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3部【ビルド大陸上陸編】 第1章 「勇者ってこんなに人気者?」
122話:「大和、リア充になる」
しおりを挟む大和たちを襲撃してきたメルウェム教財団と名乗る三人組の男たちは
大和を人質に取るも彼の放った爆弾発言により仲間であるリナたちの士気を向上させ
彼等を撃退することに成功したのであった。
しばらくしてジェノンの町長であるウミガスキーが衛兵を引き連れてやってきた。
「勇者様ご無事ですか!?」
彼に無事を伝えると安堵の表情を浮かべながら自分がメルウェム教財団に捕まっていたことや
現在気絶している黒髪オールバックの男がウミガイヤーという名の自分の実の弟だという事などいろいろ教えてくれた。
というか何気に町長も切羽詰まった状況だったんだなと大和は思った。
「連中を連れていくのじゃ!」
「はっ」
町長は衛兵に命じると、裏切り者の護衛達を連行してゆく。
大和は護衛達が連れて行かれる前に今回起きた事の顛末を話すと
彼女たちの減刑を申し出た。
「という感じですので、彼女たちに関しては情状酌量の余地はあると思います」
「勇者様がそうおっしゃるのでしたら、私どもに異論はございません」
大和が減刑を申し出てくれたことに感激したのか、護衛の女性達が涙を流して感謝していた。
そして、彼女たちはそのまま衛兵が駐屯する詰め所に連行されることになったが
勇者である大和の減刑の申し出によって、それほど重い罪には問われなかったと後日聞かされた。
「主、この者たちの処罰はどうするのですか?
恐れ多くも勇者である主を襲ったのです。 許可をいただけるならこの場で・・・・・・」
そう言いながら右手に魔力を込め魔法を繰り出そうとするフレイヤを手で制すると首を左右に振る。
「こいつらには問いただすべきことがあるだろう。 ここで殺すのは得策ではないな。
尋問は町長に任せて俺たちは本来の目的である観光に行こうか」
「主が・・・・・・そう、言うのであれば・・・・・・」
どこか釈然としない顔を浮かべつつも大和の指示に従う姿勢を見せるフレイヤ。
なにはともあれ突如襲ってきた謎の邪教徒集団との戦いは一先ず終結と言っていいだろう。
大和たちは町長に軽く挨拶をすると目的の観光を再開すべく商業区画に向けて歩き出した。
歩き始めて数分後、まだ人気のない道を先頭切って歩いていた大和が後ろをヒヨコのように
とてとてと付いてきていたリナたちへと振り返る。
彼女たちの進む足が止まったのを確認すると、厳しい表情を作り話し出した。
「お前ら、一列に並べ」
大和の指示に従い全員横一列に並ぶ。
彼女たちが整列した後、大和はさらに指示を出す。
「じゃあお前ら目を瞑って歯を食いしばれ・・・・・・」
彼の真剣な表情からは有無を言わせぬただならぬ雰囲気が醸し出されており
とてもではないがこの場にいる誰一人として彼の指示の意図を聞けずにいた。
特に拒否する理由もないため彼女たちは大和の指示に従い目を閉じ、歯を食いしばった。
仮に殴られるにしても彼女たちから見れば殴られるのは罰ではなくご褒美だからなんら問題はない。
全員が目を閉じ、大和が殴るのを今か今かと待っていた刹那―――
「・・・・・・ちゅっ」
突然【ちゅっ】という効果音がジェノンの町に5回響き渡った。
そして、自分の身に一体何が起こったのか確認するため彼女たちは目を開ける。
殴られると思っていた感覚でいたため大和が何をしたのか理解できないでいた。
【ちゅっ】という効果音と自分の頬が微かに湿り気を帯びていることに気付いた彼女たちは
そこで互いに顔を見合わせる。
それから大和に顔を向けると、なぜか自分たちに背を向け顔を見られないようにしていた。
「コホン。 じゃあ・・・・・・行くぞ・・・・・・」
わざとらしい咳ばらいを一つ付くと足早に歩き出した。
彼女たちはその背中を数秒間ぼんやりと見つめた後再び顔を見合わせそこでようやく理解する。
“自分たちがほっぺにちゅーされた”ことを―――
それを理解した瞬間、彼女たちの心臓は鼓動を早め頬は桜色に染まった。
そして大和の取った行動に感極まったと同時に彼女たちの体は自然と大和に向けて走り出していた。
「「「「「(主)ヤマト様 (さま) (さん)!!!!!!」」」」」
それぞれ大和の名を呼ぶと同時に彼の背中に飛びつくように抱き着いた。
「あ゛ーーもう、うっとおしいからくっつくな!!」
大和がめんどくさそうに答えるが彼女たちは離れようとはしなかった。
それから彼女たち全員が心の中で思った。
“この人に出会えて本当によかった”と―――
彼女たちがそう思う中、この時大和は心の中で何を思っていたのかというと。
(俺って今すげえリア充してるな・・・・・・俺、爆発しろ)
その後背中から離れない彼女たちがあまりにしつこく抱き着いていたため
当初の予定通り大和に殴られることとなったのは言うまでもないことだろう。
3部【ビルド大陸上陸編】 第1章 「勇者ってこんなに人気者?」 完
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