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鬼ごっこ編
違和感と各場所での戦い
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物見櫓の上、キオが常に周囲へ視線を走らせていた。
森林の中、常に罠を仕掛けるハリエットがヴォルフラムの足で走り回っている。
少人数を各個撃破して回るリアーナとタカニャ。
川上にはヴイーヴルとユリアン。押して引いてと現時点では戦線を維持している。
そして下流。
「あ、あの、フォリオさんがこちらに向かってきます、はい」
「……」
「シ、シノブさん?」
「ちょっと、シノブ、ボケっとしてんじゃないよ!!」
シャーリーの言葉に俺はビクッと体を震わす。
「えっ、な、何?」
「フォリオがこちらに向かってきますわ」
「うん、わかった。リコリス。すぐミツバさんと下流の方に援軍ね」
戦力が減ったとしても伝える必要のある連絡、って事か。とにかく減った人員の補充が必要だろ。
すぐにリコリスが飛び出す。
「あ、あの、シノブさん?」
「うん。大丈夫」
……違和感……
そう違和感だ、これは。
説明ができない何か。心に何かが引っ掛かる。
そんな俺の様子を見てシャーリーは言う。
「ねぇ、あたしはシノブほど頭は良くないけどさ、なんか話してくれれば良い答えが浮かぶかもよ?」
「ありがと。でも私にもよく分からないんだよ。作戦は上手くいってると思うんだけど、なんか気になるんだよねぇ」
「上手くいきすぎて、って事? キオはどう思う?」
「えっ、わ、私ですか? えっと、えっと」
「特に気になる事は無し、と。ヒメは?」
「拙者には分かりませぬ」
シャーリーの言葉に、服の下からにゅるんと姿を現し、にゅるんと戻るコノハナサクヤヒメ。こいつの動きには違和感の欠片すら無ぇ。
「まぁ、そういう時はさ、一から全て考え直すのが一番じゃない?」
そんなシャーリーに俺は唸って返すのだった。
★★★
森林の中、誰も、何も触れていないのにハリエットの罠が発動する。
「ユリアン。こっちの罠はね、全部片付けたよ。次はそっち?」
アリエリだ。見えない力で罠に触れ、安全に発動させ撤去する。
「いや、そっちはそのままで。次は向こうを頼む」
指示を聞かない帝国兵。その帝国兵を率いるユリアンが戦線を維持できているのには理由がある。それは誰も知る事の無いユリアンの優れた手腕。
「こっちの罠は撤去したぞ!!」
ユリアンは大声で叫ぶ。帝国兵に聞こえるように、そして鬼達にも聞こえるように。
連続して巻き起こる爆発音。
「向こうも片付けたよ」
「次はそっちで壁を作ってくれ。倒さなくても良いから鬼達を通さないように」
「うん。任せて」
ハリエットの罠は相手の動きを阻むもの。しかし今、ユリアンは罠の撤去とアリエリの壁で戦場の動きに流れを作り出していた。
ユリアンの言葉で鬼と帝国兵が罠の無い場所に集まる。しかし鬼達が集まり過ぎないように残した罠とアリエリで妨害する。
つまり味方も敵も、今この場をコントロールしているのはユリアンなのだ。もちろん長い時間この状況を維持できる程に甘くはない。それでも時間を稼ぐには十分だった。
ヴイーヴルとベレント。
剛腕の二人。武器と武器がぶつかり合う度に重い金属と火花が散る。
竜の角と翼と鱗、すでにヴイーヴルも本気である。そしてベレントも。お互いに武器を交わして押し合う。
「シーちゃん……シノブちゃんから聞いたわ~あなたとユッテちゃんの事~」
「そうか」
「全てはユッテちゃんの為なのよね~もうこの辺りで止めにしない~?」
「……」
その表情に何ら変化は無い。しかし雰囲気に小さな変化……があるように感じるヴイーヴルだった。
ベレントは力でヴイーヴルを押し返す。そして金棒を一閃。その金棒を力で叩き返す大剣クレイモア。
「そう、続けるのね~」
★★★
丘陵地帯で待機するのはタックルベリーとミラン、それと帝国兵が二十名程だった。
探索魔法を飛ばしていたタックルベリー。
「まぁ、こっちだと思ったけど、やっぱりだな。アビスコが来るぞ」
「分かった。出るぞ。俺が先頭に立つからベリーは後方から頼む」
「はいよ」
アビスコがいる方向の森林。鬼達が抜けてくる。二人の目的は森林を抜けてきた鬼達の足止め。戦力的にもアビスコがいるここが一番厳しいので近くに待機していたのだ。
やがて。
「グオォォォッ」
「うわぁぁぁっ」
ビスマルクとドレミドが森林の中から叩き飛ばされ、丘陵地帯の草の上を転がる。
「おおう、あれが帝都第三十都市。あそこにシノブがいるのか。ん?」
アビスコ鬼王が森林地帯を抜ける。
そのアビスコの周囲、青白い光の塊、ビシビシと放電する雷球が囲む。そして空気の破裂するような音と激しい火花。絶命を免れない雷撃がアビスコを撃つ。
さらに雷球が消えると同時、ミランが盾を前面にしてアビスコに体当たり。アビスコはバランスを崩すようにして後退った。ミランはすぐさま剣を横薙ぎにするのだが、その一撃は金棒で受け止められる。
「魔法の威力も、体当たりも、凄い威力じゃないか」
アビスコは笑う。その口からは煙が漏れ出していた。
「まぁ、あれで倒せるなら苦労はないか」
呆れたように言うタックルベリー。
飛び退いたミランはアビスコの姿を確認する。左手、上腕が切り落とされている。
ミランはビスマルクに視線をチラッと向けた。
立ち上がるビスマルクはその視線に気付き言う。
「このままここで私達四人はアビスコを抑える。帝国兵は森の中にいるロザリンドの援護を頼む」
ビスマルクはドレミド、タックルベリー、ミラン、自分を含めた四人で対処ができると言う。理由は分からないが、対処できる根拠がある……そうミランは判断した。
ちなみにロザリンド。フォリオと共にシノブへ情報を届けようと離脱したが、鬼達の激しい追撃を阻む為に森林の中へと残っていた。
数少ない帝国兵で鬼達と対峙している。
そうして各場所での戦いはまだまだ続いていくのである。
森林の中、常に罠を仕掛けるハリエットがヴォルフラムの足で走り回っている。
少人数を各個撃破して回るリアーナとタカニャ。
川上にはヴイーヴルとユリアン。押して引いてと現時点では戦線を維持している。
そして下流。
「あ、あの、フォリオさんがこちらに向かってきます、はい」
「……」
「シ、シノブさん?」
「ちょっと、シノブ、ボケっとしてんじゃないよ!!」
シャーリーの言葉に俺はビクッと体を震わす。
「えっ、な、何?」
「フォリオがこちらに向かってきますわ」
「うん、わかった。リコリス。すぐミツバさんと下流の方に援軍ね」
戦力が減ったとしても伝える必要のある連絡、って事か。とにかく減った人員の補充が必要だろ。
すぐにリコリスが飛び出す。
「あ、あの、シノブさん?」
「うん。大丈夫」
……違和感……
そう違和感だ、これは。
説明ができない何か。心に何かが引っ掛かる。
そんな俺の様子を見てシャーリーは言う。
「ねぇ、あたしはシノブほど頭は良くないけどさ、なんか話してくれれば良い答えが浮かぶかもよ?」
「ありがと。でも私にもよく分からないんだよ。作戦は上手くいってると思うんだけど、なんか気になるんだよねぇ」
「上手くいきすぎて、って事? キオはどう思う?」
「えっ、わ、私ですか? えっと、えっと」
「特に気になる事は無し、と。ヒメは?」
「拙者には分かりませぬ」
シャーリーの言葉に、服の下からにゅるんと姿を現し、にゅるんと戻るコノハナサクヤヒメ。こいつの動きには違和感の欠片すら無ぇ。
「まぁ、そういう時はさ、一から全て考え直すのが一番じゃない?」
そんなシャーリーに俺は唸って返すのだった。
★★★
森林の中、誰も、何も触れていないのにハリエットの罠が発動する。
「ユリアン。こっちの罠はね、全部片付けたよ。次はそっち?」
アリエリだ。見えない力で罠に触れ、安全に発動させ撤去する。
「いや、そっちはそのままで。次は向こうを頼む」
指示を聞かない帝国兵。その帝国兵を率いるユリアンが戦線を維持できているのには理由がある。それは誰も知る事の無いユリアンの優れた手腕。
「こっちの罠は撤去したぞ!!」
ユリアンは大声で叫ぶ。帝国兵に聞こえるように、そして鬼達にも聞こえるように。
連続して巻き起こる爆発音。
「向こうも片付けたよ」
「次はそっちで壁を作ってくれ。倒さなくても良いから鬼達を通さないように」
「うん。任せて」
ハリエットの罠は相手の動きを阻むもの。しかし今、ユリアンは罠の撤去とアリエリの壁で戦場の動きに流れを作り出していた。
ユリアンの言葉で鬼と帝国兵が罠の無い場所に集まる。しかし鬼達が集まり過ぎないように残した罠とアリエリで妨害する。
つまり味方も敵も、今この場をコントロールしているのはユリアンなのだ。もちろん長い時間この状況を維持できる程に甘くはない。それでも時間を稼ぐには十分だった。
ヴイーヴルとベレント。
剛腕の二人。武器と武器がぶつかり合う度に重い金属と火花が散る。
竜の角と翼と鱗、すでにヴイーヴルも本気である。そしてベレントも。お互いに武器を交わして押し合う。
「シーちゃん……シノブちゃんから聞いたわ~あなたとユッテちゃんの事~」
「そうか」
「全てはユッテちゃんの為なのよね~もうこの辺りで止めにしない~?」
「……」
その表情に何ら変化は無い。しかし雰囲気に小さな変化……があるように感じるヴイーヴルだった。
ベレントは力でヴイーヴルを押し返す。そして金棒を一閃。その金棒を力で叩き返す大剣クレイモア。
「そう、続けるのね~」
★★★
丘陵地帯で待機するのはタックルベリーとミラン、それと帝国兵が二十名程だった。
探索魔法を飛ばしていたタックルベリー。
「まぁ、こっちだと思ったけど、やっぱりだな。アビスコが来るぞ」
「分かった。出るぞ。俺が先頭に立つからベリーは後方から頼む」
「はいよ」
アビスコがいる方向の森林。鬼達が抜けてくる。二人の目的は森林を抜けてきた鬼達の足止め。戦力的にもアビスコがいるここが一番厳しいので近くに待機していたのだ。
やがて。
「グオォォォッ」
「うわぁぁぁっ」
ビスマルクとドレミドが森林の中から叩き飛ばされ、丘陵地帯の草の上を転がる。
「おおう、あれが帝都第三十都市。あそこにシノブがいるのか。ん?」
アビスコ鬼王が森林地帯を抜ける。
そのアビスコの周囲、青白い光の塊、ビシビシと放電する雷球が囲む。そして空気の破裂するような音と激しい火花。絶命を免れない雷撃がアビスコを撃つ。
さらに雷球が消えると同時、ミランが盾を前面にしてアビスコに体当たり。アビスコはバランスを崩すようにして後退った。ミランはすぐさま剣を横薙ぎにするのだが、その一撃は金棒で受け止められる。
「魔法の威力も、体当たりも、凄い威力じゃないか」
アビスコは笑う。その口からは煙が漏れ出していた。
「まぁ、あれで倒せるなら苦労はないか」
呆れたように言うタックルベリー。
飛び退いたミランはアビスコの姿を確認する。左手、上腕が切り落とされている。
ミランはビスマルクに視線をチラッと向けた。
立ち上がるビスマルクはその視線に気付き言う。
「このままここで私達四人はアビスコを抑える。帝国兵は森の中にいるロザリンドの援護を頼む」
ビスマルクはドレミド、タックルベリー、ミラン、自分を含めた四人で対処ができると言う。理由は分からないが、対処できる根拠がある……そうミランは判断した。
ちなみにロザリンド。フォリオと共にシノブへ情報を届けようと離脱したが、鬼達の激しい追撃を阻む為に森林の中へと残っていた。
数少ない帝国兵で鬼達と対峙している。
そうして各場所での戦いはまだまだ続いていくのである。
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