3 / 34
第3話:いつまでも泣いていても仕方がない
しおりを挟む
どんなに思っても決して報われる事のない私の思い。それどころか、アルト様は身も心もシャーラ様に捧げてしまうのだ。
どうせ捨てられるくらいなら…決して報われないとわかっているのなら、私にできる事はただ1つ。アルト様を解放させてあげる事。
でも…
この5年、いいえ、物心ついた時から私はずっとアルト様が大好きだった。彼がいてくれるから、私は今まで幸せだったと言っても過言ではない。頭では分かっている、彼の幸せを守るために、私が身を引かなければいけないという事を。
でも、それがどうしても受け入れられないのだ。それだけ私は、アルト様を深く愛しているのだから。
ポロポロと溢れる涙を止める事なんて出来ない。辛い現実を知ってしまった今、私はどうすればいいのだろう。どんな道を選ぼうと、私には辛い運命しかないのだ。
その時だった。
「カナリア、よかった。熱が下がったのだね。本当に心配したのだよ。本当によかった」
バンとドアが開いたと思うと、私の部屋に入って来たのは、アルト様だ。
「殿下、勝手にカナリアの部屋に入ってもらっては困ります。カナリアは病み上がりなのですよ」
「どうして僕が、カナリアの部屋に入ってはいけないのですか。彼女は僕の婚約者です。カナリア、どうして泣いているのだい?どこか痛いのかい?もしかして、公爵に虐められたのかい?公爵め、何を思ったのか、僕とカナリアを引き裂こうとしたのだよ!僕は絶対に、君を手放したりしないのに!」
私をギューギュー抱きしめながら、アルト様が訴えている。私を手放したりしないか…来週には運命の相手、シャーラ様が現れるのに…彼女が現れたら、私なんてゴミクズの様に捨てられるのにね。
アルト様の言葉が、無性に空しくて再び涙が込みあげてきた。
「あと少しすれば、私の事なんて眼中になくなるくせに…」
「えっ?カナリア、今なんて言った?」
いけない、私ったらつい言葉に出してしまったわ。
「アルト様、申し訳ございません。どうやら体調がまだ戻っていない様でして。どうか今日は、お引き取り下さい」
アルト様に向かって、ゆっくり頭をさげた。お願い、もう私に構わないで。あなたの顔を見るのも、今は辛いの。どうか1人して欲しい。
「何を言っているのだい?泣いているではないか?涙を流している君を置いて、帰る事なんて出来ないよ」
必死にアルト様が訴えてくる。
「殿下、カナリアの体調は、まだ戻っていないのです。どうかお引き取り下さい。殿下のお帰りだ。丁重にお見送りをしろ」
近くに控えていた護衛たちがアルト様の腕を掴み、そのまま外に連れて行く。
「離せ、僕は王太子だぞ。カナリアが泣いているのに。公爵、どういうつもりですか!こんな事をして、許されると思っているのですか?」
「殿下こそ、いくら今は婚約者の家だからといって、主の私に許可なく入るのはどうかと。正式に陛下に抗議をさせていただきます」
「なんだと!」
「カナリア、うるさい殿下は連れて行くから、ゆっくり休みなさい」
お父様が私に笑顔を向けると、そのまま護衛に連れられたアルト様と一緒に出て行った。
あら?小説のアルト様って、あんな感じだったかしら?なんだかイメージと違う様な気がするが…
それでもアルト様は、来週シャーラ様と出会う。そして2人は、恋に落ちるのだ。どうせ捨てられる運命なら、このままアルト様と距離を取った方が、私の心のダメージも少しは減らせるだろう。
そうよ、いつまでも泣いていても仕方がないわ。このまま全員がバッドエンドで終わるだなんて、絶対にダメよ。その為にも、邪魔者の私は早々に退散しないと。
ただ…
あの小説、1回しか読んだことがないのよね。いつどれくらいの期間で2人が愛し合い、どれくらいの期間で駆け落ちを決行したのか、正直覚えていない。感覚で言うと、半年間くらいの間で行われた感じがしたのだけれど…
まあ、学院に入学して1ヶ月くらい経ったら、早々にアルト様に婚約解消の話をすればいいか。幸いお父様やお兄様たちは、なぜか私の婚約解消に賛成の様だし。きっと私が婚約解消の許可を出せば、上手くいくわ。
アルト様を忘れるという事は、今の私にとって体を引き裂かれる様な苦しい決断だけれど、アルト様が全てに絶望し、命を落とすよりかはマシだ。
私だって、アルト様の後を追うなんてことはしたくない。きっと両親やお姉様、お兄様たちがものすごく悲しむわ。誰も傷つかない方法、それは私が身を引く以外ないのだから。
どうせ捨てられるくらいなら…決して報われないとわかっているのなら、私にできる事はただ1つ。アルト様を解放させてあげる事。
でも…
この5年、いいえ、物心ついた時から私はずっとアルト様が大好きだった。彼がいてくれるから、私は今まで幸せだったと言っても過言ではない。頭では分かっている、彼の幸せを守るために、私が身を引かなければいけないという事を。
でも、それがどうしても受け入れられないのだ。それだけ私は、アルト様を深く愛しているのだから。
ポロポロと溢れる涙を止める事なんて出来ない。辛い現実を知ってしまった今、私はどうすればいいのだろう。どんな道を選ぼうと、私には辛い運命しかないのだ。
その時だった。
「カナリア、よかった。熱が下がったのだね。本当に心配したのだよ。本当によかった」
バンとドアが開いたと思うと、私の部屋に入って来たのは、アルト様だ。
「殿下、勝手にカナリアの部屋に入ってもらっては困ります。カナリアは病み上がりなのですよ」
「どうして僕が、カナリアの部屋に入ってはいけないのですか。彼女は僕の婚約者です。カナリア、どうして泣いているのだい?どこか痛いのかい?もしかして、公爵に虐められたのかい?公爵め、何を思ったのか、僕とカナリアを引き裂こうとしたのだよ!僕は絶対に、君を手放したりしないのに!」
私をギューギュー抱きしめながら、アルト様が訴えている。私を手放したりしないか…来週には運命の相手、シャーラ様が現れるのに…彼女が現れたら、私なんてゴミクズの様に捨てられるのにね。
アルト様の言葉が、無性に空しくて再び涙が込みあげてきた。
「あと少しすれば、私の事なんて眼中になくなるくせに…」
「えっ?カナリア、今なんて言った?」
いけない、私ったらつい言葉に出してしまったわ。
「アルト様、申し訳ございません。どうやら体調がまだ戻っていない様でして。どうか今日は、お引き取り下さい」
アルト様に向かって、ゆっくり頭をさげた。お願い、もう私に構わないで。あなたの顔を見るのも、今は辛いの。どうか1人して欲しい。
「何を言っているのだい?泣いているではないか?涙を流している君を置いて、帰る事なんて出来ないよ」
必死にアルト様が訴えてくる。
「殿下、カナリアの体調は、まだ戻っていないのです。どうかお引き取り下さい。殿下のお帰りだ。丁重にお見送りをしろ」
近くに控えていた護衛たちがアルト様の腕を掴み、そのまま外に連れて行く。
「離せ、僕は王太子だぞ。カナリアが泣いているのに。公爵、どういうつもりですか!こんな事をして、許されると思っているのですか?」
「殿下こそ、いくら今は婚約者の家だからといって、主の私に許可なく入るのはどうかと。正式に陛下に抗議をさせていただきます」
「なんだと!」
「カナリア、うるさい殿下は連れて行くから、ゆっくり休みなさい」
お父様が私に笑顔を向けると、そのまま護衛に連れられたアルト様と一緒に出て行った。
あら?小説のアルト様って、あんな感じだったかしら?なんだかイメージと違う様な気がするが…
それでもアルト様は、来週シャーラ様と出会う。そして2人は、恋に落ちるのだ。どうせ捨てられる運命なら、このままアルト様と距離を取った方が、私の心のダメージも少しは減らせるだろう。
そうよ、いつまでも泣いていても仕方がないわ。このまま全員がバッドエンドで終わるだなんて、絶対にダメよ。その為にも、邪魔者の私は早々に退散しないと。
ただ…
あの小説、1回しか読んだことがないのよね。いつどれくらいの期間で2人が愛し合い、どれくらいの期間で駆け落ちを決行したのか、正直覚えていない。感覚で言うと、半年間くらいの間で行われた感じがしたのだけれど…
まあ、学院に入学して1ヶ月くらい経ったら、早々にアルト様に婚約解消の話をすればいいか。幸いお父様やお兄様たちは、なぜか私の婚約解消に賛成の様だし。きっと私が婚約解消の許可を出せば、上手くいくわ。
アルト様を忘れるという事は、今の私にとって体を引き裂かれる様な苦しい決断だけれど、アルト様が全てに絶望し、命を落とすよりかはマシだ。
私だって、アルト様の後を追うなんてことはしたくない。きっと両親やお姉様、お兄様たちがものすごく悲しむわ。誰も傷つかない方法、それは私が身を引く以外ないのだから。
1,330
あなたにおすすめの小説
折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!
たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。
なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!!
幸せすぎる~~~♡
たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!!
※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。
※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。
短めのお話なので毎日更新
※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。
※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。
《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》
※他サイト様にも公開始めました!
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
好きでした、婚約破棄を受け入れます
たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……?
※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
【完結】消えた姉の婚約者と結婚しました。愛し愛されたかったけどどうやら無理みたいです
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベアトリーチェは消えた姉の代わりに、姉の婚約者だった公爵家の子息ランスロットと結婚した。
夫とは愛し愛されたいと夢みていたベアトリーチェだったが、夫を見ていてやっぱり無理かもと思いはじめている。
ベアトリーチェはランスロットと愛し愛される夫婦になることを諦め、楽しい次期公爵夫人生活を過ごそうと決めた。
一方夫のランスロットは……。
作者の頭の中の異世界が舞台の緩い設定のお話です。
ご都合主義です。
以前公開していた『政略結婚して次期侯爵夫人になりました。愛し愛されたかったのにどうやら無理みたいです』の改訂版です。少し内容を変更して書き直しています。前のを読んだ方にも楽しんでいただけると嬉しいです。
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
【完結】真面目だけが取り柄の地味で従順な女はもうやめますね
祈璃
恋愛
「結婚相手としては、ああいうのがいいんだよ。真面目だけが取り柄の、地味で従順な女が」
婚約者のエイデンが自分の陰口を言っているのを偶然聞いてしまったサンドラ。
ショックを受けたサンドラが中庭で泣いていると、そこに公爵令嬢であるマチルダが偶然やってくる。
その後、マチルダの助けと従兄弟のユーリスの後押しを受けたサンドラは、新しい自分へと生まれ変わることを決意した。
「あなたの結婚相手に相応しくなくなってごめんなさいね。申し訳ないから、あなたの望み通り婚約は解消してあげるわ」
*****
全18話。
過剰なざまぁはありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる