何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります

Karamimi

文字の大きさ
18 / 75

第18話:騎士団長になるまでは自分の気持ちを封印しよう~デイビッド視点~

しおりを挟む
アンジュはすぐに近くの病院へと運ばれた。幸い、傷自体は深くなく、跡は残らないとの事。

病院には俺の両親とアンジュの両親も来ていた。

アンジュの両親には

「アンジュが連れ去られそうになった時、体を張って止めようとしてくれたのだよね。ありがとう、デイビッド殿」

そう感謝された。でも、俺は感謝される様なことはしていない。むしろ俺は、アンジュを危険に晒し、怪我までさせてしまったのだから…

それなのにアンジュまで

「デイビッド様、私を守ろうとしてくれて、ありがとうございます」

そうお礼を言ってきたのだ。それがどうしようもなく辛かった。

俺たちを助けてくれたのは騎士団長だ。騎士団長がいなかったら、俺たちは今頃どうなっていたか…

俺も騎士団長の様に強くなりたい!そして、今度こそアンジュを守れる男になりたい。

俺はこの日、決意した。騎士団長になるまで、アンジュへの気持ちを封印しよう。そして騎士団長になれた暁には、アンジュに結婚を申し込もう。

俺はアンジュが大好きだ、その気持ちを封印するというのは、とてつもなく辛い事。でも…アンジュに怪我をさせてしまったのだ。誰よりも大切で、誰よりも守りたい相手に俺は守られ、そして怪我をさせた。それが悔しくてたまらないと同時に、自分に異常なほどに腹が立つ。

俺は自分に対して罰を与える意味でも、騎士団長になるまではアンジュへの気持ちを封印する事に決めたのだ。

その日から俺は、朝早くから夜遅くまで、必死に稽古を続けた。でも、アンジュへの気持ちを封印するというのは、予想以上に辛く、心が折れそうになる事もあった。そんなときは、あの時の事を思い出すようにしている。

俺を庇って腕から血を流す、アンジュの姿を。あの姿を思い出すと、もっと頑張らないと!という気持ちになるのだ。

そんな中、アンジュの家から、正式に俺とアンジュを婚約させたいとの申し出があった。俺だって、アンジュと婚約したい、でも…今受ける訳にはいかない!そんな思いで、断りを入れた。

正直辛くて辛くて、身を引き裂かれるような思いだった。両親からも

「アンジュ嬢の何が気にいらないのだ?いいお嬢さんじゃないか!」

と言われたが、今はまだ、彼女を受け入れる事は出来ない。それでもアンジュは、俺の事を思ってくれている様で、夜会では俺の瞳の色のドレスを着たり、俺に話し掛けたりしてくれている。

その気持ちに答えられないのが、とにかく辛い。さらにその後も、アンジュの家から、何度も婚約の申し込みがあった。そのたびに、断わり続けた。

頼む、もう婚約を申し込まないでくれ…

俺はアンジュが悲しそうな顔を見るのが、たまらなく辛いんだ。いっその事、婚約を…

いいや、俺はあの日、誓ったんだ。何が何でも、騎士団長になると!だから俺は、まだアンジュの気持ちを受け入れる事なんて出来ないんだ。

そんな中、俺に絶好のチャンスが回って来た。そう、現騎士団長の引退が決まったのだ。現騎士団長からも

「次の騎士団長には、デイビッドをと思っている。ただ、試験に合格しないといけないから…」

そう言われた。俺はこのチャンス、何が何でもものにしたい!そんな思いから、足しげく騎士団長の家に通って、騎士団長の心得や、騎士団長になる為に必要な事を学んだ。

時には騎士団長の娘でもある、ラミネス嬢伝いに、教えてもらう事があった。あと少し…あと少しでアンジュに想いを伝えられる!

そんな思いで、必死に騎士団長になる為の試験対策を行った。そして騎士団長の試験まで、後5ヶ月と迫ったある日。5度目となるアンジュの家からの、婚約申込を受けたのだ。

あと少し…あと少しで気持ちを伝えられるのに…でも、今はまだダメだ。そんな思いで、今回も断った。さすがに5度目という事で、父上からも

「デイビッド、一体どうしたんだ?昔はあれほど、アンジュ嬢と結婚したいと言っていたではないか?さすがに5度目という事で、侯爵もアンジュ嬢には、お前との結婚を諦めさせると言っていたよ」

俺との結婚を諦めさせる…

その言葉を聞いた瞬間、胸がチクリと痛んだ。俺はアンジュを守るため、必死に騎士団長を目指してきた。でも…

本当にこれでいいのか…そんな不安が俺を襲う。さらにアンジュはその後、学院には一切顔を見せなくなった。それとなくアンジュの友人たちに話しを聞いたが…

「アンジュはあなた様を忘れるため、留学いたしましたわ。あなた様はラミネス様とご婚約なさるそうですわね。おめでとうございます。もう二度と、アンジュには近づかないで下さいね」

笑顔だが瞳からは明らかに怒りが読み取れた。

アンジュが俺を忘れるために留学だなんて…それに、ラミネス嬢との婚約とは一体どういう事だ?

「俺はラミネス嬢と婚約するつもりはない。それでアンジュは、どこに留学を…」

「あなた様には関係のない事ですわ。それから、アンジュを呼び捨てにするのはお止めください!もしかしたら留学先で、素敵な殿方を見つけているかもしれませんわね。アンジュは可愛らしいですから」

そう言い残して、俺の元を去っていったアンジュの友人達。

俺の心の中で、どんどん不安が大きくなっていったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。 幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。 事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。 しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。 己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。 修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。 子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。 ――彼女が現れるまでは。 二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。 それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...