【本編完結】二度も殺されたくないので最強魔王になりました

ましろはるき

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四章

58 虐殺(アーサー視点)

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 帰路は〔テレポート〕を使ってサライアまで戻った。〔テレポート〕は一度行った場所なら自由に行き来できる便利な魔法だ。レベル15で覚えるので、俺は旅立ち前にレベル上げを頑張っておいた。レナードもこの点に関しては俺に敬意を払って感謝していた。まあ当然だよな。
 そうしてサライアで一泊してから、翌朝。宿の別室をとっていたレナードは、顔を合わせるなり剣呑な顔つきになった。

「アーサー殿下。どこかお怪我をなさっていますか?」
「えっ!? なんで?」
「――血の臭いが。それに、焦げたような臭いも」

 げ。ちゃんと綺麗に洗ったつもりなのに。

「全然、大丈夫。なんか剣とか装備の臭いかな? これでよく魔物狩りしてたから」
「……お怪我がないなら何よりですが」

 レナードはそれ以上追求してこなかった。うまく誤魔化せたみたいでほっとする。てゆうか勘がよすぎないか?
 レナードは俺の仲間だけれど、さすがにラパスの村人をぶっ殺しまくってきたなんて言ったら見限られちゃいそうだしな。

 ――昨晩。俺はひっそりと宿を抜け出し、〔テレポート〕を使ってラパス村まで飛んだ。
 ゲームだと仲間全員移動するが、この世界の〔テレポート〕は手を繋いでいる相手としか転移できない。だからレナードを置いて俺だけラパス村へ行くことができた。
 最初の計画はこうだった。まずは魔物の脅威から村を守っている結界石をぶち壊す。そして魔物を召喚して村を襲わせる。ピンチになったところで俺が颯爽と現れて助けに入る。感謝したエミリアは俺の仲間になる、っていうシナリオ。
 そう思っていたのに。養護院に安置されていた結界石を探し当てた途端、村人たちに囲まれてしまった。

「警戒を強めておいて正解だったな。まさか結界石に手を出そうとするとは」
「結界石を壊そうだなんて、なんて卑劣なことを! お前が勇者だなんて信じるものか、この偽物め!」

 うまく忍び込んだつもりが、泳がされていたらしい。村人たちは口々に俺を罵った。
 
「いやいや、本物の王子で勇者だって。ちょっとこの村の守りが心配になったから、結界石がちゃんと作動してるかどうか調査しに来てやっただけで――」
「それなら夜中に忍び込む必要はないだろ」

 まあそうだよな。他にも色々言い訳をしてみたけれど、いきりたった村人たちが大人しくなる気配はなかった。

「……あー、もういいや。めんどくせえ」

 俺は結界石に向かって〔ファイアボール〕を放った。結界石は案外簡単に砕け散った。
 村人たちが驚いている隙に、すぐさま魔物たちを召喚する。最弱のゴブリンでも、数がいれば人間なんてひとたまりもない。唐突に湧いた魔物に戸惑っている村人たちに、ゴブリンは容赦なく襲いかかった。

「わああ! 魔物が湧いて出たぞ!」
「あ、あいつは、悪魔か……!」

 俺が放った魔法で養護院に火が回る。火事を知らせる鐘が鳴り響き、おまけに魔物まで溢れかえっている。村中が騒然となるのを、俺は楽しく見ていた。
 計画通りにはいかなかったけれど、田舎者たちの生意気な態度にはイラついていたから、むしろこの方がいい。
 あとはエミリアだ。エミリアなんてどうせ小娘だし。ちょっと「わからせて」やれば素直に俺の言うことに従って仲間になるはずだ。
 ここは騒がしいから、エミリアだけ〔テレポート〕でサライアまで連れて行ってしまおう。
 だが立ちはだかる村人たちが意外としぶとくて苦戦した。特にエミリア。あいつが魔法で回復させてしまうせいで戦いが長引いている。モブの分際で地味に攻撃魔法を使ってくるやつもいるし。

「おい! エミリア、いい加減にしろ! お前さえついてくれば他の村人は見逃してやるから」
「お黙りなさい! 邪悪なる者よ、私は決して悪には屈しません!」

 エミリアの金切り声にうんざりする。いくら美少女でも話の通じないヒス女とか無理だわ。
〔召喚〕も無尽蔵にとはいかない。魔物を呼び出し続ければ、いずれMPが尽きてしまう。だから結局、回復役のエミリアから殺すしかなかった。あとは適当に火を放って、村を燃やして終わりにした。

 人間狩りは楽しかったけど、やっぱりエミリアは惜しかった。

「はあ……エミリアを仲間にしたかったんだけどな……」
「大丈夫です。アーサー殿下は予言されし勇者。きっと神のご加護があります」

 がっくりと肩を落とす俺を、レナードは優しく励ましてくれた。レナードは本当にいいやつだ。この調子で、俺のために死ねるぐらい忠誠心を高めてもらいたい。
 前世でアルティメット・ドラゴンをプレイしていたとき、俺はネットで調べた裏技を駆使してゲームを楽に進めていた。
 まずはラパス村でゴールドフェアリーを狩り、仲間のレベルを30ぐらいまで一気に上げる。そうするとレナードは〔サクリファイス〕という自爆魔法を、エミリアは〔リバイバル〕という一度死んでも復活できる便利な魔法を使えるようになる。レナードに〔リバイバル〕をかけてから〔サクリファイス〕を使わせれば人間爆弾の完成ってわけ。魔境に行くまではこの裏技さえあれば楽勝なはずだったんだよな。
 まあいいか。どうせ〔サクリファイス〕はボス相手に通用しない。それに〔リバイバル〕がなくても、蘇生アイテムがあればレナードを人間爆弾として使えるようになるし。

「ありがとう、レナード。頼りにしてるよ」

 俺の言葉にレナードは恭しく頭を下げた。
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