【本編完結】二度も殺されたくないので最強魔王になりました

ましろはるき

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一章

14 ナンパ

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 正午に町を出て、日が暮れる前には目的地である伐採場に到着した。
 馬車が通れる道もここまで。明日からはここを拠点にして、本格的に樹海深部の調査を開始する予定になっている。

「事前の取り決め通り、見張りと設営の手伝いに別れてくれ。怪我をした者は改めて診察を受けて休むように」

 レオの指示で調査隊がそれぞれ動き出す。
 伐採場は開けていたが、しばらく人が立ち入っていなかったせいで雑草が生え始めている。本来ならこの周辺には弱い魔物しか出現しなかったのだが、大型の魔物が現れるようになってからは伐採作業も中断されて、放棄されているとのことだった。
 調査隊に同行していたギルドの職員たちが中心になって、天幕の組み立てや食事の準備を進めている。
 誰にも何も言われないのをいいことに、俺はせわしなく働く人々からさりげなく距離を取り、伐採されたまま放置されていた丸太に腰かけた。

「う~ん……どうしようかな……」

 野営の支度が整っていくのを遠巻きに眺めながら腕組みする。この調査依頼が数日がかりになるということは最初からわかっていたけれど、食事や睡眠時の対策をしっかり立てていなかった。
 俺は〔形態変化〕のスキルを使ってイスミの姿を維持している。黒いフルプレートアーマーとフルフェイスの兜も、このスキルによって作り出されている。感覚としてはデカい着ぐるみを着ているような感じだ。
 兜を脱ぐことは一応できるが、体から離すと霧散してしまう。その上、顔の表情を細かく動かすことができない。ぱっと見では違和感がなくとも、長時間話せば違和感に気づかれてしまう。なのでイスミとして人前に出るときは兜が必須だった。

「あ、あの……イスミ殿、お食事の支度ができましたが……」

 途方に暮れていた俺の元にギルドの職員がやって来る。おっかなびっくりといった様子で話しかけてくるけれど、内心でビビっているのは俺のほうだ。人前で食事をするのはかなり難しい。何て言い訳しよう。

「私はいい」
「えっ、あの、でも……」
「…………」

 高圧的にすっぱり断って黙り込んでいたら、ギルドの職員は弱り切った顔でぺこりと頭を下げて去っていった。せっかく声をかけてくれたのに無駄に威圧してごめんね。

「ちょっとあんた、イスミだっけ。隣座るわよ」

 一難去ってまた一難。ギルドの職員と入れ替わるようにして、今度は魔法使いアリスと僧侶ソフィーがやってきて、有無を言わさず俺の隣に座った。
 えっ、なんで? 確かに座りやすそうな丸太が並んでるけど、天幕の下に椅子やテーブルまでセッティングされてるんだから、わざわざこんな端に来なくてもいいんじゃない?

「まあ食べられなくはないわ」
「味はともかく、野外であったかいのを食べられるとほっとするねえ」

 二人は俺が戸惑っていることにも気付かず、木の碗に入ったシチューらしきものを食べ始めた。ああ、いい匂いがする。お腹空いたな……あとで一人で見張りに出て、持ってきた携帯食料をこっそり食べよう。

「ねえあんた、鎧を黒く塗りつぶしてるってことは、主人がいない騎士なんでしょ? 昔は主人がいたの? どの国の出身? 冒険者になってどのくらい? 何歳? 魔法使える?」

 アリスに「どこ住み? SNSやってる? アカウント教えて?」みたいなノリでポンポン尋ねられて面食らう。

「なによ、もったいぶらないでさっさと答えなさいよ」
「いや……」

 イスミのプロフィールについて詳しく考えていなかった。無口で不愛想で高圧的な態度を貫いていれば、相手の方が怯んであれこれ尋ねてくることがない……と思って完全に油断していた。これまでは実際にそうだったし。
 たじろぐ俺に、ソフィーが口添えする。

「あのねえ、アリスちゃんは侯爵令嬢なんだけど、婚約者が不細工なのが嫌でお家を飛び出て冒険者やってるのね。自力でかっこいい男の人を見つけてお婿さんにしたくて、だからイスミさんに目をつけて色々質問してるの。それなりに強くて顔が良かったらお婿に迎えてくれるっていうお得な話だよ」
「ちょっとソフィー、そんな直球に……まあでもそういうことよ。とにかくツラ見せな」

 いや。いやいや。理由は分かったけど肉食にも程があるだろ。
 アリスと懇意になって魔法やスキルをいただくチャンス、と言えなくもないけど、結婚の相手を探している人に一度限りの関係を迫るのは不誠実だし。スケベ目的の男どもと同じ扱いはできない。

「…………人に見せられる顔ではない」
「なんだ、不細工なのかあ」
「残念だねえ」

 誰が不細工だよこの野郎。そりゃ娼館にいた時はブスとか言われてたけども!
 悔しさを噛みしめながらも胸をなでおろす。もしかしたら聖職者のソフィーが〔能力鑑定〕のスキルを持っているかもしれないと思ったが、わざわざ魔法を使えるかどうか聞きに来たのだから鑑定は出来ないのだろう。

「イスミ殿」

 またしても誰かがやって来る。今度は何だとうんざりしながら顔を上げると、レオがそこにいた。
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