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第57話:ミシェルだけは絶対に俺が守る~レオ視点~

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ミシェルと婚約してからと言うもの、本当に夢の様な日々を送っていた。もう誰かにミシェルを奪われる心配はないうえ、ミシェルに自由に触れられるのだ!さらにミシェルも俺の事が好きな様で、たまに恥ずかしそうに甘えて来る。この姿がまた、可愛くて仕方がない。

ただ、今までずっと自分の気持ちを押し殺してきたせいか、ここにきて一気に気持ちが溢れ出してしまった。

だから、ついミシェルが他の男と話しているだけで、体中から怒りが沸きあがってミシェルを怒鳴りつけてしまう事も少なくない。

特にユーグラテスが絡んでくると、自分でもびっくりするほど感情がコントロールできなくなる。一度ミシェルの頬をつねった事で、ミシェルに怒られた事もあった。

俺ってこんなに嫉妬深かったんだと、自分でもびっくりするくらいミシェルを束縛したくてたまらない。いっその事、部屋に閉じ込めておけたら安心なのに…

そんな恐ろしい事まで考えてしまう事もある。ダメだ、好きすぎて暴走が止まらない。とにかく、ミシェルに嫌われない様に、自分の感情をもっと押さえないと!

何だかんだであっという間に1年が過ぎ、いよいよ学年末休みを迎えた。学年末休みには、ミシェルと2人きりでミューティング公爵家の領地で過ごす事になっている。

ただ今回は視察に行く為、俺の予定はびっしりだ。それでも、ミシェルとずっと一緒に居られるのは、幸せ以外何者でもない。

ミシェルの父親には、耳にタコができるくらい「ミシェルに手を出すなよ!」と言われた。さすがの俺でも、結婚するまでは手を出すつもりはない。ただ、口付けくらいは問題ないはずだ。そう思って、行きの馬車の中で何度もミシェルに口付けをした。

ただ、なぜかそのたびにチャチャが邪魔をしに来る。こいつ、そう言えばオスだったな!もしかして、わざと邪魔しているのか?でも、尻尾を振って嬉しそうに邪魔をしてくるチャチャを見ていると、どうしても許してしまう…

こいつ、オスのくせに可愛すぎるだろう!そうそう、チャチャには今でも定期的におやつをやっている。もちろん、低カロリーのものを少しだけだが。

ミューティング公爵家の領地はとにかく広く、自然豊かな場所だった。領地に着いた翌日には、早速視察スタートだ。ミシェルがいつも行っていた孤児院にも行った。正直、ミシェル狙いの男が居るのでは?と疑っていたが、孤児院に着いたとたん、そんな不安は吹き飛んだ。

とにかく皆無邪気で、俺たちがやって来た事を全力で歓迎してくれた。それに年齢層も低く、ミシェルを恋愛対象として見ていそうな奴も見当たらなかった。俺が騎士団員だと知ると、嬉しそうに「剣を教えて」とまとわりついて来る子供たち。

こいつらを見ていると、俺が公爵になった時、こうやってこいつらがいつまでも笑顔で暮らせるよう、もっと領地について勉強をしないと!そんな気持ちにさせてくれる。

さらにその日は、チャチャの産まれた牧場にも案内してくれたミシェル。チャチャにそっくりな兄弟にも会えた。領地に来た事で、ミシェルと離れ離れだった2年半、ミシェルがどう過ごしていたのか少しだけ見れた気がして嬉しかった。

あの時は会いたくてたまらなかったが、今は当たり前のようにミシェルが側にいてくれる。これからもずっと、ミシェルは俺の側にいてくれるだろう。そう思うと、言葉に出来ないほど幸福な気分になる。

ただ、次の日からは鬼の様な視察が始まった。朝早くから夜遅くまで視察の日々。視察後は、領地に関する書類に目を通す。日々体を鍛えている俺でも、さすがにこのスケジュールはキツイ。

そんな俺を心配したミシェルが、俺の為にサンドウィッチを作ってくれる。これがまたウマい!それに、夜遅くに執務室を訪ねて来るミシェルを見ていると、なんだか新婚の様な気分になる。きっと結婚したら、こんな感じなんだろうな。そう思うと、疲れも一気に吹っ飛ぶ。

そんな日々を3週間ほど過ごした後、やっと最後の視察を終えた。これから王都に帰るまでの数日間は、ずっとミシェルと居られる。そんな中、ミシェルが街に買い物に行きたいと言い出した。事実上、デートの誘いだ。

そう言えば、ミシェルと2人きりでデートをした事ってなかったな!せっかくなら、誰にも邪魔されず、2人でゆっくりデートがしたい。そんな思いから、護衛騎士を付けず、2人きりで街を堪能する事にしたのだが、それが間違いだった。

そう、俺たちは子供に嵌められ、危うく殺されそうになったのだ。どうやら、相手は俺を狙っていた様だ。さらに帰りの馬車には、ボーガンまで設置してやがった。

たまたま機転を利かせたミシェルによって発見することが出来たが、万が一気づかずにいたら、ミシェルまで命を落としていたかもしれない。

そう思った時、全身から血の気が引いた!ミシェルだけは、絶対に何があっても守りたい。たとえ、俺の命と引き換えにしてもだ!そんな思いから、帰りの馬車は別々に乗ろうと提案した。

それなのにミシェルは、俺の側にいたい、俺にもしもの事があったら自分は生きていけないからと、はっきり告げた。ミシェルの言葉を聞き、胸が熱くなった。俺がミシェルを大切に思っている様に、ミシェルも俺の事を思ってくれているんだって!

本当にこいつは、俺にどこまで惚れさせたら気が済むんだ!そこまで言われたら、同じ馬車に乗らない訳にはいかないだろうが!

結局ミシェルと同じ馬車に乗って、王都に帰って来た。有難い事に、その後は何事もなく王都まで戻れた。

王都に戻ったその日、すぐに父上とミシェルの父親を呼び出した。既に連絡が行っていた2人。俺の顔を見るなり

「レオ、今回の事聞いたぞ。お前の命が狙われたんだってな!とにかく無事でよかった」

珍しく父上が心底ほっとした様な表情で話しかけて来た。

「それにしても、一体誰が何の目的でレオを狙ったんだ?レオ、誰か心当たりはあるか?」

ミシェルの父親の言葉で、一瞬ユーグラテスの顔が頭をよぎった。いや、いくら何でも、ユーグラテスがそこまでするはずがない。そもそも俺を殺したところで、ユーグラテスがミシェルと結婚できる保証はないし…

「いや、心当たりはないよ。ただ、帰りの馬車にボーガンが仕掛けられていた事を見ると、もしかしたら俺だけでなく、ミシェルまで狙われている可能性もある」

「そうだな。とにかくしばらくは、お前とミシェルに付けている護衛の数を増やそう。それから、お前たちを襲った奴らだが、昨日新たに主犯格とみられる女が見つかったらしい。ただ…すでに殺されていたようだ。」

口封じの為に殺されたか。やっぱり、裏で指示を出しているのは、高貴な身分の人間の可能性が高いな。それにもしかしたら、大きな組織が動いている可能性もある。

「とにかく、この事はミシェルには内緒にしておいて欲しい。ただでさえ、今回の事で随分と不安に思っている様だからな」

これ以上ミシェルに不安な思いをさせてたまるか!とにかく、しばらくは騎士団の稽古も早く切り上げて、出来るだけミシェルの側にいよう。ミシェルが早く落ち着くように!

「レオ、ミシェルにはこれ以上、この事件について情報を与える気はないよ。有難い事に今回の事件、ガーディアン侯爵も協力してくれると言っている。早く犯人を見つけ出して、ミシェルを安心させてやろう」

ガーディアン侯爵が協力してくれるなら、随分心強いな。とにかく、何があってもミシェルだけは守らないと!俺の可愛いミシェル、絶対にお前だけは傷つけさせないから!
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