【本編完結】二度も殺されたくないので最強魔王になりました

ましろはるき

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一章

21 夜明けを拒む

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 レオが俺の部屋を訪れた時点で、すでに日は暮れていた。部屋を照らしているのは、極限まで灯りを絞ったランプだけ。その頼りない明かりに照らされた二人の影が、ひとつの塊になって壁に映し出されている。

「レオ……」

 小さく名を呼んでわずかに顔を持ち上げると、レオはすぐに俺の要求に応えて唇を重ねた。舌で戯れながら、レオの胴に回していた脚の拘束を緩める。それを了承の合図だと正しく理解して、レオはゆるゆると腰を動かし始めた。

「んっ……! あっ、あ……レオ……そこ、気持ち、いい……ああッ!」
「ニール、ああ……かわいい、ニール……」
 
 俺のとろけきった声音に誘われるように、レオの動きが大胆になっていく。

「ひんっ! あ、ああっ……!」
「ニール……っ、ああ……、すまない、あまりに気持ちよすぎて……、これ以上、持たない……!」
「いいよ、レオ……このまま、中に……」

 一度腰を引こうとしたレオの胴に再び足を絡めて、中出しをねだる。レオの眼差しが迷う。このまま出したら俺の体に負担をかけてしまうのではないか、心配している。その懸念に俺は言葉で答えることなく、体で示す。全身で甘えて。きゅんきゅん締め付けて。潤んだ眼差しで見上げれば、レオの迷いは消えた。

「はっ、ああっ! あっ! ひああっ、やぁああ、ん……っ!」
「ああ……っ、ニール……!」

 短い間隔で、勢いよく、レオが腰を打ちつける。繋がった場所から香油があふれて、ぐちゅぐちゅと濡れた音を立てる。
 俺は俺で腰をくねらせて、積極的に自分の急所を晒す。
 果てるなら、同時に。
 一気に快楽の高みまで駆け上がる。

「あっ! あっ! ああっ! あああ――……ッ!」
「く、あ、ああ……!」

 俺の嬌声に、レオの切なげな吐息が混ざる。
 久しぶりに訪れる絶頂は、強く、長く、俺を苛む。体が痙攣して、頭の芯が痺れて、俺の性器からとろとろと性液がこぼれる。
 俺の中で、レオのものがどくどくと脈打つ。全部搾り取るように、俺の体ははしたなく雄に吸い付いて、甘える。
 
「っ、は、ああ……すまない、ニール……こんなに、抑えがきかないなんて……」
「んっ、あ……いい、よ……僕も……、きもちよかった、から……」

 初めて他人の中へ精を放ったレオは、詫びながらも俺の体を離そうとしなかった。
 まだ、足りない。雄の本能に従うように、レオはゆるゆると腰を動かして、放った精液を俺の中に擦り付ける。最初よりもさらに硬さを帯びた楔を俺の中に埋めたまま、レオは俺に口づけた。

「んっ、む……あ……、あふ……」

 もう何度目かわからない口付けを、当然のように受け入れる。今日が初めてだなんて思えないぐらい、深く。今までずっとこうしてきたように、甘く。

「んっ……! あっ! やあ、そこ……!」

 俺の頬を撫でていたレオの指先が、首元にすべって鎖骨をたどる。皮膚の薄い場所を丹念に撫でた指先が、俺の胸の先に触れて。すぐに充血して形を変えるそこを凝視されて、俺はつい、いやいやと首を横に振ってしまった。

「やぁっ! あ……ッ、やだ、レオ……見ない、で……」
「ど、努力する……!」

 レオは馬鹿正直にぎゅっと目をつぶった。
 ――この状況で「見ないで」って言われてマジで見ないようにする奴いるんだ。
 あまりの馬鹿正直さに、呆れを通り越して感心する。なんというか、本当に、レオらしくて。胸の内側がくすぐったくなる。

「あっ! ん……っ!」

 レオは固く目をつぶったまま、俺の首元に顔を埋めた。ちゅ、と音を立てて首筋を吸われる。反射的に中をきゅんと締めてしまって、甘やかな刺激にレオが低くうめく。

「ニール……その、少しだけで、いいから……かわいい姿を、見せてくれないか……?」
「や、やだ、レオ……そんな……かわいくないよ、僕なんて……」
「大丈夫……ニールはかわいいし……俺も、恥ずかしいのは、一緒だから……」

 ――レオのウブでかわいい恥じらいと一緒にするんじゃねえよボケ、俺のは全部演技だよ元男娼なめんな。
 そう罵ってしまいそうになって、奥歯を食いしばる。
 レオを相手にしていると、本当に調子が狂う。
 俺の沈黙を了承の合図と取ったのか、レオはゆっくりとまぶたをほころばせた。熱を帯びた紺色の瞳が、再び俺を捉える。

「ニール……かわいい、ニール……もっと、見せて……」

 とろけるように微笑まれて。俺はレオから目をそらせて、枕に顔を埋めた。

「……あっ! あ、ああ……っ!」

 そらせた首筋に唇が寄せられる。汗ばんだ胸元に、再びレオの指が忍び寄る。

「ひんっ、あっ、や、ぁああっ!」

 じれったいぐらい優しい手つきで、レオは俺の胸先を愛撫する。続きを促すように腰を擦り付ければ、望む通りにレオが律動を再開する。

「あ、ああっ、れ、お……! あ、きもちいい、レオ……」
「……は、あ……ニール……俺も、気持ちがいい……溶けそうだ……」
「んっ、あ! あ、ああっ!」

 レオの出した体液と香油が、レオが動くたびにぐちゃぐちゃに混ざって、動きがよりなめらかになる。
 ぎこちなかったレオの動きも、やがて性感を拾うのに慣れてくる。慎重なのは変わらない。それでも俺の中を丹念に探って、俺を疼かせる場所を見つけ出す。

「は、あ……! レオ、そこ……ああっ、そこ、されるの……すき……」
「――っ、ニール……、あ、あ……そんなにかわいい声を出されると……っ、また、すぐに……」
「うん、しよ……もっと、いっぱい……」

 こうしてレオに限界が訪れるまで、かわいく鳴いてやって。気が済むまで楽しませてやればいい。
 流れは誰が相手でも同じ。これまでに学んできた、男を悦ばせるための技を、存分に披露して。こんな正常位だけじゃなくて。レオが引かない程度にいやらしい格好で、煽ってやって。
 だから。
 こんな風に、レオが浴びせる優しさに浸りきっている場合ではない。

「はっ、あ……! れ、お……レオ……っ! あっ、あ……!」
「ニール……かわいい、ニール……」

 レオは何度も俺に口付ける。時折快感に顔をしかめて、腰をめちゃくちゃに振り立てたい衝動と闘っている。

 今まで男との性行為なんて、散々やってきた。男の欲望を満たすためにこの体を使ってきた。性欲をぶつけて、征服欲を満たすための道具になること。
 金を稼ぐために。能力をいただくために。
 今だって同じだ。変わりない。やっていることは一緒。
 そのはずなのに。俺は今、レオの腕の中で、安堵している。苦痛から最も遠い、やわらかな快感でとけきっている。
 この腕の中にいる限り、俺は誰にも、何にも、傷つけられることはない。

「あっ! あ……! や、ああ、レオ……!」
「ああ、は……ニール……辛くない……?」
「うん……きもちいい……もっと、ぎゅっとして……」

 レオの首に腕を絡ませて、抱擁をせがむ。
 きつく抱き合って、上半身を持ち上げられる。対面座位、なんて言葉、レオは知らないだろうし、意識してこの姿勢になったわけではなさそうだけれど。

「……あっ! は、あ、あアッ……!」
 
 より奥まで穿たれて。意識しなくても勝手に甘い声が漏れる。そらせた喉に、レオが口付ける。どんな場所でも、レオと触れあうすべての場所は、愛されるために存在する器官になってしまう。

「あ、ああ、ニール……っ、また、中に……いい……?」

 揺さぶられたまま、こくこくと首を縦に振る。
 再び律動を早めていく。どこまでも相手を気遣う、レオらしい、優しい動きで。

「ああっ! あ……っ! や、ああ――……っ!」
「ニール……っ!」

 二度目の絶頂も、共に迎えた。
 汗ばんだ肌が密着して。跳ね回る鼓動がどちらのものなのかわからないぐらい。
 息が整うまでそうしてから、体を離そうとしたレオを抱きしめて、引き止めた。

「や、やだ、待って……!」
「ニール……でも、辛くはない……?」

 ぶんぶんと首を横に振る。ひしとしがみつく。

「やだ、レオ、離れないで……! どこにも、行かないで……ずっと俺のそばにいて、一緒にいて……」

 レオがぐっと息を詰まらせるのがわかった。俺は俺で、自分の口から飛び出た言葉に自分で驚いて、慌てて否定する。

「ち、がう……ごめんなさい……わがまま言って……。今だけで、いいから……」
「――ああ、ニール……ニール、俺は、君を……」

 強い力で抱きしめられる。レオは言いかけた言葉を飲み込んで、代わりに唇で唇を塞いだ。知ったばかりの交わり方で、永遠を刻み込むように。
 レオの勢いに押される形で、再び寝台に背を預ける。

「……は、……ああ、ニール……かわいい、ニール……今夜は、ずっとそばにいる。決して――離さない」

 その後の交わりは、ゆるやかで、それでいて深くて。
 幾度も「ニール」と名を呼ばれた。かわいい。綺麗だ。そう繰り返す。本当に伝えたい想いを飲み込んだままでも、言葉の端々からレオの本心が漏れ出している。
 それでも、夜が明ければ、別の道へ歩き出す。
 ニールとしてレオに会うことは、この先二度とないだろう。
 だがイスミとしての俺には、いつか挑んでくるのかもしれない。
 そのときは容赦しない。
 でも、今は。今だけは。
 レオから注がれる眼差しを正面から受け止める。ゆらめく紺色の瞳には、生まれたての星のように純粋な輝きが宿っている。
 星に抱かれたまま、明ける空には知らないふりをして。俺たちは深く繋がりあった。
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