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2部【アース大陸横断編】 第1章 「目指せドグロブニク 漫遊編」

64話:「リリスの姉」

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「というのが勇者【小橋大和】の最近の動きでございます・・・・」
漆黒の暗闇が支配する玉座の間の隅っこで二つの人影があった。
一人はメフィスト軍直轄第3部隊隊長リリス・ライラー
そしてもう一人は第2部隊隊長のヴェルゼビュート・ベルゼバブその人である。

メフィストフェレスを頂点とする力関係や権力において
実質的なメフィスト陣営のナンバー3が彼女ベルゼバブなのだ。

藤紫ふじむらさき色の肌に背中まで伸びた濃い桃色の長髪をしなやかな美しい手でかき上げる。
キリっとした黄色く鋭い目は愛嬌あいきょうというよりも美しさや格好良さを際立たせる。
そして何よりも特徴的なのは【熟成】という言葉が相応ふさわしい体つきだ。
女性独特の丸みを帯びた身体つきに戦闘に特化しているであろうバネの利きそうな筋肉
無駄な脂肪は付いておらずかと言って筋肉質な身体というわけでもない。

女性としてなまめかしい身体つきと男であれば嫌でも目が行ってしまう
大きな大きな二つの膨らみ。
俗に言う【けしからん胸】というやつだ。

顔つきも目鼻立ちは当然のように整っており
彼女の肌の色と相まって美しい色香漂う美女というのが
初めてあった人間が彼女に抱く印象だ。

簡単に言うなら【めっちゃエロい綺麗な姉ちゃん】だ!!



リリスの報告を聞いた彼女が綺麗に整った眉を吊り上げ怪訝な表情を浮かべる。

「厄介なことになっているわね。 さぁてどうしたものかしら?」

そう言葉をこぼしながら自分の手をしっとりとした唇に這わせながら思案する。
それは彼女が考え事をするときによく出る癖だった。
しばらく思案したのちベルゼバブはリリスに向けて命令を出す。

「リリス? あなたは引き続き勇者の動向を監視して頂戴
 あたしはメフィスト様とグレモリーお姉様がお戻り次第指示を仰いでみるわ」

「畏まりましたベルゼ姉さ・・・・ヴェルゼビュート様」
「いいのよリリス、今はあたしとあなたの二人しかいないのだから
 いつものように呼んでくれればいいわ。 あたしたちは姉妹じゃない!」

そうなのだ、メフィスト軍の第一・第二・第三部隊の隊長を務めている
グレモリー・グレゴリア、ヴェルゼビュート・ベルゼバブ、リリス・ライラー
この三人は実の姉妹なのだ。


魔王軍の中でも一、二を争うほどの美しさと実力を兼ね備えた
【美人魔族三姉妹】として魔族の中でも名が知れ渡っているほどだ。

「はい・・・・ベルゼ姉さま」

嬉しそうにベルゼバブを呼ぶリリス。
名を呼ばれた彼女も妹の嬉しそうな顔を見て思わず顔を綻ばせる。
そして、リリスが今までと少し雰囲気が変わったことを敏感に察知する。
それは姉妹でなければ気付かないレベルのものだったが
実の姉でありいつも妹のリリスのことを見てきたベルゼバブにとっては
その変わりようは明らかだった。 故に彼女はリリスに問いかける。

「ところでリリス? あなた雰囲気が少し変わったみたいだけど
 何かあったのかしら?」

「うえっ!?」

姉の問いかけに思わず上ずった声で答えてしまう。
こうなっては何かあったと自白しているようなものであるからして
彼女の問いかけという名の尋問が始まる。

「このあたしに隠し事ができると思って?」

そう言うと彼女はリリスの顔をまじまじと見つめながら
彼女が変わった理由をピンポイントで言い当てた。

「リリスあなた好きな人ができたんでしょ?」
「そそそそんなわけななないじゃないですかっ!?」

リリスの心の内を見透かしたような視線を向けながら彼女はさらに言葉を続ける。

「リリスのハートを射止める殿方がいるとは驚きだわ
 その方はどんなかたなのかしら?」

そう笑顔を向けながら質問をしてくるベルゼバブ
だがリリスはわかっていた、それは質問なのではなく【答えろ】という命令なのを
だからこそ答えるわけにはいかなかった。

自分が魔族にとって忌むべき存在である勇者に恋をしてしまったなどという世迷言よまいごと
だからこそ彼女はこの場をやり過ごすことにしたのだ。

「ああもうこんな時間、任務に戻らなくちゃ!
 ではお姉さま、任務がありますのでこれにて失礼いたします!!」

そう言ってそそくさとその場を後にするリリス
一方ベルゼバブはそんな彼女の背中を見送るだけだった。

「あの子ったら、逃げたわね」

捕まえて問いただすことはできたがベルゼバブは敢えてそうしなかった。
時が来ればリリスは自分から話してくれると信じていたからだ。


「さてあたしもお二人が帰ってくるまで雑用を片付けてしまおうかしら・・・・」


まさか自分の妹が勇者に恋をしたなどと知る由もない彼女は
妹の恋の相手がどんな人なのか想像を膨らませながら
彼女の恋を影ながら応援してあげようと心に誓ったのだった。
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