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第44話:4人でめいっぱい楽しみます

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しばらく馬車に揺られていると、街が見えて来た。

2人で手を繋いで馬車を降りる。すると、王太子がソフィー様をエスコートしながら降りてくるのが目に入った。よしよし、しっかり手を繋いでいるな!

まず最初に向かった場所は、いつも行く洋服のお店だ。そう、初めてクラウド様とデートに行った時に、服を買ったお店。ちなみにソフィー様とも一緒に行って、このワンピースを買ったのだ。何だかんだであそこが一番買いやすいのよね。

私達が店に入ると、すかさず店員がオーナーを呼びに行く。別にわざわざオーナーが相手をしてくれなくてもいいのだが、なぜか必ずいつも出て来てくれるのだ。

「ミレニア様、クラウド殿下、それにソフィー様も…もしかして、そちらの方は王太子殿下ですか!まあ、王太子殿下にまでわざわざ足を運んでくださるなんて!」

さすがのオーナーも王太子登場に驚いている様だ。

「俺の事は気にしないでくれ。今回はプライベートで来ているから」

そう言った王太子。ただ、さすがに王太子がお店で買い物をするのは目立つという事で、結局別室に通された。

「クラウド様、この服クラウド様によく似合いそうですわ!あら、こっちも!」

せっかくクラウド様と一緒に来たのだ!今回も沢山クラウド様の服を買わないとね!

「ミレニア、毎回僕の服を沢山選んでくれるけれど、あまり着て行く機会がなくてね。今日はミレニアの服を選ぼう!」

そう言って、オーナーに私に合いそうな服を見繕ってもらっているクラウド様。ふと王太子とソフィー様の方を見ると、どうやら王太子の服を選んでいる様で、ソフィー様が真剣な顔で悩んでいる。うん、いい感じね!

結局私の服5着とクラウド様の服2着、王太子の服3着とソフィー様の服を5着購入した。今回も満面の笑みで見送ってくれるオーナー。

洋服を買った後は、宝石が売っているお店にやって来た。

「ミレニア、このルビーのイヤリング。君によく似合いそうだ!僕がプレゼントするね」

ルビーのイヤリングを持って会計を済ますクラウド様。ふと王太子の方を見ると、どうやら王太子もソフィー様にプレゼントをする様で、サファイアのネックレスを握っていた。

真っ青なサファイアは、まさに王太子の瞳の色だ。これはもしかすると、今日2人はよりを戻すかもしれないわね。そう思ったら、ニヤニヤが止まらない。

早速お互いプレゼントしてもらったアクセサリーを付けた。

「ミレニア様、そのイヤリングよく似合っていますわ。ただ、クラウド殿下の瞳の色というのがちょっと…」

「それはどういう意味だい?ソフィー嬢!」

クラウド様がソフィー様に文句を言っているが、軽くスルーするソフィー様。ソフィー様も随分強くなったわね。

「ありがとう、ソフィー様。ソフィー様のサファイアのネックレスもよく似合っていますわ。まるで王太子殿下の瞳の色みたい!」

私の言葉で、なぜか頬を赤くする王太子とソフィー様。かなりいい感じね!

ショッピングの後は、私とクラウド様の思い出の場所でもある、あの海辺へと向かった。せっかくなので、砂浜でお弁当を食べようという事になったのだ。ただあそこは人気が少ないので、護衛騎士にしっかり警護を依頼しておいた。万が一誰かに狙われたら大変ですものね。


「うぁ~、私海ってあまり来た事がなかったのですが、物凄く奇麗ですね」

そう言って目を輝かせるソフィー様。

「あら、この国は海に囲まれているのに、あまり来た事が無かったの?」

「ええ、あまり屋敷から出る事が出来なかったので…」

しまった、ソフィー様はずっと男爵家で冷遇されていたのだった。

「ごめんなさい、ソフィー様。あまり来た事が無いのであれば、今日はめいっぱい海を楽しみましょう。足を浸けられるように、タオルを沢山持ってきましたの。貝殻も拾いましょう!」

「まあ、それは素敵ですね。でもまずはお弁当から食べましょう。私お腹がペコペコですわ」

「そうね、そうしましょう」

早速敷物を敷き、お弁当を広げた。

「クラウド様、このサンドウィッチ、ソフィー様に教えてもらいながら、私が作ったのですよ!食べてみてください」

そう言って、クラウド様の口にお肉を挟んだサンドウィッチを入れた。

「うん、お肉がジューシーですごく美味しいよ。次は卵焼きも食べたいな」

卵焼きね。早速ハムが挟んである卵焼きを、クラウド様の口に入れた。

「卵焼きも美味しいね!次は僕がミレニアに食べさせてあげるよ」

そう言って小さくちぎったサンドウィッチを口に入れてくれたクラウド様。

「クラウド様が食べさせてくれたサンドウィッチは、物凄く美味しいですわ」

その後もお互い食べさせ合いっこをして行く。その時、隣で王太子とソフィー様がこちらを見ている事に気が付いた。

「王太子殿下もソフィー様も、食べないのですか?」

「いいえ、食べますわ!マシュー様、このお肉とても美味しいですわよ」

そう言って王太子のお皿にお肉を乗せたソフィー様。お皿に乗ったお肉を早速食べ始める王太子。

「うん、とても美味しいよ。相変わらずソフィーは料理が上手だね」

そう言って微笑んだ王太子。食べさせ合いっこまではいかないまでも、中々いい雰囲気だ。

「ミレニア、2人の事ばかり見てないで、こっちを向いてよ!」

そう言って私の頬を突いたのはクラウド様だ。

「ごめんなさい。はい、クラウド様にもお肉」

お肉をクラウド様の口に放り込もうとしたのだが、なぜか口を開かない。どうしたのだろう?

「これ、ソフィー嬢が作ったのだろう?僕はミレニアが作った料理だけ食べたいんだ」

嬉しい事を言ってくれるクラウド様。でも…

「クラウド様、そうなるとサンドウィッチと卵焼きくらいしか無いですよ」

「それじゃあ、サンドウィッチと卵焼きを食べさせて」

そう言って口を開くクラウド様。仕方ないので卵焼きとサンドウィッチを交互に口に入れていく。

隣でソフィー様がクラウド様を睨んでいるが、全く気にしていない様子のクラウド様。そんなこんなでお弁当を食べた後は、4人で海に足を浸けて遊んだ。

「キャー、冷たい!ミレニア様~」

そう言って私にしがみついて来るソフィー様。

「大丈夫よ、ほら、あそこにカニがいるわ!」

ソフィー様を支えながら、カニの方を指さしたのだが…

「ソフィー嬢、ミレニアに気安く触れないでくれ。兄上、ソフィー嬢は兄上の担当だろう!ミレニアにベタベタ触らない様に、しっかり見張っていてくれ!」

そう言ったクラウド様に引き離されている間に、カニはどこかに行ってしまった。

「ちょっとクラウド殿下、ちょっとミレニア様に触れたくらいで、ギャーギャー言わないでくれますか?そもそも、ミレニア様は皆のミレニア様ですわよ!」

「何が“皆のミレニア様”だ!ミレニアは僕の恋人で僕のものだ!とにかく君には兄上がいるだろう」

そう言って王太子にソフィー様を押し付けるクラウド様。もしかして、嫉妬してくれた?そう思ったら嬉しくて、クラウド様に抱き着いた。

「クラウド様、私が好きなのはクラウド様だけですので、安心してください」

「ミレニア!!」

ギューギュー抱き合っている私たちを、呆れ顔で見る王太子とソフィー様。その後は皆で仲良く海で遊んだり、貝殻を拾ったりした。

そして帰りの馬車は、4人一緒だ。せっかく4人で来たのだからと、王太子とソフィー様がこちらの馬車に乗り込んできたのだ。

「ミレニア、ソフィー、それにクラウド。今日は4人で街に来られて本当に楽しかったよ。ありがとう」

そう言った王太子。なぜだろう。どことなく寂しい顔をしている様な気がするけれど…

「王太子殿下、街なんてまたいつでも来られますわよ」

「ミレニア様の言う通りですわ。また皆で街に来ましょう!そうだわ、次は以前ミレニア様と一緒に行った、“お団子”が売っているお店に4人で行きましょう」

「お団子か、確かにあれは美味しかったな。僕もまた食べたいよ!」

「なんだそのお団子というものは。俺も食べたい!今度絶対にまた4人でお団子を食べに行こう!」

「それなら来週末にでも行きましょう!」

「それいいね。僕も賛成!」

どうやら来週末お団子を食べに行くとこで、話しはまとまった様だ。公爵家に着くまで、お団子の話で盛り上がる4人であった。


~あとがき~
いつもお読み頂きありがとうございます。ほのぼのした話はこれで最後になるかと思います。これからクライマックスに向けて、シリアスなシーンが続く予定です。
どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m
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