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崩壊編

指揮と水浴び

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 大きな都市だった。
 ゴーレムの大群に襲われる都市。他国との戦争なら関わる必要も無いかも知れないが、相手がゴーレムなら話は別だ。ブッ壊してやらぁ!!
 この人数でも……
「ねぇ、ビスマルクさん、この人数でもいけますかね?」
「そうだな。都市の方にも戦力はあるだろう。充分に勝機はある」
 この人数でも……いけるわ!!

 隊は三つ。
 一つはビスマルクが指揮を執る隊。
 ……と言っても、メンバーはヴイーヴルとミツバとアルタイル。
 人数は少ないが、アルタイルが大量のスケルトンを操り、さらに個々の戦力が非常に高い。ここが本隊と言える。

 もう一つがロザリンドとフォリオがいる隊。
 先鋒隊として最初に動く。

 もう一つ、リアーナとタカニャがいる隊。
 ここは敵を定めず遊撃隊として行動する。

 各々の隊の隊長も副隊長も優秀だから、俺がする事はほとんど無いんだけど……けど絶対に気は抜けない。俺が全体の指揮を執るのだ。
 全体を見回して絶対に誰も死なせないように。
 その俺の護衛としてヴォルフラムとキオとホーリー。キオは索敵と情報収集を行い、ホーリーは衛生兵としての役割も担っている。
 タックルベリーは後方での回復役。

 そんな俺達と三隊の間での情報伝達を主とするのは、敏捷性に優れたリコリスとユリアン。そして情報収集を兼ねるベルベッティア。

 フレアは負傷者の回収。戦場を駆け、負傷者をホーリー、タックルベリーの元に届けるのが役割だった。

★★★

 これはロザリンドの視点。

 最初に突入したのはロザリンド隊。
 目的はゴーレム集団の撹乱。
 その間にリコリスとユリアンが都市に入り込み、協力を取り付ける。

 一振り、二振り、三振り……
 ロザリンドの刀がゴーレムを斬り飛ばす。隊員達もそれに続き、ゴーレムの集団の中に斬り込んでいく。
 四振り、五振り……時間にしても五分もしないうちである。
「ロザリンド、少し後退だ。一回離れろ」
 フォリオだ。
 本来、空を飛べるフォリオは上空から情報収集をするのだが、今はロザリンドに合わせて低空を飛んでいる。
「……ええ、分かったわ」
 ロザリンドの指示でその場から離れる、その直後。
「もう一度中に入る。リアーナが来る」
「っ!!?」
 周囲を見回すロザリンド。
 そしてもう一度ゴーレムの中に飛び込むのだった。

★★★

 こちらはリアーナの視点。

 ロザリンドがゴーレムの中に入ったのを見届けるリアーナ。
 離れた位置からだと分かる。ロザリンド隊が囲まれつつある。その様子を見て突撃しようとするリアーナだったが……
「待ちな。まだ早い」
「で、でも……」
「大丈夫。フォリオだって分かっているはずさ」
 タカニャの言葉のすぐ後だ。
 ロザリンド隊が後退したのが見えた。
 それに合わせてリアーナ隊が突撃する。ロザリンド隊が撹乱した上で、挟み撃ちの形を取る。
「ほら、ロザリンドが再突入するよ」
 タカニャに言われて、リアーナは周囲を見回すが……ゴーレムの群れで何も見えないのであった。

★★★

 はわわわわっ
「ちょっとビスマルクさん、ロザリンドが危なくないですか? リアーナが遅いの?」
 離れた位置から戦況を見守る俺。
「フォリオもタカさんもいるから大丈夫だ。それより全体を見ろ。微細な変化を見逃すな。アイツ等がいるかも知れないからな」
 アイツ等とはもちろんアリエリやヴァルゴの事。
 大きくはあるが、知っている程度で重要な施設が存在しない都市。多分アイツ等はいないとは思うけど、気が抜けねぇよ。
 最初のロザリンド隊の攻撃で、ゴーレムがロザリンド隊の方へ寄った。
 時間差、そして反対側、リアーナ隊の攻撃でゴーレムが分散し、ゴーレム同士の間隔が空く。ここから見れば隙間が出来たような感じだ。
「では私も出るぞ。当初の計画通りにな」
 そう言ってビスマルク隊も出撃するのだった。

★★★

 俺、ロザリンド、リアーナ。そしてビスマルク、フォリオ、タカニャ。
「退くタイミング、再突入のタイミング、考えていた最中に全部フォリオから指示されたわ。私が少しずつ遅れているのね」
 ロザリンドは言う。
 それに対してフォリオは……
「全く、その『考えていた』が無駄な時間なんだ。一瞬で判断しろ」
「……そうね」
「私はロザリンドちゃんが入って来たのが全く分かりませんでした。どうしてタカさんは分かったんですか?」
「そうさね……簡単に言えば雰囲気だね」
 リアーナの質問にタカニャが言葉を続ける。
「これはリアーナにもロザリンドにも言えるんだけどね、二人ともまだ戦場での視野が狭いのさ。もっと周りに気を配っていたなら気付く事はいっぱいあるはずだよ」
「やっぱり私には難しいのかな……」
 リアーナは小さく呟くのだが、それを聞いてビスマルクは笑った。
「ガハハハハッ、フォリオとタカさんの水準になれる者すら少ないんだぞ。最初から無理なのは分かっている。その上で隊長を任せているんだ」
「厳し過ぎる教育。二人とも大変だなぁ」
「ビスマルクさんの推薦だからな。当然だろう」
「ははっ、期待しているからね」
「シノブ、他人事ではないんだぞ。今日の指揮を自分でどう思う?」
 ……相手の動きを予想して何通りもの作戦を用意した。そして相手の動きも全ては予想内だった……けど……
「……こっちの行動も相手の行動も予想内だったけど、少しずつズレを感じました。多分、それがもっと大きくなって重なると想定外の形になるかも」
 リアーナ隊の、ロザリンド隊の、ビスマルク隊の、そして敵の、予想していたその動きが速かったり遅かったりと、俺の中でカッチリと噛み合わない。
「そこまで分かっているなら、あとは慣れるだけだな。ガハハハハッ」
 ビスマルクは笑った。
「慣れるだけって……」
 つまり俺の役割はそのズレを少しでも修正する事。そして出来るだけ自分の思い描いた流れを生み出す事。そういう事なんだと思う。
 今日は無事に勝てたけど、次はもっと上手く出来るように頑張らんとな。

 そんな感じで俺達は大陸を進んで行く。

★★★

 ゴーレム共をブッ壊す。
 大陸の混乱に乗じた犯罪者共をシバき上げる。
 戦いを重ねるうちにリアーナもロザリンドもその指揮が鋭くなる。俺も少しずつ指揮が上手くなっているような気がする!!

 休憩中。
 基本的に水源からあまり離れないように移動していた。水の確保は大事だからな。
 そして陽気は暖かい。
 だったらするしかないでしょう……水浴びを!!
 流れの緩やかな川があるしな!!

 天国や!! ここは天国や!!

 リアーナ、ロザリンド、リコリス、ヴイーヴル、キオ、フレア、ホーリー、美しい女性達の裸体が目の前に!!
「シノブ、どうしたんだい? そんなに目を輝かせて」
 タカニャだ。
 あっ、うん……タカニャも良い体はしているよ。筋肉パンパンの。
「久しぶりの水浴びだから嬉しくて」
 本当はみんなの裸が見られる事が嬉しいんですけどね、ぬふふふっ。

 少しだけ冷たい水。
 体の汚れが洗い流されていく。

「しかし、本当に何なの、リアーナのその胸。どうやればそんなに育つの?」
 俺はリアーナの胸を凝視する。重量を感じさせる大きな乳房。
「ちょっと、シノブちゃん、そんなに見ないで……」
 両腕で胸を隠すリアーナだが、その押さえた腕で乳房の形が変わる。見ているだけで柔らかさが伝わるようだった。
「乳無いーズ二号の栄養を吸い取っているとか?」
「ちょっとシノブ。二号って私の事ね? 私だって無いわけじゃないのよ」
 と、恥ずかしそう言うロザリンドにはささやかな胸。
「すでにリコリスに負けてんだけど」
「っ!!?」
「でも大きくても動きの邪魔になるだけですわ」
 リコリスは年齢のわりに大きい胸をフニフニと触る。
「……羨ましいです……」
 乳無いーズ三号であるキオが呟く。
「大丈夫よ~ロザリンドちゃんもキオちゃんも~まだまだ育ち盛り、おっぱいも大きくなるわよ~」
「ちょっとヴイーヴルさん!! 僕は!!? 僕!!」
「あ~シーちゃんは~んん~そうね~んん~そうね~大きくなると良いわね~」
「希望!!?」
「大丈夫です、シノブ様。女性の魅力は胸だけではありません」
「胸のあるホーリーに言われてもイラッとするんだけど!!」
 そんな俺達を見てフレアはニコニコと笑う。
「そんなわけでリアーナ失礼」
「シノブちゃん!!?」
 俺はリアーナの胸を揉む。
 今の俺は女。これは断じてセクハラなどではない……スキンシップじゃ!!
「柔らかい!! すんごい柔らかい!!」
「ちょぉぉぉぉぉっと、シノブちゃぁぁぁぁぁん!!」
「ここか!!? ここがええんか!!?」
「いい加減にしなさい」
 ロザリンドに頭を引っ叩かれたが、心は癒されたぜ。

 たまにはこんなご褒美がないとな!!
 これが長旅の楽しみの一つである。
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