70 / 96
五章
70 処刑の時間(アーサー視点)
しおりを挟む
あのクソみたいな旅から帰って、国王に即位して数ヶ月後。闘技場の中央には、捕らえた妖精族――人語を解する魔物どもが集められていた。
闘技場の観客席は久々に満員だった。最近は魔物が捕まらず、人間同士の剣闘ばかりで飽きがきていた。そこに物珍しい北方の魔物、しかも人型が現れたのだ。みんな興味津々で眺めている。
「これほどまでの魔物たちを一網打尽にするとは、さすが叔父上。迅速な働きに感謝しよう」
「もったいないお言葉です」
専用のVIP席にいる俺へ向かって、クロヴィスは跪いて首を垂れた。周囲にいた取り巻きの貴族たちも倣って膝をつく。
俺はミッドランド国王に即位してすぐ、閃光騎士団の総長であるクロヴィスに命じた。
――ノルト王国領のノイエという村にいる、妖精族と名乗る魔物たちを捕らえて、俺の前に連れてこい。
他国に干渉することに対して外交官が口を挟んできたが、クロヴィスは取り合うことなく忠実に俺の命令に従った。
父である元国王は幽閉した。俺のやり方に反発する者たちも多少はいたが、俺は一部の貴族たちから絶大な人気を集めている。主に奴隷売買で儲けている手合いだ。反発する奴らにも金が流れるようにしておけば、そのうち俺に恭順するだろう。平民から税金を搾り取って貴族にばら撒くだけの簡単なお仕事だ。
国王として統治をしつつ、息抜きに女を囲ったり、死刑囚をこの手で殺したりして楽しんでいる間に、クロヴィスは見事に俺の命令を達成した。遠方なので時間はかかったが、待った甲斐があった。クロヴィスは本当に使える奴だ。
「ははは、壮観だな」
クロヴィスが捕えてきた魔物は総勢百匹ほど。期待以上の頭数だ。みんな鎖で繋がれている。今にも暴れ出しそうな形相で周囲に睨みをきかせているが、無駄なことだ。魔物たちの周りを囲んでいるのは、王家直轄の騎士団。俺の側には、俺を護衛するための精鋭部隊。この魔物たちがどれだけ強いのか知らないが、クロヴィスの騎士団で捕まえられたんだから、暴れてもすぐに制圧できる。
今回は捕らえてきた魔物を検分するだけの予定だったけれど、観客どもを喜ばせてやるためにも二、三匹殺してみてもいいな。それに一匹あたりどれぐらいの経験値が得られるのかも気になる。
国王である俺が自らレベル上げをする必要はないんだけど、やはり自分自身が強ければ立場もより盤石になる。クロヴィスも今は俺に従っているが、何かのはずみで裏切らないとも限らない。
――そうだ。ここに集められた魔物たちを全員殺した後は、エミリアがいた村で妖精狩りをするのもいいな。
村にはまだ生き残りがいるかもしれないが、完全に潰して別邸を建てさせよう。綺麗な泉のほとりで保養しつつのんびり妖精を狩る。そうすればすぐにカンストできるだろう。
「私たちは魔物ではない! 妖精族だ!」
「この国の者たちは、容姿が多少異なるだけで人を魔物だと差別するのか!?」
せっかく楽しい計画を立てていたのに、魔物どもがぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた。俺は近衛に「黙らせろ」と命じたが、騒ぎは収まるどころかより大きくなっていった。
「このような横暴、勇者様が見逃すはずない!」
「そうだ、きっと本物の勇者様が助けてくださる!」
「ミッドランドの王は偽の勇者だ! 本物の勇者様! 助けてください!」
魔物たちから発せられる「偽の勇者」という言葉に、観客席に集まった民衆たちもざわめく。
――偽の勇者とか。マジでムカつくんですけど。
「鎮まれ! この魔物どもめ! 勇者である俺がお前ら魔物を処刑してやる!」
俺が剣を抜いて闘技場の舞台に降りていくと、観客席からわっと歓声があがった。みんな血を見たいのだ。
「さあて、どいつから殺してやろうか」
ど・れ・に・し・よ・う・か・な。拘束された魔物たちを剣先で指し示しながら物色する。老若男女、よりどりみどり。みんな殺しがいがありそうだ。
「ようし、そこのお前。生意気そうなガキ。お前から見せしめに殺してやる」
女は他に使い道があるからな。すぐに斬り殺すのはもったいない。騎士団の手によって俺の前まで引きずり出されたガキがどれほど絶望した顔をしているのか見てやろうと思ったのに、ガキは不敵に笑っていた。
「ふん。たとえ力が半減していようとも、貴様程度に殺られるステュクスではない。たかがレベル16のクズが」
「――は!? 何だとこのクソガキ! っていうか何で俺のレベルを知ってるんだよ!」
レベルが低いから周囲の者たちには黙っていたのに。じっくりと切り刻んで、殺してくれと懇願するまでいたぶってやる。そう思って剣を振り上げたが、横から腕を掴まれてしまった。
俺の行動を阻止したのは、クロヴィスだった。
「クロヴィス! なぜ止める! 叔父とはいえ、国王であるこの私を止めようなどとは無礼ではないか!」
クロヴィスの腕を振り払う。元々それほど強い力ではなかったせいか、簡単に振り解くことができた。
クロヴィスは俺に跪いて、白銀に輝く剣を恭しく差し出した。
「陛下。魔物を倒されるならば、どうかこの剣をお使いください」
それは、俺が手に入れることができなかった聖剣だった。
闘技場の観客席は久々に満員だった。最近は魔物が捕まらず、人間同士の剣闘ばかりで飽きがきていた。そこに物珍しい北方の魔物、しかも人型が現れたのだ。みんな興味津々で眺めている。
「これほどまでの魔物たちを一網打尽にするとは、さすが叔父上。迅速な働きに感謝しよう」
「もったいないお言葉です」
専用のVIP席にいる俺へ向かって、クロヴィスは跪いて首を垂れた。周囲にいた取り巻きの貴族たちも倣って膝をつく。
俺はミッドランド国王に即位してすぐ、閃光騎士団の総長であるクロヴィスに命じた。
――ノルト王国領のノイエという村にいる、妖精族と名乗る魔物たちを捕らえて、俺の前に連れてこい。
他国に干渉することに対して外交官が口を挟んできたが、クロヴィスは取り合うことなく忠実に俺の命令に従った。
父である元国王は幽閉した。俺のやり方に反発する者たちも多少はいたが、俺は一部の貴族たちから絶大な人気を集めている。主に奴隷売買で儲けている手合いだ。反発する奴らにも金が流れるようにしておけば、そのうち俺に恭順するだろう。平民から税金を搾り取って貴族にばら撒くだけの簡単なお仕事だ。
国王として統治をしつつ、息抜きに女を囲ったり、死刑囚をこの手で殺したりして楽しんでいる間に、クロヴィスは見事に俺の命令を達成した。遠方なので時間はかかったが、待った甲斐があった。クロヴィスは本当に使える奴だ。
「ははは、壮観だな」
クロヴィスが捕えてきた魔物は総勢百匹ほど。期待以上の頭数だ。みんな鎖で繋がれている。今にも暴れ出しそうな形相で周囲に睨みをきかせているが、無駄なことだ。魔物たちの周りを囲んでいるのは、王家直轄の騎士団。俺の側には、俺を護衛するための精鋭部隊。この魔物たちがどれだけ強いのか知らないが、クロヴィスの騎士団で捕まえられたんだから、暴れてもすぐに制圧できる。
今回は捕らえてきた魔物を検分するだけの予定だったけれど、観客どもを喜ばせてやるためにも二、三匹殺してみてもいいな。それに一匹あたりどれぐらいの経験値が得られるのかも気になる。
国王である俺が自らレベル上げをする必要はないんだけど、やはり自分自身が強ければ立場もより盤石になる。クロヴィスも今は俺に従っているが、何かのはずみで裏切らないとも限らない。
――そうだ。ここに集められた魔物たちを全員殺した後は、エミリアがいた村で妖精狩りをするのもいいな。
村にはまだ生き残りがいるかもしれないが、完全に潰して別邸を建てさせよう。綺麗な泉のほとりで保養しつつのんびり妖精を狩る。そうすればすぐにカンストできるだろう。
「私たちは魔物ではない! 妖精族だ!」
「この国の者たちは、容姿が多少異なるだけで人を魔物だと差別するのか!?」
せっかく楽しい計画を立てていたのに、魔物どもがぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた。俺は近衛に「黙らせろ」と命じたが、騒ぎは収まるどころかより大きくなっていった。
「このような横暴、勇者様が見逃すはずない!」
「そうだ、きっと本物の勇者様が助けてくださる!」
「ミッドランドの王は偽の勇者だ! 本物の勇者様! 助けてください!」
魔物たちから発せられる「偽の勇者」という言葉に、観客席に集まった民衆たちもざわめく。
――偽の勇者とか。マジでムカつくんですけど。
「鎮まれ! この魔物どもめ! 勇者である俺がお前ら魔物を処刑してやる!」
俺が剣を抜いて闘技場の舞台に降りていくと、観客席からわっと歓声があがった。みんな血を見たいのだ。
「さあて、どいつから殺してやろうか」
ど・れ・に・し・よ・う・か・な。拘束された魔物たちを剣先で指し示しながら物色する。老若男女、よりどりみどり。みんな殺しがいがありそうだ。
「ようし、そこのお前。生意気そうなガキ。お前から見せしめに殺してやる」
女は他に使い道があるからな。すぐに斬り殺すのはもったいない。騎士団の手によって俺の前まで引きずり出されたガキがどれほど絶望した顔をしているのか見てやろうと思ったのに、ガキは不敵に笑っていた。
「ふん。たとえ力が半減していようとも、貴様程度に殺られるステュクスではない。たかがレベル16のクズが」
「――は!? 何だとこのクソガキ! っていうか何で俺のレベルを知ってるんだよ!」
レベルが低いから周囲の者たちには黙っていたのに。じっくりと切り刻んで、殺してくれと懇願するまでいたぶってやる。そう思って剣を振り上げたが、横から腕を掴まれてしまった。
俺の行動を阻止したのは、クロヴィスだった。
「クロヴィス! なぜ止める! 叔父とはいえ、国王であるこの私を止めようなどとは無礼ではないか!」
クロヴィスの腕を振り払う。元々それほど強い力ではなかったせいか、簡単に振り解くことができた。
クロヴィスは俺に跪いて、白銀に輝く剣を恭しく差し出した。
「陛下。魔物を倒されるならば、どうかこの剣をお使いください」
それは、俺が手に入れることができなかった聖剣だった。
51
あなたにおすすめの小説
異世界魔物大図鑑 転生したら魔物使いとかいう職業になった俺は、とりあえず魔物を育てながら図鑑的なモノを作る事にしました
おーるぼん
ファンタジー
主人公は俺、43歳独身久保田トシオだ。
人生に疲れて自ら命を絶とうとしていた所、それに失敗(というか妨害された)して異世界に辿り着いた。
最初は夢かと思っていたこの世界だが、どうやらそうではなかったらしい、しかも俺は魔物使いとか言う就いた覚えもない職業になっていた。
おまけにそれが判明したと同時に雑魚魔物使いだと罵倒される始末……随分とふざけた世界である。
だが……ここは現実の世界なんかよりもずっと面白い。
俺はこの世界で仲間たちと共に生きていこうと思う。
これは、そんなしがない中年である俺が四苦八苦しながらもセカンドライフを楽しんでいるだけの物語である。
……分かっている、『図鑑要素が全くないじゃないか!』と言いたいんだろう?
そこは勘弁してほしい、だってこれから俺が作り始めるんだから。
※他サイト様にも同時掲載しています。
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
病み墜ちした騎士を救う方法
無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。
死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。
死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。
どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……?
※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
辺境伯は嵌められた元令息から目が離せない
コムギ
BL
冤罪により、辺境の地へ追いやられた元侯爵令息ユベール。
だが彼は、あまりのことに気を病んで――はいなかった。
野山を駆け回り、虫を捕まえ、草花をスケッチし、のんびり釣りをする。
それはすべて、侯爵家の令息として縛られていた頃には許されなかった自由だった。
そんな生活から一年。
冤罪を証明できそうだと、幼なじみの王太子から報せが届く。
――王都へ戻れる。
それは同時に、あの窮屈で冷たい場所へ戻るということでもあった。
迷うユベールの前に現れたのは、これまで静かに見守るだけだった辺境伯ラドヴァン。
「ならば、ずっとここにいろ」
「俺と婚約すればいい」
不器用に、しかし真っ直ぐに差し伸べられた手。
優しく(時に暑苦しく)包囲してくる辺境伯と、元侯爵令息の恋物語。
※他サイトにも掲載しています。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる