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第2話:大国グレッサ王国に送られる様です

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護衛騎士に連れられ、入れられた地下牢。薄暗くて冷たくて気味が悪い。そんな地下牢の端に腰を下ろした。

よく考えてみたら、王宮内でもメイドや護衛騎士を必ず引き連れているセリーヌお姉様が1人で来るなんて、おかしいわよね。きっと私を陥れるために、少し離れた場所で待機させていたのだわ。

私ったら、そんな事にも気が付かなかったなんてね。ふっとため息をついた。

ふと天井を見上げ、今までの事を思い出す。元男爵令嬢だったお母様は、私が8歳の時に命を落とした。あの日からずっと私は1人だった。

セリーヌお姉様を始め、他のお兄様やお姉様たちにも疎まれていた。魔力量が多かったため、暴力を振るわれることはなかったが、睨まれたり暴言を吐かれることはしょっちゅうだった。さらにメイドたちも私を嫌い、必要最低限のお世話のみをして、すぐに部屋から出ていくのだ。

そんな中、唯一私に優しくしてくれたダーク様。私の笑顔が可愛いと言ってくれたり、時にはドレスや宝石をプレゼントしてくれた事もあった。部屋と訓練場以外の外出を禁止されていた私の為に、王宮の外に連れ出してくれた事もあった。

私にとって、ダーク様が唯一の存在だったのに…でも、そのダーク様も、私を嫌っていたのね…

そう思ったら、涙がこみ上げてきた。私は誰からも必要とされていない。

きっと今回の件で、私は極刑に処されるだろう。王妃様の娘でもある、セリーヌお姉様に危害を加えたのだ。あの王妃様が、私を生かしておくとも思えない。

でも…

それならそれでいいわ。だって私がこの世を去れば、大好きなお母様に会えるのですもの。

そう思ったら、もうどうでもよくなった。

ただただ何もせず、時間だけが流れていく。何度か看守が食事を運んできたが、とても食べられる気分ではない。

その時だった。カツカツという足音が聞こえてきた。そこには国王でもあるお父様の姿が。

「カトリーナ、お前の処分が決まった。お前にはグレッサ王国に行ってもらう」

「グレッサ王国ですか?」

「そうだ。実はグレッサ王国の第二王子が、魔力欠乏症という難病にかかっていてな。定期的に魔力の供給が必要なんだ。ただ、元々魔力量が多かった第二王子に、満足に魔力を与えられる人間があまりいなくて。それに、人に魔力を与え続けるという事は、かなり体に負担がかかる。既に何人もの人間が、命を落としているそうだ。そこで、お前をグレッサ王国の第二王子に差し出すことにした。もちろん、魔力提供者としてだ」

魔力提供者?

「お前のような人間でも、人の役に立てるのだから喜べ。それに、大国でもあるグレッサ王国に恩を売れる。いいか、とにかく第二王子にお前の持つありったけの魔力を提供しろ。せめて最後ぐらい、私の役に立て。いいな!それから、私はもうお前の事を、娘だなんて思わない。お前も、私の事を父親だと思うなよ」

そういい捨て、地下牢を出て行ったお父様、いいえ…陛下と呼んだ方がいいわね。

グレッサ王国と言えば、かなりの大国。資源が豊富なうえ優秀な人間が多く、かなり国も潤っていると聞く。この国一帯を治めていると言っても過言ではない程大きな国だ。

そんな国の第二王子様が、魔力欠乏症だなんて…

魔力欠乏症とは、ある日突然魔力を失う病気で、定期的に魔力の提供を受けないと生きる事が出来ないと聞いたことがある。原因はわかっていないが、定期的に魔力の提供を受け続ける事が出来れば、生き続ける事が出来るらしい。

ただ、魔力の提供はかなり体に負担がかかる、まさに命がけの治療方法だ。そのため引き受ける人が少なく、結局命を落としてしまう人が多いらしい。

唯一生きる希望だった婚約者に裏切られ、家族から疎まれている私。せめて、誰かの役に立って人生の幕を下ろせるなら、それはそれで悪くはない。

その時だった。
再び足音が聞こえてくる。今度は複数人いる様だ。

「カトリーナ、どう?地下牢の生活は?」

やって来たのは、セリーヌお姉様だ。隣にはダーク様もいる。

「あなたが悪いのよ。男爵令嬢の娘の分際で、魔力量が高いと言うだけで優遇されていたのだから。そうそう、私ね、ダークと婚約する事になったの。ねえ、ダーク」

「ああ、僕は子供の頃からずっとセリーヌが好きだったんだ。やっとこれで、幸せになれる」

セリーヌお姉様の腰に手を回しながら、虫けらを見る様な視線を私に送るダーク様。

「そうそう、いい事を教えてあげる。隣国の第二王子は、魔力欠乏症のせいで、かなり性格がひん曲がっているみたいよ。きっと容赦なく魔力を奪われ続け、あなたは苦痛を味わうでしょうね。まあ、せいぜい頑張って」

そう言ってクスクス笑っている。でも次の瞬間、何かを思い出したかのように、ニヤリと笑って私の方を見た。

「そうそう、最後にいい事を教えてあげる。あなたの母親はね、人知れず毒殺されたのよ。もちろん、私のお母様の指示でね。いくら側妃とはいえ、王宮に男爵令嬢がいるなんて嫌でしょう?本当はあなたも暗殺しようとしたのだけれど、毒は効かないし暗殺者は秒殺で倒しちゃうし、本当にあなた、化け物ね。でもやっとその化け物がいなくなるのね。嬉しいわ。さようなら、カトリーナ」

そう言い残すと、ダーク様と一緒に地下牢を出て行った。

そんな…
お母様が毒殺されていたですって。でも、あの王妃様ならやりかねない。

“カトリーナ、私の可愛い娘。大好きよ”

ふとお母様が、よく言っていた言葉を思い出す。優しくて強くて美しかったお母様。娘の私を、とてもかわいがってくれていた。身分が低く、王妃様や他の側妃からイジメられても、どんな時でも笑顔だったお母様。

そんなお母様を、あの王妃は…
言いようのない怒りがこみ上げて来た。でも、私にはどうする事も出来ない。
初めて知った事実に、ただただ涙を流す事しか出来ないのであった。
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