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五章
78 神との対話3
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「ニールはねえ、ギルディラースが呼んだんだよ」
アルルは「そうだよね~」と笑いかけたが、当然ギルディラースはご立腹だ。
「なぜ我にプレイヤーを呼ぶ権限を持たせた」
「ううん、実際にニールを呼んだのは僕だよ」
一拍の間を置いて、ギルディラースがついに激昂した。
「戯けておるのか貴様は!」
「どうどう、落ち着け」
今にもアルルに殴りかからんとするギルディラースの腕に抱きついて止める。アルルはまったく動じた様子もなくニコニコしていた。
「びっくりしたよね。ギルディラースが僕の存在に気づいていて、僕を憎んで殺そうとしていたなんて。だって勇者に倒されるために作った存在なのに、その役割が嫌になるなんて思いもしなかった。まあでもよく考えたら魔物たちも魔王も喜んで死んでるわけなかったよね。ごめんね~」
「――殺す!!!!」
「ギル! ステイ!」
ギルディラースがアルルに飛びかかる寸前で、俺は〔隷属〕のスキルを発動させた。ギルディラースを強制的に仔猫の姿に変じさせて力を封じる。
「ふしゃー! にゃー! ころすにゃー! このボケをころしてやるのニャ~!」
毛を逆立てて爪を出す子猫を撫で回して落ち着かせる。
ギルディラースの気持ちを思うと一発ぐらい殴らせてやりたいが、とりあえず情報を引き出せるうちは話を続けなければならない。
「まあ、だから、ギルディラースがなんとかして僕に干渉しようとしていることに気がついたとき、ギルディラースや四天王たちにいつの間にか意志が芽生えていたことも知ったんだ。プレイヤーが訪れるたびに繰り返される戦いの記憶が蓄積されていることも知った。そのことが面白かったんだ」
そう言ってアルルは無邪気に微笑んだ。落ち着きかけたギルが再び毛を逆立てる。
「面白いのはいいことだよ。だから、ギルディラースがなんとか僕に逆らおう、世界を変えようとしていることに気づいて、いっそ試してみようと思ったんだ。勇者の他に、もうひとり。魔王の味方になるプレイヤーを招いてみても面白いかもなって」
そうしてアルルは、正式に勇者として招待したプレイヤーとは別に、たまたま同時期に意識不明となっていた俺をこの世界に招いた。魔王ギルディラースと力を共有する異分子。それが俺だ。
「俺が魔力なしで生まれて殺されかけたのも、お前が面白いと思ってやったのか?」
「ううん。僕はプレイヤーを二人招待しただけ。本来一人しか呼べないから、足りない力はギルディラースの力をシェアする形で補ったんだ。そうしたらなんか流れでそうなったよ」
「……だと思ったよ」
特に深い考えがあってのことではない。
しかし俺がMPも魔力もないのに魔法を使えたのは、ギルディラースの力を共有していたせいだったのか。道理で強いはずだ。謎がひとつ解けたが、他にも気がかりはある。
「俺は殺されかけたことがきっかけで前世の……いや、現実世界での記憶を取り戻したけれど、普通のプレイヤーは最初から記憶を保持しているのか?」
「うん。ていうかニールは記憶なかったんだ?」
「そうだよ! 俺の状況を把握してなかったのかよ!」
「ごめぇん」
つい舌打ちしてしまったが、アルル相手に何を言っても仕方がない。膝の上の仔猫を撫で回して気を落ち着かせる。
さらにヒアリングを重ねて、俺は正式なプレイヤーの越し方を知った。そしてゲームクリア後も。
魔王ギルディラースを倒したらエンディング。アルルはここで一度、プレイヤーに対して「ゲームを終了しますか? Yes/No」という選択肢を提示する。
Yesを選択した場合。現実世界で死亡しているプレイヤーはゲームを終えることで真の死を迎えることになる。プレイヤーが生存している場合は意識を取り戻す。
Noを選択した場合。プレイヤーはゲーム世界での寿命を迎えるまで自由に暮らしていくことができる。
しかしエンディングを迎える前に、プレイヤーがゲームをやめたいという意思を表明した場合。アルルはプレイヤーに接触して最終確認をする。今回のプレイヤーはこれに該当する。
「たまに魔王ギルディラースを倒さずに、ずっと冒険を続けるプレイヤーもいるんだ。冒険せずに、スローライフ? とかを楽しんだり、全然違う遊び方をするプレイヤーもいた。そういう場合、プレイヤーがゲーム世界で八十歳になったら寿命を迎えて、強制的にエンディングを迎える設定になってる」
「一応制限時間はあるんだな」
不老不死になりたいと願う者もいたが、アルティメット・ドラゴンの世界観から逸脱してしまうのでこのような設定にしたそうだ。それはそれで納得がいくが。
「――今回の場合はどうなるんだ? プレイヤーはゲームをやめた。でも俺というイレギュラーがいて、ギルディラースも健在だ。世界はまだエンディングを迎えていない」
「わかんない! なんにもかんがえてない!」
「元気いっぱいに言うな」
俺につっこまれたアルルはてへへと笑う。仔猫のギルはもはや怒る気力もないのか、俺の膝の上でぐったりしていた。無理もない。宿敵ともいえる相手がこの調子では萎えるだろう。
「このままニールだけをプレイヤーとして世界を存続させてもいいけど、その場合ニールかギルディラースが死亡、もしくは寿命を迎えた時点で終了することになる。ちなみにギルディラースの寿命は千年ぐらいで、ギルディラースの力を共有しているニールも同じ。その間は老いずに若いままだよ」
「俺とギルディラースが死亡したら――その後は、また」
「うん。新しいプレイヤーを呼ぶ」
ふう、と一息ついて俺はソファにもたれかかった。
この世界の成り立ちはだいたいわかった。俺というイレギュラーがなぜ紛れ込んだのかもわかった。
――そして。アルルについても、わかってきた。
「アルルにとって重要なことは、あくまで面白さ……プレイヤーを楽しませることなんだな」
「うん」
「プレイヤーが冒険を楽しもうが、虐殺を楽しもうが、どちらも同じか」
「うん。――同じなんだと、思ってた」
そこで初めて、アルルの表情に迷いが生じた。
アルルは「そうだよね~」と笑いかけたが、当然ギルディラースはご立腹だ。
「なぜ我にプレイヤーを呼ぶ権限を持たせた」
「ううん、実際にニールを呼んだのは僕だよ」
一拍の間を置いて、ギルディラースがついに激昂した。
「戯けておるのか貴様は!」
「どうどう、落ち着け」
今にもアルルに殴りかからんとするギルディラースの腕に抱きついて止める。アルルはまったく動じた様子もなくニコニコしていた。
「びっくりしたよね。ギルディラースが僕の存在に気づいていて、僕を憎んで殺そうとしていたなんて。だって勇者に倒されるために作った存在なのに、その役割が嫌になるなんて思いもしなかった。まあでもよく考えたら魔物たちも魔王も喜んで死んでるわけなかったよね。ごめんね~」
「――殺す!!!!」
「ギル! ステイ!」
ギルディラースがアルルに飛びかかる寸前で、俺は〔隷属〕のスキルを発動させた。ギルディラースを強制的に仔猫の姿に変じさせて力を封じる。
「ふしゃー! にゃー! ころすにゃー! このボケをころしてやるのニャ~!」
毛を逆立てて爪を出す子猫を撫で回して落ち着かせる。
ギルディラースの気持ちを思うと一発ぐらい殴らせてやりたいが、とりあえず情報を引き出せるうちは話を続けなければならない。
「まあ、だから、ギルディラースがなんとかして僕に干渉しようとしていることに気がついたとき、ギルディラースや四天王たちにいつの間にか意志が芽生えていたことも知ったんだ。プレイヤーが訪れるたびに繰り返される戦いの記憶が蓄積されていることも知った。そのことが面白かったんだ」
そう言ってアルルは無邪気に微笑んだ。落ち着きかけたギルが再び毛を逆立てる。
「面白いのはいいことだよ。だから、ギルディラースがなんとか僕に逆らおう、世界を変えようとしていることに気づいて、いっそ試してみようと思ったんだ。勇者の他に、もうひとり。魔王の味方になるプレイヤーを招いてみても面白いかもなって」
そうしてアルルは、正式に勇者として招待したプレイヤーとは別に、たまたま同時期に意識不明となっていた俺をこの世界に招いた。魔王ギルディラースと力を共有する異分子。それが俺だ。
「俺が魔力なしで生まれて殺されかけたのも、お前が面白いと思ってやったのか?」
「ううん。僕はプレイヤーを二人招待しただけ。本来一人しか呼べないから、足りない力はギルディラースの力をシェアする形で補ったんだ。そうしたらなんか流れでそうなったよ」
「……だと思ったよ」
特に深い考えがあってのことではない。
しかし俺がMPも魔力もないのに魔法を使えたのは、ギルディラースの力を共有していたせいだったのか。道理で強いはずだ。謎がひとつ解けたが、他にも気がかりはある。
「俺は殺されかけたことがきっかけで前世の……いや、現実世界での記憶を取り戻したけれど、普通のプレイヤーは最初から記憶を保持しているのか?」
「うん。ていうかニールは記憶なかったんだ?」
「そうだよ! 俺の状況を把握してなかったのかよ!」
「ごめぇん」
つい舌打ちしてしまったが、アルル相手に何を言っても仕方がない。膝の上の仔猫を撫で回して気を落ち着かせる。
さらにヒアリングを重ねて、俺は正式なプレイヤーの越し方を知った。そしてゲームクリア後も。
魔王ギルディラースを倒したらエンディング。アルルはここで一度、プレイヤーに対して「ゲームを終了しますか? Yes/No」という選択肢を提示する。
Yesを選択した場合。現実世界で死亡しているプレイヤーはゲームを終えることで真の死を迎えることになる。プレイヤーが生存している場合は意識を取り戻す。
Noを選択した場合。プレイヤーはゲーム世界での寿命を迎えるまで自由に暮らしていくことができる。
しかしエンディングを迎える前に、プレイヤーがゲームをやめたいという意思を表明した場合。アルルはプレイヤーに接触して最終確認をする。今回のプレイヤーはこれに該当する。
「たまに魔王ギルディラースを倒さずに、ずっと冒険を続けるプレイヤーもいるんだ。冒険せずに、スローライフ? とかを楽しんだり、全然違う遊び方をするプレイヤーもいた。そういう場合、プレイヤーがゲーム世界で八十歳になったら寿命を迎えて、強制的にエンディングを迎える設定になってる」
「一応制限時間はあるんだな」
不老不死になりたいと願う者もいたが、アルティメット・ドラゴンの世界観から逸脱してしまうのでこのような設定にしたそうだ。それはそれで納得がいくが。
「――今回の場合はどうなるんだ? プレイヤーはゲームをやめた。でも俺というイレギュラーがいて、ギルディラースも健在だ。世界はまだエンディングを迎えていない」
「わかんない! なんにもかんがえてない!」
「元気いっぱいに言うな」
俺につっこまれたアルルはてへへと笑う。仔猫のギルはもはや怒る気力もないのか、俺の膝の上でぐったりしていた。無理もない。宿敵ともいえる相手がこの調子では萎えるだろう。
「このままニールだけをプレイヤーとして世界を存続させてもいいけど、その場合ニールかギルディラースが死亡、もしくは寿命を迎えた時点で終了することになる。ちなみにギルディラースの寿命は千年ぐらいで、ギルディラースの力を共有しているニールも同じ。その間は老いずに若いままだよ」
「俺とギルディラースが死亡したら――その後は、また」
「うん。新しいプレイヤーを呼ぶ」
ふう、と一息ついて俺はソファにもたれかかった。
この世界の成り立ちはだいたいわかった。俺というイレギュラーがなぜ紛れ込んだのかもわかった。
――そして。アルルについても、わかってきた。
「アルルにとって重要なことは、あくまで面白さ……プレイヤーを楽しませることなんだな」
「うん」
「プレイヤーが冒険を楽しもうが、虐殺を楽しもうが、どちらも同じか」
「うん。――同じなんだと、思ってた」
そこで初めて、アルルの表情に迷いが生じた。
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