助けた青年は私から全てを奪った隣国の王族でした

Karamimi

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第19話:話を聞きましょう

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アダム様は生い立ちから話してくれた。産まれながらに王太子だったアダム様は、特に厳しく育てられたらしい。その反面弟のハリソン殿下は、母親でもある王妃様の愛情を一身に受けていたとの事。

王妃様に認めてもらいたくて必死に頑張ったが、王妃様がアダム様を認める事は1度も無かったらしい。そして10歳の時、ダリア様と言う令嬢と婚約したらしい。この女性と一生を共にする、そんな思いから彼女を大切にしていたアダム様。

そんなある日、ダリア様が西のはずれにある森に行きたいと言い出したとの事。彼女の頼みならと思い、3日かけ森に向かいピクニックを楽しんだらしい。そのピクニックの帰り道、この森で弟でもあるハリソン殿下と、ハリソン殿下と密かに恋仲だったダリア様に襲われ、命からがら逃げる途中意識を失ったアダム様を、私が見つけたとの事。

「フローラ、俺はあの日、全てを失ったと思っていた。王太子の座も、婚約者も。俺はハリソンには敵わない。あいつは俺の欲しいものをすべて持って行く…自分の生きている意味さえ見失いかけていた。そんな時、君が助けてくれたんだ!俺に生きる希望を与えてくれた。でも俺は、君の仇でもある国王の実の息子だ…俺を許せないと言う思いもあるだろう。それでも俺は、この場所で君と生きて生きたんだ!」

涙ながらに訴えるアダム様。

「アダム様…確かにアダム様は陛下の子供かもしれません…でも…アダム様と過ごすうちに、私の中でアダム様の存在がなくてはならないかけがえのないものになったのは事実です。ですから、私もこの場所でずっとアダム様と生きていきたいです!」

「フローラ、ありがとう!愛しているよ!フローラ」

アダム様が陛下の子供だとしても、アダム様はアダム様だ。正直陛下は未だに許せない!それでもアダム様と一緒に生きていきたい、そう思えたのだ。

「コホン。アダム殿下、お取込み中の所失礼いたします。先ほど殿下がお話された事は、本当でしょうか?ハリソン殿下がダリア譲と共謀して、あなた様を殺そうとしたと言うのは」

話に割って来たのは、さっきの男性だ。

「ああ…でももうどうでもいい。俺は死んだと伝えてくれ」

「そうは行きません!どうか私の話を聞いて下さい!あの後、確かにハリソン殿下とダリア嬢は王宮に戻り、あなた様は盗賊に襲われ命を落としたと涙ながらに訴えました。陛下もその話を信じ、次期王太子にはハリソン殿下を、そしてハリソン殿下の新たな婚約者をダリア嬢にとの事で落ち着きかけました。でも、その話に待ったをかけた人物がいたのです!」

物凄い勢いで話し始めた男性。とにかく椅子に座ってもらい、話しを聞く事にした。

「アダム殿下、あなたは王妃様に愛されていなかったとおっしゃっていましたが、そんな事はありません!王妃様は“アダムが盗賊なんかに殺されるはずはない!きっと生きている!だからハリソンを王太子にする事は絶対に認めない”そうおっしゃったのです。さらに“ダリア嬢、あなたはアダムの婚約者だった人でしょう?どうしてすぐにハリソンと婚約を結べるの?信じられないわ!とにかく2人の婚約には私は絶対に反対です!今すぐアダムを探しなさい”そうおっしゃられたのです」

「母上が、俺の為に…」

「そうです。こんな事を申し上げては国家反逆罪で逮捕されてしまうかもしれませんが、頼りない陛下の様にはなって欲しくない。あなた様には立派な国王になって欲しいという思いから、あえて厳しく育てていたのです。あなた様の訃報を聞き、いつも毅然とした態度をとっていた王妃様が、初めて泣き崩れていらっしゃいました」

「母上…」

アダム様の瞳から、ポロポロと涙が溢れだしていた。そっとアダム様の手を握る。

「でもそんな中、事件は起きたのです。何者かが王妃様の飲み物に毒を入れた様で、王妃様はその毒を飲んで倒れられました。幸い一命を取り留めましたが、長い間意識が戻らず、先日やっと戻ったのです。そして王妃様が胸に忍ばせておいた録音機が証拠となり、犯人が捕まりました。その犯人は、ダリア嬢だったのです。今ダリア嬢は、地下牢におります。そして王妃様が目覚めたと同時にあなた様の捜索が始まり、私たちが聞き込み調査の為、たまたまこの家を訪ねたという訳です」

「まさか王宮内でそんな事になっていたなんて…それで、ダリアはどうなるのだ?」

「王妃様を毒殺しようとしたのですから、極刑は免れないでしょう。彼女の実家でもあるフェザー公爵家もお咎めなしという訳にはいかないでしょうね」

ん?今フェザー公爵と言ったわよね。まさかダリア様は…

「フローラ、ダリアは君の父親を陥れたフェザー公爵家の娘だ。あの時期は俺の婚約者を、ダィーサウ公爵家から迎えようと言う話になっていてね。これは俺の推測だが、次期王妃を自分の家から誕生させたいフェザー公爵が、ダィーサウ公爵家を陥れたのではないかと考えている」

そんな…そんなくだらない事で、私の大切な家族は殺されたの?体中から怒りが沸きあがり、悔しさから涙が込み上げて来た。

「10年前、ダィーサウ公爵家はフェザー公爵に陥れられ、無実の罪を着せられた。その件について、再度調査してくれ。たとえ今更無実が証明されたところで、彼女の家族は帰ってこない!でも、フェザー公爵を裁く材料にはなるはずだ。それに、ダィーサウ公爵家の名誉も回復させたい」

「かしこまりました。あの事件は不審な点が多く、私や王妃様も再三再調査を依頼していたのです。それなのに陛下がさっさと処分を下してしまい…って、ここで愚痴を言っても仕方がありませんね。すぐに調査いたします。それからアダム殿下、あなた様ならハリソン殿下とダリア嬢に襲われたと言う証拠を持っていらっしゃるのではありませんか?」

「ああ、持っている」

そう言うと戸棚の奥にしまってあった、アダム様の血だらけの服を取り出した。あの日に着ていた服だ。捨てるのも気が引けたので、アダム様に確認して戸棚の奥に閉まっておいたのだ。そして奥から何かを取り出した。

「これにあの時のやり取りが録音されているはずだ」

アダム様が取り出したのは、録音機だ。どうしてそんなものを持っているのかしら?

「やっぱりお持ちでしたか。王族は何かトラブルに巻き込まれた時の為に、持っていると聞いたので。これさえあれば、ハリソン殿下を断罪できます。早速アペルピスィ王国に戻りましょう!」

男性が物凄い勢いでアダム様に向かってそう叫んだ。

「いいや、俺は国には帰らない!」

あろう事かアダム様は、男性の目を見てはっきりとそう告げたのだ。
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