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第1話:私はこの国を滅ぼすそうです
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「ジャンティーヌ、君をこの国を滅ぼそうとした罪で逮捕する。今すぐ、ジャンティーヌを地下牢に入れろ。この女は魔力が異常に強いから、十分注意しろよ」
婚約者でもあるこの国の王太子、アーロン様に呼び出されたと思ったら、あろう事か犯罪者扱い。全く意味が分からない。
「お言葉ですがアーロン様、私が一体何をしたと言うのですか?私は悪い事などしておりません」
私を捕まえようとやって来た魔術師たちが近づけない様、バリア魔法を掛けながら、彼に話しかけた。
「ここにいる占い師のマリアンが“この国はジャンティーヌによって滅ぼされる”と予言したのだ。だから君はれっきとした犯罪者だろう」
アーロン様の隣には、赤い髪に緑の瞳をしたナイスなボディをした令殿が、アーロン様に寄り添っている。そう言えば最近、アーロン様はこのマリアン様の美貌にノックアウトされたなんて噂もあった。それでも私とアーロン様は強い絆で結ばれていたはずだ。それなのに、一体どうして…
「私はこの国を滅ぼしたりはしませんわ。アーロン様、どうか私を信じて下さい。私達は婚約してからずっと、仲睦まじく過ごしてきたではありませんか?」
私とアーロン様が婚約を結んだのは、今から10年前、私が6歳、アーロン様が8歳の時だ。当時病に伏せられていた亡き王妃殿下たっての希望で、私たちは婚約を結んだ。
それでもこの10年、私たちはお互いを尊重し合い、仲良くやって来たのだ。
「仲睦まじくだって?それは君が勝手に思っているだけだろう。僕はずっと生き苦しかったんだ。魔力が他の人間より少し高いというだけで、大きな顔をして。僕にいちいち指図してくる君が本当に煩わしかった。そんな時、マリアンに出会ったんだ。彼女は僕の気持ちに寄り添ってくれた。だから僕は、君と婚約破棄をして、マリアンと結婚するつもりで動いていたんだ。そんな時、マリアンが“ジャンティーヌがこの国を滅ぼす魔女だ!”と教えてくれたんだ」
「私は魔女ではありません。私はただ、アーロン様の事を思って、言いたくもない事も言ってきたのです。それもこれも、あなた様を思って…」
「君の戯言はもう聞きたくはないよ。マリアンは、占い師としての力は絶大と言われているのだ。そんなマリアンが、君の事を魔女だというのだから、きっと君は魔女に違いない。とにかくこの女をすぐに地下牢へ」
そんな…
私はただ、アーロン様が立派な国王になれる様に、支えて来ただけなのに…
この10年、いつも優しく微笑んで私の傍にいてくれたアーロン様、あれは偽りの姿だったというの?私はずっとアーロン様に嫌われていただなんて…
あまりのショックに、全身の力が抜け、その場に座り込んでしまった。その瞬間、10人がかりで私に襲い掛かって来る魔術師たち。あっという間に、魔力無力化リングを付けられてしまった。
「この魔力無力化リングは、王家に伝わる秘宝なのだよ。このリングはかつて絶対的魔力を持つとされる伝説の聖女が作ったものだ。いくら魔力が強い君にも壊せまい。さあ、すぐに連れて行け」
魔力無力化リング…こんなものまで準備していただなんて…
気が付くと涙が溢れていた。抵抗する気も起らず、そのまま地下牢へと連れて行かれる。そして、そのまま牢の中に入れられた。薄暗くて気味が悪い。
その場に座り込み、この10年の日々を思い出す。王妃殿下の最後の望みを叶えるため、私たちは婚約した。
私たちが婚約した翌日、眠る様に息を引きっとった王妃殿下。
“ジャンティーヌちゃん…アーロンは少し抜けているところがあるの…どうか、あなたが支えてあげてね。アーロンの事、よろしくお願いします…”
王妃殿下はそう呟いて息を引き取ったのだ。
王妃殿下の言葉はもちろんの事、不器用で少し抜けているけれど、それでもいつも私に優しく話し掛けてくれるアーロン様に、私は次第に惹かれていった。そんな中、私達が婚約してから5年後、今度は国王陛下が病に倒れてしまったのだ。
もし陛下にもしもの事があったら…
そう考え、私は必死に王妃教育もこなし、さらにアーロン様を支えられる様、王政についても勉強した。すべてはアーロン様と、より良い未来を築く為に。もちろん、アーロン様との時間も大切にした。すべては彼と共に、この国を支えて行くために。
でも…私は結局、彼に愛されていなかった様だ…まさか、あそこまで嫌われていただなんて…
再び涙が溢れ出す。私は何を間違えたのかしら?私はただ、アーロン様と共に、生きていきたかっただけなのに…
~あとがき~
新連載始めました。
よろしくお願いいたしますm(__)m
婚約者でもあるこの国の王太子、アーロン様に呼び出されたと思ったら、あろう事か犯罪者扱い。全く意味が分からない。
「お言葉ですがアーロン様、私が一体何をしたと言うのですか?私は悪い事などしておりません」
私を捕まえようとやって来た魔術師たちが近づけない様、バリア魔法を掛けながら、彼に話しかけた。
「ここにいる占い師のマリアンが“この国はジャンティーヌによって滅ぼされる”と予言したのだ。だから君はれっきとした犯罪者だろう」
アーロン様の隣には、赤い髪に緑の瞳をしたナイスなボディをした令殿が、アーロン様に寄り添っている。そう言えば最近、アーロン様はこのマリアン様の美貌にノックアウトされたなんて噂もあった。それでも私とアーロン様は強い絆で結ばれていたはずだ。それなのに、一体どうして…
「私はこの国を滅ぼしたりはしませんわ。アーロン様、どうか私を信じて下さい。私達は婚約してからずっと、仲睦まじく過ごしてきたではありませんか?」
私とアーロン様が婚約を結んだのは、今から10年前、私が6歳、アーロン様が8歳の時だ。当時病に伏せられていた亡き王妃殿下たっての希望で、私たちは婚約を結んだ。
それでもこの10年、私たちはお互いを尊重し合い、仲良くやって来たのだ。
「仲睦まじくだって?それは君が勝手に思っているだけだろう。僕はずっと生き苦しかったんだ。魔力が他の人間より少し高いというだけで、大きな顔をして。僕にいちいち指図してくる君が本当に煩わしかった。そんな時、マリアンに出会ったんだ。彼女は僕の気持ちに寄り添ってくれた。だから僕は、君と婚約破棄をして、マリアンと結婚するつもりで動いていたんだ。そんな時、マリアンが“ジャンティーヌがこの国を滅ぼす魔女だ!”と教えてくれたんだ」
「私は魔女ではありません。私はただ、アーロン様の事を思って、言いたくもない事も言ってきたのです。それもこれも、あなた様を思って…」
「君の戯言はもう聞きたくはないよ。マリアンは、占い師としての力は絶大と言われているのだ。そんなマリアンが、君の事を魔女だというのだから、きっと君は魔女に違いない。とにかくこの女をすぐに地下牢へ」
そんな…
私はただ、アーロン様が立派な国王になれる様に、支えて来ただけなのに…
この10年、いつも優しく微笑んで私の傍にいてくれたアーロン様、あれは偽りの姿だったというの?私はずっとアーロン様に嫌われていただなんて…
あまりのショックに、全身の力が抜け、その場に座り込んでしまった。その瞬間、10人がかりで私に襲い掛かって来る魔術師たち。あっという間に、魔力無力化リングを付けられてしまった。
「この魔力無力化リングは、王家に伝わる秘宝なのだよ。このリングはかつて絶対的魔力を持つとされる伝説の聖女が作ったものだ。いくら魔力が強い君にも壊せまい。さあ、すぐに連れて行け」
魔力無力化リング…こんなものまで準備していただなんて…
気が付くと涙が溢れていた。抵抗する気も起らず、そのまま地下牢へと連れて行かれる。そして、そのまま牢の中に入れられた。薄暗くて気味が悪い。
その場に座り込み、この10年の日々を思い出す。王妃殿下の最後の望みを叶えるため、私たちは婚約した。
私たちが婚約した翌日、眠る様に息を引きっとった王妃殿下。
“ジャンティーヌちゃん…アーロンは少し抜けているところがあるの…どうか、あなたが支えてあげてね。アーロンの事、よろしくお願いします…”
王妃殿下はそう呟いて息を引き取ったのだ。
王妃殿下の言葉はもちろんの事、不器用で少し抜けているけれど、それでもいつも私に優しく話し掛けてくれるアーロン様に、私は次第に惹かれていった。そんな中、私達が婚約してから5年後、今度は国王陛下が病に倒れてしまったのだ。
もし陛下にもしもの事があったら…
そう考え、私は必死に王妃教育もこなし、さらにアーロン様を支えられる様、王政についても勉強した。すべてはアーロン様と、より良い未来を築く為に。もちろん、アーロン様との時間も大切にした。すべては彼と共に、この国を支えて行くために。
でも…私は結局、彼に愛されていなかった様だ…まさか、あそこまで嫌われていただなんて…
再び涙が溢れ出す。私は何を間違えたのかしら?私はただ、アーロン様と共に、生きていきたかっただけなのに…
~あとがき~
新連載始めました。
よろしくお願いいたしますm(__)m
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