【本編完結】二度も殺されたくないので最強魔王になりました

ましろはるき

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四章

55 最初の町(アーサー視点)

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 ゲームだとフィールドに出て西にカーソルを動かせばすぐ町に着く。だけれどこの世界では馬の並足で移動して三日もかかるらしい。王宮の外での生活は初めてだったが、キャンプみたいで悪くはない。食事の支度や馬の世話なんか面倒なことは全部レナードがやってくれるし。本当に使える奴だ。

 父に旅立てと言われたときから、レナードはシステム的にも俺の仲間ということになったらしい。コマンド画面にレナードの情報が追加された。
 早速ステータスを確認してみて驚いた。レベルが29もある。しかもアルティメット・ドラゴンにはなかったスキルとかいう能力も得ている。〔疾風突き〕〔五連撃〕だって。戦闘で有利になるのはいいけど、俺よりレベルが高いのは腹立つな。
 俺だって努力はしていたのだ。魔王討伐の旅が始まる前に、王家直轄騎士団をお供につけて魔物狩りをしていた。王都周辺にはゴブリンとかホーンラビットみたいな雑魚ばっかりだったけれど、遠出をすればトロールなんて大物もいた。
 騎士団員は何人か死んだけど、まあゲームのモブなんてそんなもんでしょ。俺は騎士団員に魔物を捕らえさせてから悠々とトドメを刺して経験値を稼いだ。
 地道に努力を重ねて、俺のレベルは15にまで上がった。この世界ではレベルが10を超えたらそこそこ強い方だ。絶対レナードよりレベルが高いと思っていたのにな。
 まあ、俺には倒した魔物を召喚できるという特別な力がある。まだゴブリンとホーンラビットだけしか召喚できないけれど、これからいくらでも強い魔物と遭遇する。ドラゴンなんて召喚できたらかなり格好いい。
 そんなことを考えているうちに、一度も魔物と遭遇することなく最初の町へと到着した。

 王都の隣に位置するのは交易都市サライア。ゲームではここで新たな仲間、僧侶のエミリアと出会うことになる。
 俺は期待を胸に宿へ入ってみたが、エミリアらしき女はいなかった。

「おっかしいな……宿で会えるはずだけど」
「面会のお約束が?」
「約束っていうか、さだめ? みたいな? エミリアっていう名前の僧侶とこの町で出会うはずなんだけど」
「なるほど……神のお導きなのですね」

 説明してやると、レナードは神妙な顔でうなずいた。
 勇者の仲間になるキャラクターは全部で三人。聖騎士のレナードに、僧侶のエミリア。そして魔法使いのメイベル。
 エミリアは故郷の村を魔物に蹂躙され、魔物退治の協力者を募るためにこの町までやってくる。その依頼を勇者が引き受け、エミリアが仲間として加わる流れだ。
 俺も一応〔ヒーリング〕なら使えるけれど、あらゆる回復魔法を使いこなす彼女のサポートは旅に欠かせない。それに何より、エミリアは女だ。ゲームはドット絵だったから外見がわからなかったけど、レナードがこの顔だ。エミリアも絶対に美少女のはずだ。
 エミリアを探して宿を一軒一軒回る。結構な広さのある町だった。ゲームだとこぢんまりしてたのに。宿屋と武器防具屋、道具屋、教会が一軒ずつ。あと民家がいくつか、みたいな。民家に侵入してタンスを漁ったりしても許されていたが、この世界ではさすがにそんなことはできない。
 町を見学しながらエミリアを探す。最初は「こういうのもゲームの醍醐味だよな」と思って楽しんでたけど、すぐに飽きた。俺は町長の館に向かい、王子特権を使って「エミリアという僧侶の女を探せ」と命じた。
 町長の館には三日ほど滞在したが、それでもエミリアは見つからなかった。

「申し訳ございません、該当する女性はどこを探しても見つからず……」
「ハア? ふざけんなよ、俺はエミリアを探してこいって命令したんだ。王子の命令に背くのか?」
「い、いえ、けしてそのような……!」

 くそ。職務怠慢だ。床に這いつくばっていた町長を蹴倒そうとしたが、別行動をしていたレナードが戻ってきたので思いとどまる。

「どうだった? エミリアはいた?」
「申し訳ございません、見つかりませんでした。ですが冒険者ギルドに言付けをしてまいりました」

 レナードは情報を集めるために冒険者ギルドへ行っていた。最近は魔物の目撃情報がかなり減っているらしい。冒険者たちも普通の害獣を狩ったり、薬草採取などの仕事ばかりなんだとか。どこかの村や集落が襲われたという情報もない。
 じゃあこれから魔物がエミリアの村を襲うんだろうな。そう思って何日か待ったが、エミリアが現れる気配はない。痺れを切らした俺はエミリアの故郷の村へ向かうことにした。
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