【本編完結】二度も殺されたくないので最強魔王になりました

ましろはるき

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五章

70 処刑の時間(アーサー視点)

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 あのクソみたいな旅から帰って、国王に即位して数ヶ月後。闘技場の中央には、捕らえた妖精族――人語を解する魔物どもが集められていた。
 闘技場の観客席は久々に満員だった。最近は魔物が捕まらず、人間同士の剣闘ばかりで飽きがきていた。そこに物珍しい北方の魔物、しかも人型が現れたのだ。みんな興味津々で眺めている。

「これほどまでの魔物たちを一網打尽にするとは、さすが叔父上。迅速な働きに感謝しよう」
「もったいないお言葉です」

 専用のVIP席にいる俺へ向かって、クロヴィスは跪いて首を垂れた。周囲にいた取り巻きの貴族たちも倣って膝をつく。
 俺はミッドランド国王に即位してすぐ、閃光騎士団の総長であるクロヴィスに命じた。
 ――ノルト王国領のノイエという村にいる、妖精族と名乗る魔物たちを捕らえて、俺の前に連れてこい。
 他国に干渉することに対して外交官が口を挟んできたが、クロヴィスは取り合うことなく忠実に俺の命令に従った。
 父である元国王は幽閉した。俺のやり方に反発する者たちも多少はいたが、俺は一部の貴族たちから絶大な人気を集めている。主に奴隷売買で儲けている手合いだ。反発する奴らにも金が流れるようにしておけば、そのうち俺に恭順するだろう。平民から税金を搾り取って貴族にばら撒くだけの簡単なお仕事だ。
 国王として統治をしつつ、息抜きに女を囲ったり、死刑囚をこの手で殺したりして楽しんでいる間に、クロヴィスは見事に俺の命令を達成した。遠方なので時間はかかったが、待った甲斐があった。クロヴィスは本当に使える奴だ。

「ははは、壮観だな」

 クロヴィスが捕えてきた魔物は総勢百匹ほど。期待以上の頭数だ。みんな鎖で繋がれている。今にも暴れ出しそうな形相で周囲に睨みをきかせているが、無駄なことだ。魔物たちの周りを囲んでいるのは、王家直轄の騎士団。俺の側には、俺を護衛するための精鋭部隊。この魔物たちがどれだけ強いのか知らないが、クロヴィスの騎士団で捕まえられたんだから、暴れてもすぐに制圧できる。
 今回は捕らえてきた魔物を検分するだけの予定だったけれど、観客どもを喜ばせてやるためにも二、三匹殺してみてもいいな。それに一匹あたりどれぐらいの経験値が得られるのかも気になる。
 国王である俺が自らレベル上げをする必要はないんだけど、やはり自分自身が強ければ立場もより盤石になる。クロヴィスも今は俺に従っているが、何かのはずみで裏切らないとも限らない。
 ――そうだ。ここに集められた魔物たちを全員殺した後は、エミリアがいた村で妖精狩りをするのもいいな。
 村にはまだ生き残りがいるかもしれないが、完全に潰して別邸を建てさせよう。綺麗な泉のほとりで保養しつつのんびり妖精を狩る。そうすればすぐにカンストできるだろう。

「私たちは魔物ではない! 妖精族だ!」
「この国の者たちは、容姿が多少異なるだけで人を魔物だと差別するのか!?」

 せっかく楽しい計画を立てていたのに、魔物どもがぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた。俺は近衛に「黙らせろ」と命じたが、騒ぎは収まるどころかより大きくなっていった。

「このような横暴、勇者様が見逃すはずない!」
「そうだ、きっと本物の勇者様が助けてくださる!」
「ミッドランドの王は偽の勇者だ! 本物の勇者様! 助けてください!」
 
 魔物たちから発せられる「偽の勇者」という言葉に、観客席に集まった民衆たちもざわめく。
 ――偽の勇者とか。マジでムカつくんですけど。

「鎮まれ! この魔物どもめ! 勇者である俺がお前ら魔物を処刑してやる!」

 俺が剣を抜いて闘技場の舞台に降りていくと、観客席からわっと歓声があがった。みんな血を見たいのだ。

「さあて、どいつから殺してやろうか」

 ど・れ・に・し・よ・う・か・な。拘束された魔物たちを剣先で指し示しながら物色する。老若男女、よりどりみどり。みんな殺しがいがありそうだ。

「ようし、そこのお前。生意気そうなガキ。お前から見せしめに殺してやる」

 女は他に使い道があるからな。すぐに斬り殺すのはもったいない。騎士団の手によって俺の前まで引きずり出されたガキがどれほど絶望した顔をしているのか見てやろうと思ったのに、ガキは不敵に笑っていた。
 
「ふん。たとえ力が半減していようとも、貴様程度に殺られるステュクスではない。たかがレベル16のクズが」
「――は!? 何だとこのクソガキ! っていうか何で俺のレベルを知ってるんだよ!」

 レベルが低いから周囲の者たちには黙っていたのに。じっくりと切り刻んで、殺してくれと懇願するまでいたぶってやる。そう思って剣を振り上げたが、横から腕を掴まれてしまった。
 俺の行動を阻止したのは、クロヴィスだった。

「クロヴィス! なぜ止める! 叔父とはいえ、国王であるこの私を止めようなどとは無礼ではないか!」

 クロヴィスの腕を振り払う。元々それほど強い力ではなかったせいか、簡単に振り解くことができた。
 クロヴィスは俺に跪いて、白銀に輝く剣を恭しく差し出した。

「陛下。魔物を倒されるならば、どうかこの剣をお使いください」

 それは、俺が手に入れることができなかった聖剣だった。
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