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第23話:全てが終わりました!でも…
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「ハリソン殿下の処分については、また後日話し合う事にしましょう。それでは次ですが…」
「まだあるのか!」
ワードレィズ侯爵の言葉を遮ったのは陛下だ。
「もちろんです!まずはこちらの書類を見て頂けますか?」
そう言って机の上に置いた山の様な書類。
「これは人身売買の記録ではないか!」
「こっちは横領の証拠だ!」
近くにいた貴族たちが、それぞれ書類を手に取り見ている。
「そうです。これは全てフェザー公爵が行った悪事の数々です。フェザー公爵、あなたは随分と悪い事をしていたのですね。まさかここまで悪事を働いていたなんて…」
呆れ顔のワードレィズ侯爵。
「ふざけるな!こんなもの出鱈目だ!」
そう言って書類を破ろうとするフェザー公爵。それを騎士たちが止めに入る。
「10年前ダィーサウ公爵家を陥れ、無実の罪を着せたのもあなたですね。ここにバッチリと証拠が記されていますよ」
そう言うと、さらに書類を机の上に置いた。
「これは…確かに当時ダィーサウ公爵が罪に問われた内容のものだ。でも、中身は…」
皆食い入るように見ている。
決定的証拠を突き付けられたフェザー公爵。これで観念するか…そう思った時だった。
「ああ、そうだよ!ダィーサウ公爵家を陥れ、無実の罪を着せたのは私だ!そもそも、あいつが悪いんだよ。勉学も武術も出来て、さらに国一番の美人と評判の夫人まで手に入れて。そして今度は娘たちのどちらかを、王太子の婚約者になんて話も出て来た。だからあいつには消えてもらったんだよ。処刑場で、惨ったらしく死んでいくあいつとあいつの家族を見た時、胸がスッとしたよ!」
そう吐き捨てた!そんなくだらない理由で、私の大切な家族は殺されたの?そう思ったら、体中から怒りが溢れだすと同時に、涙もとめどなく流れた。もう我慢できない!そう思った瞬間
「貴様!よくもフローラの家族を!そんなくだらない理由で、フローラを地獄に突き落としたのか!許さん!!!」
物凄い勢いでフェザー公爵に殴り掛かるアダム様。そんなアダム様を周りの貴族や騎士たちが必死に止めている。
「放せ!こいつだけは許せない!!」
興奮状態のアダム様を何とかしないと。
「アダム様、落ち着いて下さい。フェザー公爵、お初にお目にかかります。私は10年前、あなたによって地獄に叩き落とされたダィーサウ元公爵家の次女、フローラ・ダィーサウです」
頭から被っていたストールを外した。
「ダィーサウ公爵夫人にそっくりだ…という事は…」
「あなたのせいで私は両親と兄、さらに姉まで失い、ドミスティナ王国でひっそりと生きて参りました。そんな中、アダム様に出会ったのです。きっとこの出会いは運命だったのだと今なら思います。私はあなた様の悪事を暴く為に、この場所にやって参りました!今ここで、家族の無念を晴らしたいと思っております。どうか全ての罪を認め、罪を償ってください!」
溢れる涙を止める事が出来ず、泣きながら訴える形になってしまった。それでも直接本人に伝えられた事は、私によっては良かったと思っている。
「貴様!俺を裁く為にここに来たのか!…その目で俺を睨むのは止めろ…あいつに…あいつに見られている様だ…」
なぜか取り乱し始めるフェザー公爵。
「フェザー公爵を今すぐ地下牢へ連れて行きなさい!」
そう指示を出したのは王妃様だ。うなだれながらも、素直に従うフェザー公爵。
「フローラ嬢と言いましたね。10年前、ろくに調査をせずあなた達家族を無実の罪で裁いてしまった事、本当に申し訳なく思っています。謝っても許される事ではない事は分かっています。それでも謝罪させて下さい。本当に申し訳ございませんでした!」
そう言って頭を下げてくれた王妃様。そしてくるりと向きを変えた。
「陛下、あなたは10年前、ろくに調査もせずダィーサウ公爵とその家族を、無実の罪で命を奪いましたね。さらにフェザー公爵の悪事を10年以上も見過ごしたどころか、あろう事かフェザー公爵を庇っていましたね。その証拠も、ここには記載されています。よって今この場で、陛下を裁判に掛けます。ただし今すぐ国王の座を譲り、金輪際国に関する事から手を引くと言うなら、裁判は見送りたいと思います。でも、私の一存では決められません!他の貴族の方はどう思いますか?賛成の方は挙手を!」
「おい…待ってくれ…私は」
王妃様の言葉を聞き、顔を真っ青にして焦る陛下。そんな陛下を無視し、他の貴族たち全員が挙手をした。
「多数決により可決されました。それでは陛下、ご決断を!」
「…わかった。国王の座は、息子のアダムに譲ろう…それからフローラ嬢、10年前の件、本当にすまなかった。今更許して欲しいとは言えない。でも、せめて謝罪だけでもさせてくれ」
そう言って頭を下げた陛下。フェザー公爵は断罪され、陛下からは謝罪の言葉を貰った。でも…なぜだろう…心が晴れる事はない。
いくら今更謝罪されても、フェザー公爵が断罪されても、両親や兄姉が戻って来る事はないのだ。そう思ったら、無性に泣きたくなった。そして私は、声を殺して泣いた。
全てが終わった。でも、私の心の傷は癒える事はない。その事実を突きつけられたのだ。これから先、私はどうすればいいのだろう…
「まだあるのか!」
ワードレィズ侯爵の言葉を遮ったのは陛下だ。
「もちろんです!まずはこちらの書類を見て頂けますか?」
そう言って机の上に置いた山の様な書類。
「これは人身売買の記録ではないか!」
「こっちは横領の証拠だ!」
近くにいた貴族たちが、それぞれ書類を手に取り見ている。
「そうです。これは全てフェザー公爵が行った悪事の数々です。フェザー公爵、あなたは随分と悪い事をしていたのですね。まさかここまで悪事を働いていたなんて…」
呆れ顔のワードレィズ侯爵。
「ふざけるな!こんなもの出鱈目だ!」
そう言って書類を破ろうとするフェザー公爵。それを騎士たちが止めに入る。
「10年前ダィーサウ公爵家を陥れ、無実の罪を着せたのもあなたですね。ここにバッチリと証拠が記されていますよ」
そう言うと、さらに書類を机の上に置いた。
「これは…確かに当時ダィーサウ公爵が罪に問われた内容のものだ。でも、中身は…」
皆食い入るように見ている。
決定的証拠を突き付けられたフェザー公爵。これで観念するか…そう思った時だった。
「ああ、そうだよ!ダィーサウ公爵家を陥れ、無実の罪を着せたのは私だ!そもそも、あいつが悪いんだよ。勉学も武術も出来て、さらに国一番の美人と評判の夫人まで手に入れて。そして今度は娘たちのどちらかを、王太子の婚約者になんて話も出て来た。だからあいつには消えてもらったんだよ。処刑場で、惨ったらしく死んでいくあいつとあいつの家族を見た時、胸がスッとしたよ!」
そう吐き捨てた!そんなくだらない理由で、私の大切な家族は殺されたの?そう思ったら、体中から怒りが溢れだすと同時に、涙もとめどなく流れた。もう我慢できない!そう思った瞬間
「貴様!よくもフローラの家族を!そんなくだらない理由で、フローラを地獄に突き落としたのか!許さん!!!」
物凄い勢いでフェザー公爵に殴り掛かるアダム様。そんなアダム様を周りの貴族や騎士たちが必死に止めている。
「放せ!こいつだけは許せない!!」
興奮状態のアダム様を何とかしないと。
「アダム様、落ち着いて下さい。フェザー公爵、お初にお目にかかります。私は10年前、あなたによって地獄に叩き落とされたダィーサウ元公爵家の次女、フローラ・ダィーサウです」
頭から被っていたストールを外した。
「ダィーサウ公爵夫人にそっくりだ…という事は…」
「あなたのせいで私は両親と兄、さらに姉まで失い、ドミスティナ王国でひっそりと生きて参りました。そんな中、アダム様に出会ったのです。きっとこの出会いは運命だったのだと今なら思います。私はあなた様の悪事を暴く為に、この場所にやって参りました!今ここで、家族の無念を晴らしたいと思っております。どうか全ての罪を認め、罪を償ってください!」
溢れる涙を止める事が出来ず、泣きながら訴える形になってしまった。それでも直接本人に伝えられた事は、私によっては良かったと思っている。
「貴様!俺を裁く為にここに来たのか!…その目で俺を睨むのは止めろ…あいつに…あいつに見られている様だ…」
なぜか取り乱し始めるフェザー公爵。
「フェザー公爵を今すぐ地下牢へ連れて行きなさい!」
そう指示を出したのは王妃様だ。うなだれながらも、素直に従うフェザー公爵。
「フローラ嬢と言いましたね。10年前、ろくに調査をせずあなた達家族を無実の罪で裁いてしまった事、本当に申し訳なく思っています。謝っても許される事ではない事は分かっています。それでも謝罪させて下さい。本当に申し訳ございませんでした!」
そう言って頭を下げてくれた王妃様。そしてくるりと向きを変えた。
「陛下、あなたは10年前、ろくに調査もせずダィーサウ公爵とその家族を、無実の罪で命を奪いましたね。さらにフェザー公爵の悪事を10年以上も見過ごしたどころか、あろう事かフェザー公爵を庇っていましたね。その証拠も、ここには記載されています。よって今この場で、陛下を裁判に掛けます。ただし今すぐ国王の座を譲り、金輪際国に関する事から手を引くと言うなら、裁判は見送りたいと思います。でも、私の一存では決められません!他の貴族の方はどう思いますか?賛成の方は挙手を!」
「おい…待ってくれ…私は」
王妃様の言葉を聞き、顔を真っ青にして焦る陛下。そんな陛下を無視し、他の貴族たち全員が挙手をした。
「多数決により可決されました。それでは陛下、ご決断を!」
「…わかった。国王の座は、息子のアダムに譲ろう…それからフローラ嬢、10年前の件、本当にすまなかった。今更許して欲しいとは言えない。でも、せめて謝罪だけでもさせてくれ」
そう言って頭を下げた陛下。フェザー公爵は断罪され、陛下からは謝罪の言葉を貰った。でも…なぜだろう…心が晴れる事はない。
いくら今更謝罪されても、フェザー公爵が断罪されても、両親や兄姉が戻って来る事はないのだ。そう思ったら、無性に泣きたくなった。そして私は、声を殺して泣いた。
全てが終わった。でも、私の心の傷は癒える事はない。その事実を突きつけられたのだ。これから先、私はどうすればいいのだろう…
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