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第2章

第17話:二人を見送るのは辛いものです

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翌日、気合で早起きをしたのだが、既に起きていたアーサー様に再び求められた。朝からそういった行為をするのはさすがに恥ずかしい!そう思ったが

「しばらくローラに触れられないから」

そう言われてしまえば、断るという選択肢はない。結局朝食の時間寸前まで愛し合った。

三ヶ月も離れ離れになる私達、正直まだ足りないくらいだが仕方ない。アーサー様と食堂に向かうと、既にメイソン様が待っていた。

初めて魔物討伐に行くメイソン様。心なしか少し緊張しているようにも見える。

「メイソン様、おはようございます。少し緊張しているように見えますが、大丈夫ですか?」

「おはよう、ローラ。別に俺は緊張していない。俺は強いからな!」

そう言って笑っているが、顔が引きつっている。彼なりに、必死で強がっているのがよく分かる。

「さあ、食べよう」

アーサー様の言葉で、皆一斉に食べ始めた。食事が終わると、二人共騎士団の衣装へと着替える。その間に、旦那様がキーキを出してくれた。

「キーキ!」

すぐにキーキを抱きしめた。

「ローラ、どうしたのよ。急に抱き着いてきて。あなた、アーサーの事を心配しているのね。大丈夫よ。あの人、本当に強いから。ローラに三ヶ月会えないのは私も寂しいけれど、時間なんてすぐに経ってしまうわ。ねえ、ローラ、アーサーたちが帰ってきたら、またおかえりなさい会をしてよね。もちろん、お菓子をたっぷり準備してよ」

そう言ってキーキが笑った。

「もう、キーキったら。わかったわ、あなたの好きなお菓子を、たっぷり準備して待っているわ。だから…アーサー様の事、お願いね」

「任せて…て言っても、アーサー自ら私に助けを求めない限り、何も出来ないんだけれどね」

そう言って苦笑いをしていた。

キーキと話をしている間に、アーサー様とメイソン様がやって来た。皆で玄関へと向かう。

「メイソン様、これを!私が作ったお守りです。どうかお持ちください」

昨日作ったお守りを、メイソン様に渡した。

「ありがとう、ローラ。これをローラだと思って大切にするよ」

そう言ってギューッと私を抱きしめて、馬車に乗り込んでいった。ものすごい勢いでアーサー様がメイソン様を睨んでいたが、今日は怒鳴る事は無かった。アーサー様なりに気遣ってくれているのだろう。

「それじゃあローラ、行って来る。留守を頼んだぞ」

「はい、アーサー様。どうかご無事で」

三ヶ月後には帰って来る、分かっていても不安なのだ。つい瞳から涙が溢れだす。

「ローラ、泣かないでくれ。出来るだけ早く魔物どもとやっつけて帰って来るから、どうか俺の帰りを待っていて欲しい。ローラ、愛している」

「私も、アーサー様を愛しています。どうか元気で帰って来て下さいね。絶対ですよ」

「ああ、分かっている。コレもあるし、大丈夫だろう」

前回魔物討伐の時に渡したお守りだ。既にボロボロになっている。やっぱり新しい物を作り直せばよかった。でも、今更もう遅い…

「モカラ、ローラを頼んだぞ。それじゃあ」

そう言うと、私に口付けをして馬車に乗り込んでいったアーサー様。なぜか前回より、別れるのが辛い。

「それじゃあローラ。三ヶ月後のお疲れさまでした会、楽しみにしているわね」

そう言うと、キーキも消えてしまった。

「アーサー様、メイソン様。どうかご無事で!私はずっとこのお屋敷で、二人が元気に帰って来るのを待っていますから」

そう馬車に向かって叫んだ。ゆっくり走り出す馬車から、二人が手を振ってくれる。もちろん、私も手を振り返す。馬車が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けた。

馬車が見えなくなっても、なぜかその場から動く事が出来ずにたたずんでいると

「さあ、ローラ様、そろそろお屋敷に戻りましょう」

モカラに連れられ、屋敷に戻って来た。そして、自室へと向かう。とにかく、メイソン様は魔物の討伐には参加しないそうだし、アーサー様は何度も魔物討伐を体験している。そして、前回も元気に帰って来てくれた。きっと今回も大丈夫よ!そう自分に言い聞かせた。

三ヶ月間ずっと心配していても仕方がない。私は騎士団長の妻だ!私がしっかりしないで、どうするの?そう自分に激を飛ばす。そして、いつもの様にぬいぐるみ作りをした。

とにかく無心で作る。出来るだけアーサー様やメイソン様の事を考えないように!有難い事に、魔物討伐二回目という事もあり、前回よりは少しは余裕が出て来たのかもしれない。

結局夕方近くまで、必死にぬいぐるみを作り続けた。そして夕食の時間になった。いつもいる二人が居ない…

やっぱり寂しいわ…

駄目よ!今回はしっかり食べないと。またアーサー様に心配をかけてしまうわ。

そう自分に言い聞かせ、必死に食事をした。食後は湯あみを済ませ、再び自室でぬいぐるみ作りだ。ふと時計を見ると、いつもアーサー様が私を呼びに来る時間をとっくに過ぎていた。

駄目ね…結局私はアーサー様がいないと、時間の管理も出来ないのね…一人トボトボと寝室へと向かう。ベッドに入ると、かすかにアーサー様の匂いが…やっぱり寂しいわ…

自然と涙が込み上げて来た。駄目よ!泣いたら駄目!そう自分に言い聞かせるが、止める事が出来ない。

ひとしきり泣いた後、いつもアーサー様が使っている寝巻に目が留まる。どうやらまだ洗濯をしていない様だ。無意識に寝巻を手に取り、抱きしめた。あぁ、アーサー様の匂いがする…

周りから見たら、完全な変態だろう。でも、今の私にはそんな事を言っている余裕はない。結局その日は、アーサー様の寝巻を抱きしめて眠りに付いたのであった。
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