国を支えていたのは誰ですか?!」
「……そうだったな、ラキ。
ありがとう、おかげで目が覚めたよ。
カレンはただ離宮で何もせずタダ飯を食べていただけだ。
即位した俺をずっと支えてくれたのはラミアだ!」
リオンはラミアの元へ走った。
「ラミアすまなかった。
お前は王になったばかりの俺を、ずっと隣で王妃として支えてくれていたのに、居なくなった愛妾など気にして悪かった!
もう他に心を移したりしない、お前とラキだけを大切に守るよ。」
「リオン……。」
「俺が愛しているのはラミアだけだ。
離宮は閉鎖してカレンの捜索も中止する。俺には愛妾など必要なかったのだ。
それに気付かせてくれたラキはやはり幸運の天使だ。」
ラミアは何故か背中に寒気が走った。
カレンは恋敵に間違いは無い。
でもリオンが何を言ってるのか、理解出来ない所があった。
それは、いつもラキから始まっている気がする。
ラミアは漠然と不安を感じながらも、甘い言葉に抗えずにリオンの胸に寄り添った。
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