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第23話:夜会は疲れます
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「ジャック様、私とダンスを踊って頂けますか?」
「いいえ、私と」
何人もの令嬢がお兄様めがけて押し寄せて来たのだ。妹の私が言うのもなんだが、性格はあまり良くないが、見た目は物凄くいい。さらに勉学、武術にも優れている。そんなお兄様にはまだ婚約者がいない。その為、ここでも熾烈な次期公爵夫人争いが起こっているのだ。
令嬢の迫力に押され、その場を立ち去ろうとした私の腕を掴んだのは、お兄様だ。
「すまない、まだ妹と踊っていなくてな。セイラ、今日の俺のパートナーはお前だ。一緒に踊ろう」
そう言って私をホールの真ん中に連れて来た。お兄様め、うまく令嬢たちを巻いたわね。そう思いつつも、お兄様とダンスを踊る。そう言えば、公の場でダンスを踊るのは初めてだ。まさかファーストダンスの相手がお兄様だなんて、夢もへったくれもないわね…
ただ私たちのダンスを見て、なぜか周りの貴族たちが見つめている。
「お兄様、なぜか注目されている様ですわ」
「そりゃそうだろう、俺たちのダンスは一流だからな。ほら、セイラ、回れ」
そう言うと、私をクルクル回し始めたのだ。ちょっと、何をするのよ。そう思いつつも、クルクルと回る。
その瞬間、周りから歓声が上がった。さらに調子に乗ったお兄様によって、何度も回されたり、難しいステップをさせられたりした。なんだかんだで3曲もお兄様に付き合わされた。
ダンスが終わると、周りから盛大な拍手が沸き起こる。お兄様にあれこれさせられたので、さすがに喉が渇いた。
「お兄様、喉が渇きました。少し休憩しましょう」
「そうだな」
2人で飲み物を取りに行こうとした瞬間、再び令嬢に囲まれたお兄様。その手には、飲み物が握られている。
「ジャック様、とても素敵でしたわ。喉が渇いたでしょう。どうぞ、お飲みください」
「いいえ、私のを」
次々と令嬢がお兄様に飲み物を渡している。お兄様も大変ね。そう思いながら、飲み物を取りに行こうとしたのだが…
「セイラ、とても素敵なダンスだったよ。僕とも踊ってくれるかな?」
私の元にやって来たのは、ライムだ。こいつ、私が3曲続けて踊っていた事を知らないのかしら?令嬢たちですら、お兄様に飲み物を持ってきていたのに…
「申し訳ございません、少し疲れたので、今から休憩をしようと思っていたところです」
丁重にお断りして、飲み物を取りに行こうとしたのだが…
「それなら、一緒に行こう」
なぜか私の手を取り、歩き出そうとするライム。ここは普通、持ってきてくれるものなのじゃないの?とにかくここでライムと一緒にいたら、また貴族たちに変な誤解を与えてしまう。
「ごめんなさい、殿下。ちょっとお化粧室に行って来てもよろしいかしら?」
「ああ、そっちだったんだね。気が付かなくてごめん。気を付けて行ってくるんだよ」
さすがにお化粧室にまでは付いてこられないものね。何とかライムを巻く事に成功し、そのまま中庭に出た。
夜の中庭は、綺麗にライトアップされていて本当に綺麗だ。しばらく美しい中庭を見た後は、ベンチに腰を下ろす。ふと空を見上げると、綺麗な星空が。
そう言えば、クレーション王国の誕生祭の時、サフィさんと一緒に星空を見たのよね。あの時程ではないが、この国の星空もとても綺麗だ。わざわざ忙しいのに私の元にやってきてくれた。
あれからまだ数か月しか経っていないのに、もう何年も前の様な気がする。またいつか、クレーション王国に行きたいな。貴族学院を卒業したら、いつか遊びに行こう。でもその頃には、子供たちは大きくなっているだろうし、サフィさんは結婚しているかもしれないわね。
そう思ったら、なぜか胸がチクリと痛んだ。何だろう、この胸の痛みは…
その時だった。
「セイラ、こんなところにいたんだね。一体何をしていたんだい?」
やって来たのはライムだ。せっかく思い出に浸っていたのに、一気に現実に引き戻された。
「ちょっと人に酔ってしまったので、休憩しておりましたの。そろそろホールに戻りますわ」
「待って、セイラ。今度隣国から有名な宝石商が来るんだ。セイラ、宝石が大好きだっただろう?母上に頼んで特別に参加させてあげる。欲しい宝石を好きなだけ選んでいいよ」
どうだ、嬉しいだろう。そう言わんばかりの顔をしているライム。この人、本当に私の事なんて何も見ていないのね。でも、私にライムを責める権利はないか…だって昔の私も、ライムの事をしっかり見ていなかったのだから…
「ありがとうございます、殿下。でも、今は宝石にはあまり興味がないので。それでは失礼します」
ライムに頭を下げ、急いでホールへと戻って来た。すると令嬢たちに囲まれてげっそりしているお兄様と目が合う。
「セイラ、どこに行っていたんだ。さあ、そろそろ帰ろうか。セイラは今日が夜会デビューだろう。それでは皆様、私たちはこれで失礼します」
そう言うと私を連れホールを後にし、さっさと馬車に乗り込んだ。
「セイラ、今までどこに行っていたんだ。お前がいないせいで、俺は酷い目にあったんだぞ」
隣でギャーギャー文句を言っているお兄様。それにしても今日の夜会は疲れたわ。初めての夜会に想像以上に疲れていたのか、お兄様の文句を子守唄に、そのまま眠ってしまったのであった。
「いいえ、私と」
何人もの令嬢がお兄様めがけて押し寄せて来たのだ。妹の私が言うのもなんだが、性格はあまり良くないが、見た目は物凄くいい。さらに勉学、武術にも優れている。そんなお兄様にはまだ婚約者がいない。その為、ここでも熾烈な次期公爵夫人争いが起こっているのだ。
令嬢の迫力に押され、その場を立ち去ろうとした私の腕を掴んだのは、お兄様だ。
「すまない、まだ妹と踊っていなくてな。セイラ、今日の俺のパートナーはお前だ。一緒に踊ろう」
そう言って私をホールの真ん中に連れて来た。お兄様め、うまく令嬢たちを巻いたわね。そう思いつつも、お兄様とダンスを踊る。そう言えば、公の場でダンスを踊るのは初めてだ。まさかファーストダンスの相手がお兄様だなんて、夢もへったくれもないわね…
ただ私たちのダンスを見て、なぜか周りの貴族たちが見つめている。
「お兄様、なぜか注目されている様ですわ」
「そりゃそうだろう、俺たちのダンスは一流だからな。ほら、セイラ、回れ」
そう言うと、私をクルクル回し始めたのだ。ちょっと、何をするのよ。そう思いつつも、クルクルと回る。
その瞬間、周りから歓声が上がった。さらに調子に乗ったお兄様によって、何度も回されたり、難しいステップをさせられたりした。なんだかんだで3曲もお兄様に付き合わされた。
ダンスが終わると、周りから盛大な拍手が沸き起こる。お兄様にあれこれさせられたので、さすがに喉が渇いた。
「お兄様、喉が渇きました。少し休憩しましょう」
「そうだな」
2人で飲み物を取りに行こうとした瞬間、再び令嬢に囲まれたお兄様。その手には、飲み物が握られている。
「ジャック様、とても素敵でしたわ。喉が渇いたでしょう。どうぞ、お飲みください」
「いいえ、私のを」
次々と令嬢がお兄様に飲み物を渡している。お兄様も大変ね。そう思いながら、飲み物を取りに行こうとしたのだが…
「セイラ、とても素敵なダンスだったよ。僕とも踊ってくれるかな?」
私の元にやって来たのは、ライムだ。こいつ、私が3曲続けて踊っていた事を知らないのかしら?令嬢たちですら、お兄様に飲み物を持ってきていたのに…
「申し訳ございません、少し疲れたので、今から休憩をしようと思っていたところです」
丁重にお断りして、飲み物を取りに行こうとしたのだが…
「それなら、一緒に行こう」
なぜか私の手を取り、歩き出そうとするライム。ここは普通、持ってきてくれるものなのじゃないの?とにかくここでライムと一緒にいたら、また貴族たちに変な誤解を与えてしまう。
「ごめんなさい、殿下。ちょっとお化粧室に行って来てもよろしいかしら?」
「ああ、そっちだったんだね。気が付かなくてごめん。気を付けて行ってくるんだよ」
さすがにお化粧室にまでは付いてこられないものね。何とかライムを巻く事に成功し、そのまま中庭に出た。
夜の中庭は、綺麗にライトアップされていて本当に綺麗だ。しばらく美しい中庭を見た後は、ベンチに腰を下ろす。ふと空を見上げると、綺麗な星空が。
そう言えば、クレーション王国の誕生祭の時、サフィさんと一緒に星空を見たのよね。あの時程ではないが、この国の星空もとても綺麗だ。わざわざ忙しいのに私の元にやってきてくれた。
あれからまだ数か月しか経っていないのに、もう何年も前の様な気がする。またいつか、クレーション王国に行きたいな。貴族学院を卒業したら、いつか遊びに行こう。でもその頃には、子供たちは大きくなっているだろうし、サフィさんは結婚しているかもしれないわね。
そう思ったら、なぜか胸がチクリと痛んだ。何だろう、この胸の痛みは…
その時だった。
「セイラ、こんなところにいたんだね。一体何をしていたんだい?」
やって来たのはライムだ。せっかく思い出に浸っていたのに、一気に現実に引き戻された。
「ちょっと人に酔ってしまったので、休憩しておりましたの。そろそろホールに戻りますわ」
「待って、セイラ。今度隣国から有名な宝石商が来るんだ。セイラ、宝石が大好きだっただろう?母上に頼んで特別に参加させてあげる。欲しい宝石を好きなだけ選んでいいよ」
どうだ、嬉しいだろう。そう言わんばかりの顔をしているライム。この人、本当に私の事なんて何も見ていないのね。でも、私にライムを責める権利はないか…だって昔の私も、ライムの事をしっかり見ていなかったのだから…
「ありがとうございます、殿下。でも、今は宝石にはあまり興味がないので。それでは失礼します」
ライムに頭を下げ、急いでホールへと戻って来た。すると令嬢たちに囲まれてげっそりしているお兄様と目が合う。
「セイラ、どこに行っていたんだ。さあ、そろそろ帰ろうか。セイラは今日が夜会デビューだろう。それでは皆様、私たちはこれで失礼します」
そう言うと私を連れホールを後にし、さっさと馬車に乗り込んだ。
「セイラ、今までどこに行っていたんだ。お前がいないせいで、俺は酷い目にあったんだぞ」
隣でギャーギャー文句を言っているお兄様。それにしても今日の夜会は疲れたわ。初めての夜会に想像以上に疲れていたのか、お兄様の文句を子守唄に、そのまま眠ってしまったのであった。
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