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第5話:盗賊に襲われた振りをして逃げ出すようです
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ゆっくり走り出した馬車から、王宮を眺める。もう二度とここに来る事はないのね。イライジャ様と婚約してから7年、本当に厳しい教育を受けて来た。何度も涙を流したが、それでもイライジャ様の為に頑張って来た。
でも…
やっとこの生活も終わる。嫌味しか言わない王妃様も、意地悪な継母も、性格の悪い義理兄も、私を毛嫌いする様になったお父様ともお別れだ。そして大好きだったイライジャ様とも。今思うと、本当に好きだったのかもわからない程、今の私はイライジャ様に対して何の感情も抱かない。
思い出すイライジャ様と言えば、令嬢と裸で抱き合っているシーンだけだ。やっぱりあれは衝撃的だったわよね…
でも、男女はああやって繋がるのね。まさかあんなシーンを見るなんて…
なんだか気持ち悪くなってきたわ…もう考えるのは止めましょう!とにかく今は、この国を出る事だけを考えましょう。でも、どうやって出るのかしら?そう言えばこの馬車、家とは反対方向に向かっているみたいね。一体どこに向かっているのかしら?
どんどん森に向かって進んでいく馬車。そして、しばらくして馬車が停まった。馬車から降りようかどうしようか迷っていると、ドアがゆっくりと開く。
「お嬢様、お待たせいたしました。さあ、参りましょうか?」
ドアを開けたのは、ジャックだ!
「ジャック、あなたここにずっといたの?」
「いいえ、御者としてお嬢様の乗っていた馬車を走らしていたのですが、気が付かなかったのですか?」
「全く気が付かなかったわ!それならそうと言ってくれたらよかったのに!」
いつも御者なんて見ないから気が付く訳がない!
「申し訳ございません。お嬢様が王太子と楽しそうに話をしていらっしゃったので!まさか、やっぱり国を出るのは止めるとか言い出しませんよね?」
「まさか!そんな訳がないでしょう!今日1日、私がどんな思いで皆の暴言に耐えて来たか!とにかく、早くこの国を出ましょう!でも、どうして森の中で停まったの?」
ここはまだ王都の外れの森だ。隣国には程遠い。なのに、どうしてこんな場所で停まったのかしら?
「お嬢様は仮にも王太子殿下の婚約者です。お嬢様が居なくなれば、国中をあげて捜索を行うでしょう。さらに、王太子殿下の婚約者と言う身分にも関わらず失踪したとなれば、お嬢様の事を良からぬ風に噂する奴が必ず出てきます。そこでお嬢様は、この森で盗賊に襲われ、命を落とすのです。そうすれば捜索も行われないし、お嬢様の事を人々は盗賊に襲われた可哀そうなお方となるのです!」
得意げに話すジャック。なるほど、それで森なのね。でも今更私の評価がどうなろうが、私自身は気にしないのだけれどな。
「でも、どうやって盗賊に襲われて殺された事にするの?」
「それは任せて下さい!とにかくそのドレスでは動きにくいし、目立ってしまいます。どうかこれに着替えて下さい」
ジャックに渡されたのは、赤色のワンピースだ。そう、まるでジャックの瞳の色の様な、鮮やかな赤色をしている。言われるがまま一旦馬車に戻り、着替えようとしたのだが
「ジャック、後ろの紐を緩めてくれないかしら?1人では脱げなくて…」
そう、ドレスは1人では脱げないのだ!私の言葉を聞き、紐を緩めてくれたジャック。
「ありがとう、もう大丈夫よ。外に出て行ってもらえる?」
「もうよろしいのですか?わかりました」
なぜか残念そうに外に出て行くジャック。まさか私の着替えを覗こうと思っていたのかしら?いいえ、あの真面目なジャックに限ってそんな事をする訳ないわね。
さっさとドレスを脱ぎ捨て、ワンピースに着替えた。
「赤いワンピースって初めて着たのだけれど、どうかしら?」
今までは緑や青などのドレスを着る事が多かったので、正直似合うか心配したのだが…
「よくお似合いですよ。お嬢様!ではこのドレスをここに置いて、宝石類は切り取っておきましょう。こうする事で、盗賊に襲われた感じがより出ます。後はこの獣の血でも撒いておけば問題ないでしょう。それから馬車はここに置いておきます。この馬車は侯爵家の紋章が入っておりますので」
「それじゃあ、ここからは歩いて移動するの?」
さすがにもう薄暗くなってきた。森を歩くのは少し怖いわ。
「大丈夫ですよ、馬車を引いていた馬を拝借すれば問題ないです!さあ、少し待っていてくださいね」
手際よく馬を馬車から離した。
「さあ、行きましょう!今日は少し離れた場所にホテルを準備してあります」
私を抱きかかえ、そのまま馬にまたがったジャック。馬に乗るのは初めてだ!怖くてジャックにしがみつく。
「お嬢様、そうやってしがみついていてください。それから今後ですが、私たちは夫婦という設定で行きましょう。ですので、私はお嬢様の事を、“エリザ”と呼ばせて頂きますね。それから、敬語も使いませんから。よろしいですね?」
「ええ、問題ないわ!確かに若い男女が2人で居たら怪しまれるものね。それじゃあ、私はジャックの事を、“ジャック様”と呼んだ方が良いかしら?」
「そこは、ジャックで良いです!もうすぐ森を抜けますよ。もうしばらく進みますから、しっかり捕まっていてください!」
最初は少し怖かったが、ジャックがしっかり抱きしめてくれているので、もう恐怖心もなない。それに、ジャックの腕の中はなんだか落ち着く…
でも…
やっとこの生活も終わる。嫌味しか言わない王妃様も、意地悪な継母も、性格の悪い義理兄も、私を毛嫌いする様になったお父様ともお別れだ。そして大好きだったイライジャ様とも。今思うと、本当に好きだったのかもわからない程、今の私はイライジャ様に対して何の感情も抱かない。
思い出すイライジャ様と言えば、令嬢と裸で抱き合っているシーンだけだ。やっぱりあれは衝撃的だったわよね…
でも、男女はああやって繋がるのね。まさかあんなシーンを見るなんて…
なんだか気持ち悪くなってきたわ…もう考えるのは止めましょう!とにかく今は、この国を出る事だけを考えましょう。でも、どうやって出るのかしら?そう言えばこの馬車、家とは反対方向に向かっているみたいね。一体どこに向かっているのかしら?
どんどん森に向かって進んでいく馬車。そして、しばらくして馬車が停まった。馬車から降りようかどうしようか迷っていると、ドアがゆっくりと開く。
「お嬢様、お待たせいたしました。さあ、参りましょうか?」
ドアを開けたのは、ジャックだ!
「ジャック、あなたここにずっといたの?」
「いいえ、御者としてお嬢様の乗っていた馬車を走らしていたのですが、気が付かなかったのですか?」
「全く気が付かなかったわ!それならそうと言ってくれたらよかったのに!」
いつも御者なんて見ないから気が付く訳がない!
「申し訳ございません。お嬢様が王太子と楽しそうに話をしていらっしゃったので!まさか、やっぱり国を出るのは止めるとか言い出しませんよね?」
「まさか!そんな訳がないでしょう!今日1日、私がどんな思いで皆の暴言に耐えて来たか!とにかく、早くこの国を出ましょう!でも、どうして森の中で停まったの?」
ここはまだ王都の外れの森だ。隣国には程遠い。なのに、どうしてこんな場所で停まったのかしら?
「お嬢様は仮にも王太子殿下の婚約者です。お嬢様が居なくなれば、国中をあげて捜索を行うでしょう。さらに、王太子殿下の婚約者と言う身分にも関わらず失踪したとなれば、お嬢様の事を良からぬ風に噂する奴が必ず出てきます。そこでお嬢様は、この森で盗賊に襲われ、命を落とすのです。そうすれば捜索も行われないし、お嬢様の事を人々は盗賊に襲われた可哀そうなお方となるのです!」
得意げに話すジャック。なるほど、それで森なのね。でも今更私の評価がどうなろうが、私自身は気にしないのだけれどな。
「でも、どうやって盗賊に襲われて殺された事にするの?」
「それは任せて下さい!とにかくそのドレスでは動きにくいし、目立ってしまいます。どうかこれに着替えて下さい」
ジャックに渡されたのは、赤色のワンピースだ。そう、まるでジャックの瞳の色の様な、鮮やかな赤色をしている。言われるがまま一旦馬車に戻り、着替えようとしたのだが
「ジャック、後ろの紐を緩めてくれないかしら?1人では脱げなくて…」
そう、ドレスは1人では脱げないのだ!私の言葉を聞き、紐を緩めてくれたジャック。
「ありがとう、もう大丈夫よ。外に出て行ってもらえる?」
「もうよろしいのですか?わかりました」
なぜか残念そうに外に出て行くジャック。まさか私の着替えを覗こうと思っていたのかしら?いいえ、あの真面目なジャックに限ってそんな事をする訳ないわね。
さっさとドレスを脱ぎ捨て、ワンピースに着替えた。
「赤いワンピースって初めて着たのだけれど、どうかしら?」
今までは緑や青などのドレスを着る事が多かったので、正直似合うか心配したのだが…
「よくお似合いですよ。お嬢様!ではこのドレスをここに置いて、宝石類は切り取っておきましょう。こうする事で、盗賊に襲われた感じがより出ます。後はこの獣の血でも撒いておけば問題ないでしょう。それから馬車はここに置いておきます。この馬車は侯爵家の紋章が入っておりますので」
「それじゃあ、ここからは歩いて移動するの?」
さすがにもう薄暗くなってきた。森を歩くのは少し怖いわ。
「大丈夫ですよ、馬車を引いていた馬を拝借すれば問題ないです!さあ、少し待っていてくださいね」
手際よく馬を馬車から離した。
「さあ、行きましょう!今日は少し離れた場所にホテルを準備してあります」
私を抱きかかえ、そのまま馬にまたがったジャック。馬に乗るのは初めてだ!怖くてジャックにしがみつく。
「お嬢様、そうやってしがみついていてください。それから今後ですが、私たちは夫婦という設定で行きましょう。ですので、私はお嬢様の事を、“エリザ”と呼ばせて頂きますね。それから、敬語も使いませんから。よろしいですね?」
「ええ、問題ないわ!確かに若い男女が2人で居たら怪しまれるものね。それじゃあ、私はジャックの事を、“ジャック様”と呼んだ方が良いかしら?」
「そこは、ジャックで良いです!もうすぐ森を抜けますよ。もうしばらく進みますから、しっかり捕まっていてください!」
最初は少し怖かったが、ジャックがしっかり抱きしめてくれているので、もう恐怖心もなない。それに、ジャックの腕の中はなんだか落ち着く…
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