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第3話:いつまでも泣いていても仕方がない
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どんなに思っても決して報われる事のない私の思い。それどころか、アルト様は身も心もシャーラ様に捧げてしまうのだ。
どうせ捨てられるくらいなら…決して報われないとわかっているのなら、私にできる事はただ1つ。アルト様を解放させてあげる事。
でも…
この5年、いいえ、物心ついた時から私はずっとアルト様が大好きだった。彼がいてくれるから、私は今まで幸せだったと言っても過言ではない。頭では分かっている、彼の幸せを守るために、私が身を引かなければいけないという事を。
でも、それがどうしても受け入れられないのだ。それだけ私は、アルト様を深く愛しているのだから。
ポロポロと溢れる涙を止める事なんて出来ない。辛い現実を知ってしまった今、私はどうすればいいのだろう。どんな道を選ぼうと、私には辛い運命しかないのだ。
その時だった。
「カナリア、よかった。熱が下がったのだね。本当に心配したのだよ。本当によかった」
バンとドアが開いたと思うと、私の部屋に入って来たのは、アルト様だ。
「殿下、勝手にカナリアの部屋に入ってもらっては困ります。カナリアは病み上がりなのですよ」
「どうして僕が、カナリアの部屋に入ってはいけないのですか。彼女は僕の婚約者です。カナリア、どうして泣いているのだい?どこか痛いのかい?もしかして、公爵に虐められたのかい?公爵め、何を思ったのか、僕とカナリアを引き裂こうとしたのだよ!僕は絶対に、君を手放したりしないのに!」
私をギューギュー抱きしめながら、アルト様が訴えている。私を手放したりしないか…来週には運命の相手、シャーラ様が現れるのに…彼女が現れたら、私なんてゴミクズの様に捨てられるのにね。
アルト様の言葉が、無性に空しくて再び涙が込みあげてきた。
「あと少しすれば、私の事なんて眼中になくなるくせに…」
「えっ?カナリア、今なんて言った?」
いけない、私ったらつい言葉に出してしまったわ。
「アルト様、申し訳ございません。どうやら体調がまだ戻っていない様でして。どうか今日は、お引き取り下さい」
アルト様に向かって、ゆっくり頭をさげた。お願い、もう私に構わないで。あなたの顔を見るのも、今は辛いの。どうか1人して欲しい。
「何を言っているのだい?泣いているではないか?涙を流している君を置いて、帰る事なんて出来ないよ」
必死にアルト様が訴えてくる。
「殿下、カナリアの体調は、まだ戻っていないのです。どうかお引き取り下さい。殿下のお帰りだ。丁重にお見送りをしろ」
近くに控えていた護衛たちがアルト様の腕を掴み、そのまま外に連れて行く。
「離せ、僕は王太子だぞ。カナリアが泣いているのに。公爵、どういうつもりですか!こんな事をして、許されると思っているのですか?」
「殿下こそ、いくら今は婚約者の家だからといって、主の私に許可なく入るのはどうかと。正式に陛下に抗議をさせていただきます」
「なんだと!」
「カナリア、うるさい殿下は連れて行くから、ゆっくり休みなさい」
お父様が私に笑顔を向けると、そのまま護衛に連れられたアルト様と一緒に出て行った。
あら?小説のアルト様って、あんな感じだったかしら?なんだかイメージと違う様な気がするが…
それでもアルト様は、来週シャーラ様と出会う。そして2人は、恋に落ちるのだ。どうせ捨てられる運命なら、このままアルト様と距離を取った方が、私の心のダメージも少しは減らせるだろう。
そうよ、いつまでも泣いていても仕方がないわ。このまま全員がバッドエンドで終わるだなんて、絶対にダメよ。その為にも、邪魔者の私は早々に退散しないと。
ただ…
あの小説、1回しか読んだことがないのよね。いつどれくらいの期間で2人が愛し合い、どれくらいの期間で駆け落ちを決行したのか、正直覚えていない。感覚で言うと、半年間くらいの間で行われた感じがしたのだけれど…
まあ、学院に入学して1ヶ月くらい経ったら、早々にアルト様に婚約解消の話をすればいいか。幸いお父様やお兄様たちは、なぜか私の婚約解消に賛成の様だし。きっと私が婚約解消の許可を出せば、上手くいくわ。
アルト様を忘れるという事は、今の私にとって体を引き裂かれる様な苦しい決断だけれど、アルト様が全てに絶望し、命を落とすよりかはマシだ。
私だって、アルト様の後を追うなんてことはしたくない。きっと両親やお姉様、お兄様たちがものすごく悲しむわ。誰も傷つかない方法、それは私が身を引く以外ないのだから。
どうせ捨てられるくらいなら…決して報われないとわかっているのなら、私にできる事はただ1つ。アルト様を解放させてあげる事。
でも…
この5年、いいえ、物心ついた時から私はずっとアルト様が大好きだった。彼がいてくれるから、私は今まで幸せだったと言っても過言ではない。頭では分かっている、彼の幸せを守るために、私が身を引かなければいけないという事を。
でも、それがどうしても受け入れられないのだ。それだけ私は、アルト様を深く愛しているのだから。
ポロポロと溢れる涙を止める事なんて出来ない。辛い現実を知ってしまった今、私はどうすればいいのだろう。どんな道を選ぼうと、私には辛い運命しかないのだ。
その時だった。
「カナリア、よかった。熱が下がったのだね。本当に心配したのだよ。本当によかった」
バンとドアが開いたと思うと、私の部屋に入って来たのは、アルト様だ。
「殿下、勝手にカナリアの部屋に入ってもらっては困ります。カナリアは病み上がりなのですよ」
「どうして僕が、カナリアの部屋に入ってはいけないのですか。彼女は僕の婚約者です。カナリア、どうして泣いているのだい?どこか痛いのかい?もしかして、公爵に虐められたのかい?公爵め、何を思ったのか、僕とカナリアを引き裂こうとしたのだよ!僕は絶対に、君を手放したりしないのに!」
私をギューギュー抱きしめながら、アルト様が訴えている。私を手放したりしないか…来週には運命の相手、シャーラ様が現れるのに…彼女が現れたら、私なんてゴミクズの様に捨てられるのにね。
アルト様の言葉が、無性に空しくて再び涙が込みあげてきた。
「あと少しすれば、私の事なんて眼中になくなるくせに…」
「えっ?カナリア、今なんて言った?」
いけない、私ったらつい言葉に出してしまったわ。
「アルト様、申し訳ございません。どうやら体調がまだ戻っていない様でして。どうか今日は、お引き取り下さい」
アルト様に向かって、ゆっくり頭をさげた。お願い、もう私に構わないで。あなたの顔を見るのも、今は辛いの。どうか1人して欲しい。
「何を言っているのだい?泣いているではないか?涙を流している君を置いて、帰る事なんて出来ないよ」
必死にアルト様が訴えてくる。
「殿下、カナリアの体調は、まだ戻っていないのです。どうかお引き取り下さい。殿下のお帰りだ。丁重にお見送りをしろ」
近くに控えていた護衛たちがアルト様の腕を掴み、そのまま外に連れて行く。
「離せ、僕は王太子だぞ。カナリアが泣いているのに。公爵、どういうつもりですか!こんな事をして、許されると思っているのですか?」
「殿下こそ、いくら今は婚約者の家だからといって、主の私に許可なく入るのはどうかと。正式に陛下に抗議をさせていただきます」
「なんだと!」
「カナリア、うるさい殿下は連れて行くから、ゆっくり休みなさい」
お父様が私に笑顔を向けると、そのまま護衛に連れられたアルト様と一緒に出て行った。
あら?小説のアルト様って、あんな感じだったかしら?なんだかイメージと違う様な気がするが…
それでもアルト様は、来週シャーラ様と出会う。そして2人は、恋に落ちるのだ。どうせ捨てられる運命なら、このままアルト様と距離を取った方が、私の心のダメージも少しは減らせるだろう。
そうよ、いつまでも泣いていても仕方がないわ。このまま全員がバッドエンドで終わるだなんて、絶対にダメよ。その為にも、邪魔者の私は早々に退散しないと。
ただ…
あの小説、1回しか読んだことがないのよね。いつどれくらいの期間で2人が愛し合い、どれくらいの期間で駆け落ちを決行したのか、正直覚えていない。感覚で言うと、半年間くらいの間で行われた感じがしたのだけれど…
まあ、学院に入学して1ヶ月くらい経ったら、早々にアルト様に婚約解消の話をすればいいか。幸いお父様やお兄様たちは、なぜか私の婚約解消に賛成の様だし。きっと私が婚約解消の許可を出せば、上手くいくわ。
アルト様を忘れるという事は、今の私にとって体を引き裂かれる様な苦しい決断だけれど、アルト様が全てに絶望し、命を落とすよりかはマシだ。
私だって、アルト様の後を追うなんてことはしたくない。きっと両親やお姉様、お兄様たちがものすごく悲しむわ。誰も傷つかない方法、それは私が身を引く以外ないのだから。
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