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第32話:ルルさんは苦労人です
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「お口に合うか分かりませんが、私が焼いたクッキーです」
「まあ、美味しそうなクッキー。急に押しかけたのに、こんな風におもてなししてくれてありがとう。このクッキー、とても美味しいわ」
「お口にあってよかったですわ」
美味しそうにクッキーを食べるルルさん。よかった、気に入ってもらえた様ね。
「急に押しかけちゃって、ごめんなさい。昨日ゆっくりお話しできなかったでしょう?ルークからあなたの事を聞いて、ずっと仲良くなれたらなって思っていたの」
「こちらこそ、昨日はすぐに立ち去ってしまってごめんなさい。私も同年代のお友達がいないので、仲良くしてくれると嬉しいです」
「それじゃあ自己紹介から始めましょうか。私はルル、20歳よ。この国の南にあるラターシャ村出身なの。両親と兄妹がいたのだけれど、流行り病で私以外の家族は皆亡くなってしまって。それでもなんとか村で生きていこうとしたのだけれど、当時13歳だった私には厳しくてね。まあ、色々とあってこの街に出て来たって訳」
笑顔でルルさんが挨拶をしてくれた。流行り病で家族全員を亡くし、生きるために13歳でこの街にきただなんて…
「大切な家族を亡くし、13歳でこの街に来ただなんて…相当苦労されたのですね」
「そうね。あの頃はどうして自分だけ生き残ってしまったのだろう、いっその事…そう考えたこともあったわ。13歳の小娘が身寄りのないこの大きな街で生きていくという事は、並大抵な事ではなかったから。
とはいえ、酒場のおかみさんに拾ってもらえたのが、ラッキーだったわね。おかみさんのお陰で私は、今があると言っても過言ではないの。まあ、そのせいで見た目も派手になってしまったけれどね」
「ルルさんもいい人に出会えたのですね。酒場ですか。私が働いていた食堂も、夜はお酒を出していましたわ。とはいえ、田舎なのでお店が閉まるのも早かったので、皆ほろ酔いで帰っていく感じでしたが」
「リリアちゃんは、故郷では食堂で働いていたのね。意地悪な叔母さんにこき使われていたと聞いたけれど…」
「はい、朝から晩までお店で働いていたうえ、家事も全部させられていました。1日1食だったので、いつもお腹を空かせていた記憶があります。それでもお店のものに手を付けると、酷い折檻を受けるので。辛い思いをしておりました」
「そうだったのね。可哀そうに。酷い叔母さんだ事!ルークから聞いたけれど、この街には幼馴染を頼って来たのよね」
「はい、ですが彼は既に別の女性と同棲しておりましたので。途方に暮れていたところに、ゼルス様に助けていただいて。本当にゼルス様には感謝していて。私は何もできないのに、こんなに良くしてもらって。なんだか申し訳なくって」
「あら、あなたが申し訳がる必要はないわ。だってリリアちゃんは、ゼルス隊長の為に、家じゅうを掃除して、美味しいご飯を作って、洗濯もして。随分尽くしているのでしょう?雇われ家政婦なんて、最低限の事しかしない人も多いのよ。料理もお店のものを買ってきて出したり、掃除も適当だったり。洗濯なんて、ためてからする人もいるのだから」
「まあ、そうなのですか?それは酷いですね!」
「だからそんなに、申し訳がる事はないと思うわ。そうそう、リリアちゃんの自己紹介がまだだったわね。聞いてもいいかしら?」
そうだわ、私も自己紹介をしないと。
「はい、それでは簡単に自己紹介をさせていただきます。私の名前はリリアです。18歳で、この国の北にあるマルモル村から来ました。両親を12歳で亡くしてからは、叔父夫婦に引き取られました。色々あって、2ヶ月前にこの街にやって来たのです」
「マルモル村か。聞いたことがない村ね」
「はい、とても小さな村なうえ、山間部にあるので。海もなく、昨日初めて美味しい魚料理を頂きました。とっても美味しくて、お魚が大好きになったのですよ。食卓にも魚料理をと考えているのですが、何分扱い方が分からなくて。魚屋さんにレシピを聞いてみようかと思っているのです」
「そうだったのね。それじゃあ、私でよければ魚料理を教えるわ。私の故郷は漁師街だったの。だから、魚料理なら得意なの」
「そうなのですか?それじゃあ、ぜひ教えて欲しいです」
「もちろんよ。代わりに牛タンのシチューの作り方を教えてくれる?ルークが以前リリアちゃんにご馳走になった時、とても美味しかったと言っていて。私も作ってあげたいなって思っていたの」
少し恥ずかしそうにルルさんが呟いた。
「まあ、美味しそうなクッキー。急に押しかけたのに、こんな風におもてなししてくれてありがとう。このクッキー、とても美味しいわ」
「お口にあってよかったですわ」
美味しそうにクッキーを食べるルルさん。よかった、気に入ってもらえた様ね。
「急に押しかけちゃって、ごめんなさい。昨日ゆっくりお話しできなかったでしょう?ルークからあなたの事を聞いて、ずっと仲良くなれたらなって思っていたの」
「こちらこそ、昨日はすぐに立ち去ってしまってごめんなさい。私も同年代のお友達がいないので、仲良くしてくれると嬉しいです」
「それじゃあ自己紹介から始めましょうか。私はルル、20歳よ。この国の南にあるラターシャ村出身なの。両親と兄妹がいたのだけれど、流行り病で私以外の家族は皆亡くなってしまって。それでもなんとか村で生きていこうとしたのだけれど、当時13歳だった私には厳しくてね。まあ、色々とあってこの街に出て来たって訳」
笑顔でルルさんが挨拶をしてくれた。流行り病で家族全員を亡くし、生きるために13歳でこの街にきただなんて…
「大切な家族を亡くし、13歳でこの街に来ただなんて…相当苦労されたのですね」
「そうね。あの頃はどうして自分だけ生き残ってしまったのだろう、いっその事…そう考えたこともあったわ。13歳の小娘が身寄りのないこの大きな街で生きていくという事は、並大抵な事ではなかったから。
とはいえ、酒場のおかみさんに拾ってもらえたのが、ラッキーだったわね。おかみさんのお陰で私は、今があると言っても過言ではないの。まあ、そのせいで見た目も派手になってしまったけれどね」
「ルルさんもいい人に出会えたのですね。酒場ですか。私が働いていた食堂も、夜はお酒を出していましたわ。とはいえ、田舎なのでお店が閉まるのも早かったので、皆ほろ酔いで帰っていく感じでしたが」
「リリアちゃんは、故郷では食堂で働いていたのね。意地悪な叔母さんにこき使われていたと聞いたけれど…」
「はい、朝から晩までお店で働いていたうえ、家事も全部させられていました。1日1食だったので、いつもお腹を空かせていた記憶があります。それでもお店のものに手を付けると、酷い折檻を受けるので。辛い思いをしておりました」
「そうだったのね。可哀そうに。酷い叔母さんだ事!ルークから聞いたけれど、この街には幼馴染を頼って来たのよね」
「はい、ですが彼は既に別の女性と同棲しておりましたので。途方に暮れていたところに、ゼルス様に助けていただいて。本当にゼルス様には感謝していて。私は何もできないのに、こんなに良くしてもらって。なんだか申し訳なくって」
「あら、あなたが申し訳がる必要はないわ。だってリリアちゃんは、ゼルス隊長の為に、家じゅうを掃除して、美味しいご飯を作って、洗濯もして。随分尽くしているのでしょう?雇われ家政婦なんて、最低限の事しかしない人も多いのよ。料理もお店のものを買ってきて出したり、掃除も適当だったり。洗濯なんて、ためてからする人もいるのだから」
「まあ、そうなのですか?それは酷いですね!」
「だからそんなに、申し訳がる事はないと思うわ。そうそう、リリアちゃんの自己紹介がまだだったわね。聞いてもいいかしら?」
そうだわ、私も自己紹介をしないと。
「はい、それでは簡単に自己紹介をさせていただきます。私の名前はリリアです。18歳で、この国の北にあるマルモル村から来ました。両親を12歳で亡くしてからは、叔父夫婦に引き取られました。色々あって、2ヶ月前にこの街にやって来たのです」
「マルモル村か。聞いたことがない村ね」
「はい、とても小さな村なうえ、山間部にあるので。海もなく、昨日初めて美味しい魚料理を頂きました。とっても美味しくて、お魚が大好きになったのですよ。食卓にも魚料理をと考えているのですが、何分扱い方が分からなくて。魚屋さんにレシピを聞いてみようかと思っているのです」
「そうだったのね。それじゃあ、私でよければ魚料理を教えるわ。私の故郷は漁師街だったの。だから、魚料理なら得意なの」
「そうなのですか?それじゃあ、ぜひ教えて欲しいです」
「もちろんよ。代わりに牛タンのシチューの作り方を教えてくれる?ルークが以前リリアちゃんにご馳走になった時、とても美味しかったと言っていて。私も作ってあげたいなって思っていたの」
少し恥ずかしそうにルルさんが呟いた。
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