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第30話:私はアルト様の言う事に従います
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「ディステニー公爵、アルトも少し落ち着いてくれ。それよりも今は、デスドン公爵令嬢による前代未聞の誘拐事件の方が重要だ。アルト、カナリア嬢とは仲直りしたのだから、もういいではないか」
「何がいいのですか?僕はもう二度と、あんな思いはしたくないのです!」
まだアルト様は不満な様だ。やっぱりあの小型の撮影機がまた、私の耳に付くのかしら?でも、我が家には電波妨害のお陰で、映像は確認できないのよね。さすがに家でくつろいでいる姿を、アルト様に見られるのは恥ずかしすぎる。
「アルト、お前ってやつは…カナリア嬢、これを持っていてやってはくれないかい?」
陛下が手渡してきたのは、相手の顔を見ながら通話できるタイプの通信機だ。
「この通信機があれば、いつでもカナリア嬢の顔を見ながら話が出来るだろう。さすがに撮影機をカナリア嬢に身に着けさせるのは、可哀そうだ。通信機で我慢しなさい」
「通信機ですか…正直こんなものでは僕は不安ですが…わかりました。カナリア、必ずこの通信機を肌身離さず持っているのだよ。もし通信に出なかったら、すぐに君の家に駆けつけるからね。それからディステニー公爵、カルア、アクア、僕が訪ねてきたら、必ずカナリアに会わせてください。もし会わせてくれなかったら、翌日カナリアには王宮に泊まってもらいます。その条件を飲んでくれるのでしたら、僕は通信機で我慢します」
「どうしてそんなふざけた条件を、僕たちが飲まないといけないのですか?父上、何とか言ってください」
アクアお兄様が、お父様に詰め寄っている。カルアお兄様も、後ろで深く頷いていた。
「アクア、落ち着きなさい。本当に殿下の我が儘には困ったものだ…でも、殿下には国王になってもらわないと困るからな…」
何やらブツブツとおお父様が呟き、大きくため息をついたのだ。
「カナリア、殿下がこう言っているが、カナリアはどう思う?カナリアが良いなら、私は殿下の言う事に従うよ」
「「父上!!」」
「アクアもカルアも、カナリアの事が心配なのは分かるが、一番大切なのは、カナリアの気持ちだろう?カナリアがどうしたいかが、重要だ。それでカナリアは、どうしたい?」
「今まで私の勘違いのせいで、アルト様には多大な気苦労を掛けてしまいました。その上、アルト様の言いつけを破り、勝手な行動をしたばかりに、あのような事件にまで巻き込まれて…心底自分の行いを反省いたしました。そして私にとってアルト様が、いかに大切な存在なのか、再認識いたしました。お父様、アクアお兄様、カルアお兄様、私はアルト様のおっしゃる事に従います。通信機でしたら、負担も少ないですし。何より信頼を取り戻したいのです!」
私の愚かな行いのせいで、アルト様を傷つけ苦しませてしまった。あんなにやせ細ってしまって…私はなんて事をしてしまったのだろう。許されるのなら、私はこれからもアルト様の傍にいて、少しでもアルト様が安心して暮らせるように、全人生をかけて彼を支えたいのだ。
「カナリアがそう言うなら、殿下のおっしゃる通りにいたしましょう。ですので、もう二度と王位を継がないだなんて、恐ろしい事を言わないで下さい」
「えっ?アルト様はそんな事を?」
「ああ、カナリアと結婚できないなら王位を継がないし、カナリアが国を出るなら自分も付いていく。たとえ地の果てであっても、カナリアを追いかけ逃がさないとの事だ…さすがに殿下が王位を放棄すればどうなるか…王族は今陛下と王妃殿下、アルト殿下しかいないんだ。陛下には兄弟姉妹もいないし。そうなると、誰が次の王になるかで、揉めるだろう。最悪、内戦なんて事も…」
「父上、いくら殿下がカナリアを愛しているからと言って、さすがにそこまでは…」
「いいや、僕は本気だったよ。カナリアは僕にとっても心臓の様な物だ。もしカナリアを失ったら、僕は生きていけない。たとえ王位を継いだとしても、きっと使い物にならず、遅かれ早かれ、内戦は起きていただろうね」
ギュッと私を抱き寄せたアルト様が、恐ろしい事を笑顔で呟いたのだ。そんなアルト様の姿を見たお兄様たちが、さすがに引いている。
「そういう事だから、カナリアは絶対に僕から逃げられない。いいかい、分かったね。今日は随分怖い思いをしたのだろう。僕がずっと一緒にいるから、安心してね。カナリアは今日、怖い思いをして物凄く疲れているのです。どうか皆様、部屋から出て行ってください」
笑顔でお父様たちを追い出そうとするアルト様だが…
「何がいいのですか?僕はもう二度と、あんな思いはしたくないのです!」
まだアルト様は不満な様だ。やっぱりあの小型の撮影機がまた、私の耳に付くのかしら?でも、我が家には電波妨害のお陰で、映像は確認できないのよね。さすがに家でくつろいでいる姿を、アルト様に見られるのは恥ずかしすぎる。
「アルト、お前ってやつは…カナリア嬢、これを持っていてやってはくれないかい?」
陛下が手渡してきたのは、相手の顔を見ながら通話できるタイプの通信機だ。
「この通信機があれば、いつでもカナリア嬢の顔を見ながら話が出来るだろう。さすがに撮影機をカナリア嬢に身に着けさせるのは、可哀そうだ。通信機で我慢しなさい」
「通信機ですか…正直こんなものでは僕は不安ですが…わかりました。カナリア、必ずこの通信機を肌身離さず持っているのだよ。もし通信に出なかったら、すぐに君の家に駆けつけるからね。それからディステニー公爵、カルア、アクア、僕が訪ねてきたら、必ずカナリアに会わせてください。もし会わせてくれなかったら、翌日カナリアには王宮に泊まってもらいます。その条件を飲んでくれるのでしたら、僕は通信機で我慢します」
「どうしてそんなふざけた条件を、僕たちが飲まないといけないのですか?父上、何とか言ってください」
アクアお兄様が、お父様に詰め寄っている。カルアお兄様も、後ろで深く頷いていた。
「アクア、落ち着きなさい。本当に殿下の我が儘には困ったものだ…でも、殿下には国王になってもらわないと困るからな…」
何やらブツブツとおお父様が呟き、大きくため息をついたのだ。
「カナリア、殿下がこう言っているが、カナリアはどう思う?カナリアが良いなら、私は殿下の言う事に従うよ」
「「父上!!」」
「アクアもカルアも、カナリアの事が心配なのは分かるが、一番大切なのは、カナリアの気持ちだろう?カナリアがどうしたいかが、重要だ。それでカナリアは、どうしたい?」
「今まで私の勘違いのせいで、アルト様には多大な気苦労を掛けてしまいました。その上、アルト様の言いつけを破り、勝手な行動をしたばかりに、あのような事件にまで巻き込まれて…心底自分の行いを反省いたしました。そして私にとってアルト様が、いかに大切な存在なのか、再認識いたしました。お父様、アクアお兄様、カルアお兄様、私はアルト様のおっしゃる事に従います。通信機でしたら、負担も少ないですし。何より信頼を取り戻したいのです!」
私の愚かな行いのせいで、アルト様を傷つけ苦しませてしまった。あんなにやせ細ってしまって…私はなんて事をしてしまったのだろう。許されるのなら、私はこれからもアルト様の傍にいて、少しでもアルト様が安心して暮らせるように、全人生をかけて彼を支えたいのだ。
「カナリアがそう言うなら、殿下のおっしゃる通りにいたしましょう。ですので、もう二度と王位を継がないだなんて、恐ろしい事を言わないで下さい」
「えっ?アルト様はそんな事を?」
「ああ、カナリアと結婚できないなら王位を継がないし、カナリアが国を出るなら自分も付いていく。たとえ地の果てであっても、カナリアを追いかけ逃がさないとの事だ…さすがに殿下が王位を放棄すればどうなるか…王族は今陛下と王妃殿下、アルト殿下しかいないんだ。陛下には兄弟姉妹もいないし。そうなると、誰が次の王になるかで、揉めるだろう。最悪、内戦なんて事も…」
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「いいや、僕は本気だったよ。カナリアは僕にとっても心臓の様な物だ。もしカナリアを失ったら、僕は生きていけない。たとえ王位を継いだとしても、きっと使い物にならず、遅かれ早かれ、内戦は起きていただろうね」
ギュッと私を抱き寄せたアルト様が、恐ろしい事を笑顔で呟いたのだ。そんなアルト様の姿を見たお兄様たちが、さすがに引いている。
「そういう事だから、カナリアは絶対に僕から逃げられない。いいかい、分かったね。今日は随分怖い思いをしたのだろう。僕がずっと一緒にいるから、安心してね。カナリアは今日、怖い思いをして物凄く疲れているのです。どうか皆様、部屋から出て行ってください」
笑顔でお父様たちを追い出そうとするアルト様だが…
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