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第46話:エマは私のよき理解者です
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私の誕生日パーティー以降、いつも以上に私の傍に寄り添ってくれているエヴァン様。さらにハドソン殿下からも“ナタリーが申し訳なかった”と、頭を下げられた。
ただ、あの人形の件は不問になったらしい。これ以上ナタリー様を刺激しない方がいいと言う結論になったらしい。その件に関して、エヴァン様が最後まで“ナタリー嬢に厳罰を”と訴えていたとお父様から聞いた。
お父様からは
“お前が今平和に暮らせているのは、エヴァン殿が陰で動いていてくれているお陰だ。その事はしっかり理解しておくように”
と言われた。私だって、エヴァン様が動いてくれている事は知っている。それでもまだ、私の中でモヤモヤが残っているのだ。
あれほどまでに恐ろしいナタリー様のいう事を鵜呑みにして私につらく当たった事が、どうしても許せない。どうしてよりによって、ナタリー様のいう事を信じたのだろう。もしも他の方だったら、私の気持ちも違ったかもしれないのに…
ついため息が出てしまう。
「ルーナ、大丈夫?あなた最近顔色が悪いわよ。特にお誕生日パーティーの後から様子が変だし。何かあった?」
心配そうに私を見つめるのは、エマだ。エマにはナタリー様から恐ろしい人形のプレゼントをもらった事は話していない。きっとこの話をすれば、エマは怒り狂い、ナタリー様に文句を言うだろう。
そんな事をしたら、エマも何をされているか分からない。そう、最近のナタリー様はいつも以上に殺気立っているのだ。これ以上エマを巻き込みたくはないのだ。
「大丈夫よ。相変わらずナタリー様が、私を気に入らない様なの」
「そう…ねえ、ルーナ。最近エヴァン様があなたに今まで以上にべったりでしょう?最初はルーナの傍にいたくてベッタリなのだと思っていたのだけれど、エヴァン様はいつも周りを気にしているのよね…何かに警戒している様に。もし…もし何かルーナに危険が迫っているのなら、私にも教えて。私もルーナの力になりたいの」
真剣な表情のエマ。
「ありがとう、本当に大丈夫よ。きっとエヴァン様は心配性だから、未だに令息が私に近づかないか警戒しているのよ」
そう言って笑顔を作った。エヴァン様、最近寝不足の様で、また少しやつれてしまった。お父様が言っていた通り、私の知らないところで色々と動いてくれているのかもしれない。
私を守るために、それこそ寝ずに…
今も少し離れた場所から、心配そうに私を見つめていた。
「ねえ、エマ。私ね、エヴァン様が私の為に今、必死に動いてくれているのは知っているの。それに私、エヴァン様の傍にいると、なんだか落ち着くし。ナタリー様にどんなに酷い事をされても、エヴァン様の声を聞いたり触れたりすると、なんだか恐怖も和らぐのよね。でも…それでもどうしても、私はエヴァン様がまだ許せない。何より私を苦しめている張本人、ナタリー様の言葉を鵜呑みにしたエヴァン様を…」
私はきっと、まだエヴァン様が好きなのだろう。エヴァン様にとって私は、大切な存在。でも、頭では分かっていても、どうしても1年間辛く悲しい思いをした記憶が頭らか離れないのだ。
「ルーナ、そうよね。どんなに好きな相手でも、やっぱり裏切られたという思いが消えない以上、私はエヴァン様の元に戻るのは止めた方がいいと思うわ。私はいつでもルーナの味方よ。だからあまり思い詰めないで。もしエヴァン様と結婚しない事で一生独身になってしまっても大丈夫よ。私もずっと独身だろうし。女2人、楽しく過ごしましょう」
そう言って笑ったエマ。いつも私に寄り添ってくれるエマの笑顔を見ると、少し心が軽くなる。
「エマ、ありがとう。そうね、女2人で過ごすのも悪くないわね」
そう言って私も笑った。でも、エマには好きな人と幸せになって欲しい。エマの好きな人って、一体誰なんだろう…
ふとエヴァン様の方を見ると、ハドソン殿下とこっちを見ながら話をしていた。
「そういえばハドソン殿下って、エヴァン様の従兄弟なのよね。エヴァン様の話では、ハドソン殿下もナタリー様の我が儘に相当うんざりしているとの事よ」
「…」
なぜか返事をしないエマ。ふとエマの方を見ると、辛そうに俯いていた。
「エマ?」
「ごめん、何でもないのよ。さあ、そろそろ帰りましょうか?」
「…ええ…そうね」
エマのあんな顔、初めて見た。そういえばエマの前で、ハドソン殿下の話をしたことがなかったわ。ふとエヴァン様の方を見ると、私たちが帰ると気が付いたのか、急いでこちらに向かってくる。そしてハドソン殿下は…
こっちを見つめていた。そう、真っすぐとエマを見ている。その瞳はとても切なそうで、まるで大切な人を見つめている様だ。
もしかして…
そういえばナタリー様が言っていた。
“ハドソン様はいつもあなたを見ている”と。ナタリー様が言っていた事が本当なら、ハドソン殿下は私を見ていたわけではなく、私と一緒にいたエマを見ていた?
なぜだろう、今まで考えもしなかったが、もしかしてエマの思い人は、ハドソン殿下?そしてハドソン殿下もエマを…
エマが逆立ちしても手に入らない人とは、ハドソン殿下の事なのでは…
急にそんな気がしだした。
でも私は、たとえ2人の気持ちに気が付いても、何もしてあげられない。本当は何かしてあげたいけれど…
背中を向けて歩くエマを見つめるハドソン殿下、そんな2人を見つめ、胸が締め付けられるのだった。
ただ、あの人形の件は不問になったらしい。これ以上ナタリー様を刺激しない方がいいと言う結論になったらしい。その件に関して、エヴァン様が最後まで“ナタリー嬢に厳罰を”と訴えていたとお父様から聞いた。
お父様からは
“お前が今平和に暮らせているのは、エヴァン殿が陰で動いていてくれているお陰だ。その事はしっかり理解しておくように”
と言われた。私だって、エヴァン様が動いてくれている事は知っている。それでもまだ、私の中でモヤモヤが残っているのだ。
あれほどまでに恐ろしいナタリー様のいう事を鵜呑みにして私につらく当たった事が、どうしても許せない。どうしてよりによって、ナタリー様のいう事を信じたのだろう。もしも他の方だったら、私の気持ちも違ったかもしれないのに…
ついため息が出てしまう。
「ルーナ、大丈夫?あなた最近顔色が悪いわよ。特にお誕生日パーティーの後から様子が変だし。何かあった?」
心配そうに私を見つめるのは、エマだ。エマにはナタリー様から恐ろしい人形のプレゼントをもらった事は話していない。きっとこの話をすれば、エマは怒り狂い、ナタリー様に文句を言うだろう。
そんな事をしたら、エマも何をされているか分からない。そう、最近のナタリー様はいつも以上に殺気立っているのだ。これ以上エマを巻き込みたくはないのだ。
「大丈夫よ。相変わらずナタリー様が、私を気に入らない様なの」
「そう…ねえ、ルーナ。最近エヴァン様があなたに今まで以上にべったりでしょう?最初はルーナの傍にいたくてベッタリなのだと思っていたのだけれど、エヴァン様はいつも周りを気にしているのよね…何かに警戒している様に。もし…もし何かルーナに危険が迫っているのなら、私にも教えて。私もルーナの力になりたいの」
真剣な表情のエマ。
「ありがとう、本当に大丈夫よ。きっとエヴァン様は心配性だから、未だに令息が私に近づかないか警戒しているのよ」
そう言って笑顔を作った。エヴァン様、最近寝不足の様で、また少しやつれてしまった。お父様が言っていた通り、私の知らないところで色々と動いてくれているのかもしれない。
私を守るために、それこそ寝ずに…
今も少し離れた場所から、心配そうに私を見つめていた。
「ねえ、エマ。私ね、エヴァン様が私の為に今、必死に動いてくれているのは知っているの。それに私、エヴァン様の傍にいると、なんだか落ち着くし。ナタリー様にどんなに酷い事をされても、エヴァン様の声を聞いたり触れたりすると、なんだか恐怖も和らぐのよね。でも…それでもどうしても、私はエヴァン様がまだ許せない。何より私を苦しめている張本人、ナタリー様の言葉を鵜呑みにしたエヴァン様を…」
私はきっと、まだエヴァン様が好きなのだろう。エヴァン様にとって私は、大切な存在。でも、頭では分かっていても、どうしても1年間辛く悲しい思いをした記憶が頭らか離れないのだ。
「ルーナ、そうよね。どんなに好きな相手でも、やっぱり裏切られたという思いが消えない以上、私はエヴァン様の元に戻るのは止めた方がいいと思うわ。私はいつでもルーナの味方よ。だからあまり思い詰めないで。もしエヴァン様と結婚しない事で一生独身になってしまっても大丈夫よ。私もずっと独身だろうし。女2人、楽しく過ごしましょう」
そう言って笑ったエマ。いつも私に寄り添ってくれるエマの笑顔を見ると、少し心が軽くなる。
「エマ、ありがとう。そうね、女2人で過ごすのも悪くないわね」
そう言って私も笑った。でも、エマには好きな人と幸せになって欲しい。エマの好きな人って、一体誰なんだろう…
ふとエヴァン様の方を見ると、ハドソン殿下とこっちを見ながら話をしていた。
「そういえばハドソン殿下って、エヴァン様の従兄弟なのよね。エヴァン様の話では、ハドソン殿下もナタリー様の我が儘に相当うんざりしているとの事よ」
「…」
なぜか返事をしないエマ。ふとエマの方を見ると、辛そうに俯いていた。
「エマ?」
「ごめん、何でもないのよ。さあ、そろそろ帰りましょうか?」
「…ええ…そうね」
エマのあんな顔、初めて見た。そういえばエマの前で、ハドソン殿下の話をしたことがなかったわ。ふとエヴァン様の方を見ると、私たちが帰ると気が付いたのか、急いでこちらに向かってくる。そしてハドソン殿下は…
こっちを見つめていた。そう、真っすぐとエマを見ている。その瞳はとても切なそうで、まるで大切な人を見つめている様だ。
もしかして…
そういえばナタリー様が言っていた。
“ハドソン様はいつもあなたを見ている”と。ナタリー様が言っていた事が本当なら、ハドソン殿下は私を見ていたわけではなく、私と一緒にいたエマを見ていた?
なぜだろう、今まで考えもしなかったが、もしかしてエマの思い人は、ハドソン殿下?そしてハドソン殿下もエマを…
エマが逆立ちしても手に入らない人とは、ハドソン殿下の事なのでは…
急にそんな気がしだした。
でも私は、たとえ2人の気持ちに気が付いても、何もしてあげられない。本当は何かしてあげたいけれど…
背中を向けて歩くエマを見つめるハドソン殿下、そんな2人を見つめ、胸が締め付けられるのだった。
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