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第1話:そんなに私の事が嫌いですか?

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今日も1人、貴族学院の中庭でお昼ご飯を食べる。周りでは楽しそうに令嬢たちが集まってご飯を食べていた。もちろん、私はその輪に入る事はない。

なぜなら、私は物凄く令嬢たちから嫌われているから。なぜ嫌われているかって?それは私の婚約者でもあるこの国の王太子、エイダン・ディブ・カステカ様に嫌われているからだ。

侯爵令嬢でもある私、サーラ・ウィヴィッズが、エイダン様と婚約したのは10歳の時。父親の強い希望により、婚約を結ぶことになった。

金色の髪に紫の瞳をしたエイダン様は、整った顔立ちと誰にでも優しい事から、特に令嬢を中心に熱烈なファンも多い。でもなぜか、婚約者の私には物凄く冷たいのだ。私が厳しい王妃教育で落ち込んでいる時も

「そんな事で落ち込んでいる様では、僕の婚約者は務まらないよ。本当にどうしてこんな女が僕の婚約者なんだろう」

そう言ってため息を付いていた。またある時のダンスパーティーの時は

「一応婚約者だからエスコートするけれど、僕は君と踊るつもりはない」

そう言って、さっさと別の令嬢のところに行ってしまった。実はエイダン様とダンスを踊った事は、今まで一度もない。物凄くモテるエイダン様は、いつも楽しそうに別の女性と踊っている。それを壁にもたれながら見つめる私。

そんな私とエイダン様は、14歳で貴族学院に入学した。そこでも状況は変わらない。元々人見知りの私と社交的なエイダン様。どんどん友達を作って行くエイダン様に対し、誰にでも優しいエイダン様に嫌われている私。次第と皆から避けられる存在になって行った。

そんな日々が2年以上も続き、いよいよ後3ヶ月足らずで貴族学院も卒業だ。貴族学院を卒業したら、私とエイダン様は正式に結婚する事になっている。正直憂鬱以外何者でもない。

はっきり言って、私はエイダン様の事が苦手だ。そもそも、自分の事をそこまで嫌っている相手を、好きになれという方が無理だろう。周りからも

「あんたの様な女と結婚させられるエイダン様がお可哀そうだわ!それにしても、そこまで言われて婚約破棄しないだなんて、本当に図々しい女ね!」

「本当に、どれだけ図々しいのかしら。私ならあそこまで嫌われていたら、どんなに好きでも相手の事を思って婚約破棄をするわ」

そう何度も令嬢たちに言われた。私だって、出来る事なら婚約破棄をしたい。でも、私の意志ではどうする事も出来ないのだ。

今日も大きな声で私の悪口を言う令嬢たち。それが耐えられなくて、急いでお弁当を食べて、中庭を後にした。

ふと中庭を歩いていると、エイダン様が何人かの貴族に囲まれていた。

「後3ヶ月もすれば、僕はあの女と結婚しないといけないなんて、本当に地獄以外何者でもない」

また私の悪口を言っている。

「お可哀そうなエイダン様。それにしても図々しい女ね。ここまでエイダン様が嫌がっているのに、頑なに婚約破棄を受け入れないなんて」

「そうだろう?僕が何度も婚約を破棄して欲しいと言っても、“エイダン様と結婚できないなら死んでやる”って、ヒステリックを起こすから困っているんだ。本当に、どうにかして欲しいよ」

「ヤダ、死んでやる!だなんて、本当に品の無い令嬢ね」

そう言って皆で私を笑いものにしている。

その瞬間、私の中で何かが切れた。
もう嫌だ、私だってあんな男と結婚したくない!あんな男と生涯一緒にいなければいけないなら、平民になった方がましよ。

溢れる涙を抑える事が出来ず、必死に走る。向かった場所は、校舎裏の奥にある、大きな木の下だ。

「サーラ、どうしたんだい?また令嬢にイジメられたのかい?階段から突き落とされた?それとも水を掛けられた?それとも頬を打たれたのかい?」

泣きじゃくる私を慰めてくれるこの男性は、男爵令息のオーフェン・バザダフィ様だ。黒い髪に大きな眼鏡を掛けている。そう、彼は私の唯一の友達だ。

「オーフェン様、私もう無理だわ。エイダン様がね。私が“婚約破棄するなら死んでやる”って、ヒステリックに叫んでいるというのよ。私、そんな事を言った事など、一度もないのに。そもそも、私はエイダン様なんて、これっぽっちも好きではないの。あんな冷酷な男と結婚するぐらいなら、平民になった方がましよ」

溢れる涙を抑えられず、オーフェン様に気持ちをぶつけた。

「よしよし、大丈夫だよ。サーラはそんな女性じゃない事を、僕は知っているから。ほら、泣き止んで。あの男と婚約破棄したいならすればいい。もうこれ以上我慢する必要は無いんだよ」

そう言って優しく頭を撫でてくれるオーフェン様。

「ありがとう、オーフェン様、少し気持ちが楽になったわ。私、あの男と婚約破棄出来ないか、色々と考えてみる」

「僕も協力できることがあれば何でもするからね」

「ありがとう、オーフェン様」

そうよ、あんな男となんて絶対結婚しないんだから!何が何でも、婚約破棄をして見せる!
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