新生桃太郎紀行〜俺の二つの玉(だんご)を狙ってくるのは悪役令嬢と聖女と溺愛王子様〜

ぽんぽこ@3/28新作発売!!

文字の大きさ
14 / 15
第4章 鬼之島へ

4-3 差し始めた光明。

しおりを挟む
 むかーし、むかーし。

 とある洞窟の中で、桃太郎たち一行は謎の釣り人、太郎の振る舞う刺身料理に舌鼓を打っていました。
 食事を通して太郎と和解した桃太郎は、鬼乃島へ渡る方法を尋ねます。


 その道は通ることすら困難を極めると説得され、他に方法も見当たらない彼らは途方に暮れていました。
 しかし桃太郎の腰に下げていたおじいさんたちの形見、鬼神きしん封印の宝玉を見た太郎はとある案を思いついたようで……?



 ◇


「これも神さんの思し召しかもしれんなァ。……キミ、桃太郎いうたよな? もし……もしやで? ワイが鬼神を倒せる方法を教えるっちゅうたら……試す気、あるか?」


 暗がりの洞窟の中で、真面目な声色でそう聞いてきた太郎。
 さっきまでのヘラヘラとしていた態度はすっかりなりを潜め、神妙な表情をしている。


 俺より格段に強えぇコイツが、マジでそう言っているなら鬼乃島へ渡ることは可能なのだろう。だがしかし、それと同時にそれが容易いことではないと俺も察してしまった。
 かといって、俺はジジイたちの仇を諦める気は毛頭ない。



「俺はどんな困難だろうと、あのフザケた神を殺せるんっていうなら乗る意思はあるぜ。それはたとえ俺が死ぬ可能性があったとしても、だ」

「わ、私も勿論テイローについて行くわよ!? 英雄になって堂々と国に帰るんだから! ……そ、それに私がついていないと、テイローは無茶するだろうし」

「ボクだって手伝うよ! だって、桃にぃたちはボクの家族なんだから!」


「ルナ……リン。お前ら……」



 個人的な復讐にルナたち女子どもを付き合わせるなんて男の風上にも置けないが、俺としても二人がいてくれた方が心強い。それに俺だってコイツらのことをもはや一心同体、家族同然だと思っているからな。
 まだ出会って間もないが、お互いの命を預けあってここまで来たんだ。信頼だって相当なモンだぜ。


「んなははは、そうか。家族やねんなキミらは。えぇなぁ……家族か。ほな、しっかりワイが生きて鬼乃島おにのしまから帰ってこれるように助けてやらなあかんなぁ」

「ってことは……!?」

「あぁ、任せとき。ワイが鬼乃島に行く方法を教えちゃるわ! ただし、死ぬ危険が高いことには変わりあらへんで? ……それでもやるか?」


 俺たちはお互いの顔を見合わせ、同時に頷いた。


「「「もちろん!」」」


 俺たちの息の揃った返事に、満足そうにニッコリと笑顔で返す太郎。
 どんな難題だろうと、俺たちなら乗り越えてみせるぜ!


「よし、ならキミぃら……陸に戻りや!!」
「「「……はっ?」」」


 なにを笑顔でふざけたことを……!?


「おいおい。そりゃあいったい、どういうことだよ!?」
「そうよ! ここまで苦労して来たのに、陸に戻れなんて酷いじゃない!!」
「ボクたちじゃダメってことなんですか……?」


 コイツ、やっぱり俺たちのことからかって遊んでいるだけなんじゃねぇのか!?
 どうせ最初から鬼之島に行かせる気なんて無かったんだろう。


「おい、二人とも。これ以上ここに居ても無駄だったようだぜ。さっさと行こう」
「ちょいちょい! ちょっと待ちぃや。話は最後まで聞いてからでも帰るのはおそうないやろ!?」


「せっかちは損するんやで?」と立ち上がろうとしていた俺たちの服をつかんで引き留める太郎。


「なんだよ、勿体ぶりやがって。理由があるならさっさと言えっての」

「ひどっ!? こっちは知りたいっちゅうから親切で教えるんやで!? それに陸に戻れ言うたんはちゃんとした理由があってのことや! 意地悪なんかとちゃうわ!」


 理由? 鬼之島に渡るのに陸に戻る必要っていったい何なんだ……?
 ルナもリンも分からないようで、お互いに顔を見合わせてから一緒に首をかしげていた。


「さっきも言った通り、いくらキミらが強い言うても今のまま渡ろうとしても無理や。せやからワイも手伝ったる」

「ほ、本当か!?」


 ここで一万の鬼の大群を毎年抑えている太郎が助太刀してくれるんなら百人力だ。
 これで光明が見えてきたぜ!


「せやけど、それでもまだ渡り切るにはまだ戦力が足りん。せやからキミらには陸にとある武器を取りに行ってもらいたいんや」

「武器……だと?」


 せや、と真面目な顔を上下に動かし肯定する太郎。
 どういうことだ? ジジイの刀だけじゃ力が足りねぇってことか?


「キミの腰の刀、先代勇者の宝刀やろ? それに封印の宝玉。それらは神が与えた神器て言われとる。せやけど、それだけじゃ鬼神を倒すには足りんのや。更に三つ、むかぁしの英雄が持っとった神器が必要なんよ」

「神器……そんなの王国でも聞いたことが無いわよ!?」


 英雄が居たフォークロア王国出身のルナでさえも知らない話か……。
 そんなものをなんで太郎が知っているのかが気になるが。


「その宝刀の秘めた力……それをある程度は使いこなしているキミなら分かるやろ?」

「あぁ。ジジイですらこの刀の本領はまだ隠されているって言ってたからな。まだ更に上があるっていうのは何となく分かっていたぜ」


 それでなくとも、バケモノ染みた固さと力を持った鬼どもと対等以上に渡り合えていたんだ。この相棒が本来の力を取り戻せば、俺はいくらだって強くなれる気がする。


「その神が与えし刀を十全に使うには、神器との共鳴が必要なんや。鬼の神そのものを倒すには、文字通り神と同じだけの力が必要っちゅうわけやな」


「よし、その神器ってのを集めればいいんだな? それで、それらはいったい何処にあるんだ?」


 次に三途の道ができる日までにそれらを集めておきたい。
 それまで後どれくらいの猶予があるのか分からないが、いずれにせよさっさと取りに行かなくてはならないだろうな……。


「それがなぁ。どこにあるか正確な位置までは分からんのや」
「おいおい、まさかそんな適当な情報で探して来いって言わないだろうな!?」


 いくらここが島国だからって、探し回るつったら何年掛かるか分からねぇぞ!?
 それじゃあ俺がジジイになっちまうぜ。


「まぁまぁ、お茶でも飲んで一旦落ち着いてや。次に道ができるまで、だいたい半年ぐらいの余裕はまだあるんよ。それまでにここに戻ってくればえぇ。それに、大体の見当はついとるんや」


 なんだよ、まだ余裕があるんならそれを先に言って欲しかったぜ。
 太郎が出してくれた昆布の味がするお茶をズズズ、と飲みながらその見当とやらをゆっくり聞いてみることにする。


「で? それはいったいどんな武器でどんな所にあるっちゅーんや?」
「なんでワイの言葉使いが移っとるんやキミ……まぁえぇ。ちゃんとイチから説明したるわ」


 太郎はそう言うと洞窟の影でガサゴソと漁りだし、奥からなにやら古ぼけた巻物を取り出して俺たちの元に帰ってきた。


「その武器はな、ワイがむかぁし旅をしとった時に出会った仲間が持っとったんや」


 そう語り始めながら、巻物をくるくると解き始める。
 そしてたき火の明かりで見えるように地面に広げ始めた。どうやらこれはこの国の地図のようだ。随分古いようだが、結構細かく描かれており俺たちが旅をしてきた山からこの海までの道も見て取れた。


「仲間……? おい、なんで旅の仲間がそんな伝説の神器を……」

「まぁ黙って聞いとき。とある理由があって、ワイはここで防人をやることを決意したんやけどな? ここから動けんワイに代わって、その仲間たちに国中の鬼を退治してもらうよう頼んだんや」


 腕を組みながらウンウンと懐かしむように頷いている太郎。

 この男はいったい、いつからこの海で戦っていたんだ?
 ジジイの刀の事も知っていたし、絶対に若い見た目どおりの歳じゃねぇぞコイツ……。


「それじゃあ、その仲間だった人を探せばいいのね? ……で、その人たちは今どこにいるのかしら?」


 ルナは合点が言った様子で太郎にそう尋ねる。
 
 太郎はそれに対し……難しい顔でかぶりを振った。



「それがやなぁ、サヨナラしたんがもうかなり前やねん。せやから今現在、アイツらがどこに居るか正確な位置までは分からへんねん。……そこでコレが重要になってくるんや!」


 太郎は腰元の袋から手の平ぐらいの大きさの小刀を取り出し、自慢げに俺たちの目の前に掲げた。
 さやには龍の彫刻が施され、瞳の部分には小さな青い宝石が埋まっている。


「なんだ? 随分と凝った飾り刀だが、これがいったい何の役に立つって言うんだよ」

「んなははは。まぁまぁ、見ときぃや~? キミらもあっと驚くで!!」


 ニヤニヤと笑いながら、その小刀を巻物の上に置いた。


「――なっ!? う、動いただと!?」
「どうや~。すっごいやろ? ワイの知り合いに特別に作って貰ったんやで!!」


 なんとただの小刀だと思った飾り刀が、不思議なことに地図の上で勝手にクルクルと回りだしたのだ。
 そしてそのまましばらく回転すると……とある方角を指してピタッと止まった。


「へぇ~、なんだか不思議な力を持った刀だね~!」
「どういった仕組みなのかしら? 分解して調べてみたくなるわね……」


 リンとルナが地図の上でビクともしなくなった小刀をツンツンとしながら、不思議そうに尋ねる。これはもしかして……。


「この小刀はなぁ、目指すべき道を指し示してくれるお護り刀。つまり一番近い他の神器の居場所を指し示してくれるんや! これと地図があれば方角は迷わず探せるっちゅうワケやな! どや、凄いやろ? んなははは!」


「すげぇじゃねーか、太郎!! よし、これで神器とやらも見つけられるな!」

「やったわね、テイロー!」

「すごいすごい!!」


 俺たちは思わず輪になって喜びの声を上げた。

 それを太郎は何となく懐かしそうな顔をしながら微笑ましそうに眺めていた。

 本当は自分で仲間を探しに行きたいんだろう。だが防人となった今、それも難しいんだろう。

 よし、ここまでしてくれたんだし、太郎の代わりに俺たちがその昔の仲間の様子を見に行ってきてやろう。




 ◇

 こうして太郎の不思議な小刀のお陰で、桃太郎たちが鬼之島へ渡る道が見えてきました。

 次に三途の道が開かれるのは約半年後。果たしてそれまでに桃太郎一行は神器を集め、鬼人を打ち倒すための新たな力を手に入れることはできるのでしょうか……?



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能認定され王宮から追放された俺、実は竜の言葉が話せたのでSSS級最凶竜種に懐かれ、気がついたら【竜人王】になってました。

霞杏檎
ファンタジー
田舎の村から上京して王宮兵士となって1年半…… まだまだ新人だったレイクは自身がスキルもろくに発動できない『無能力者』だと周りから虐げられる日々を送っていた。 そんなある日、『スキルが発動しない無能はこの王宮から出て行け』と自身が働いていたイブニクル王国の王宮から解雇・追放されてしまった。 そして挙げ句の果てには、道中の森でゴブリンに襲われる程の不遇様。 だが、レイクの不運はまだ続く……なんと世界を破壊する力を持つ最強の竜種"破滅古竜"と出会ってしまったのである!! しかし、絶体絶命の状況下で不意に出た言葉がレイクの運命を大きく変えた。 ーーそれは《竜族語》 レイクが竜族語を話せると知った破滅古竜はレイクと友達になりたいと諭され、友達の印としてレイクに自身の持つ魔力とスキルを与える代わりにレイクの心臓を奪ってしまう。 こうしてレイクは"ヴィルヘリア"と名乗り美少女の姿へと変えた破滅古竜の眷属となったが、与えられた膨大なスキルの量に力を使いこなせずにいた。 それを見たヴィルヘリアは格好がつかないと自身が師匠代わりとなり、旅をしながらレイクを鍛え上げること決める。 一方で、破滅古竜の悪知恵に引っかかったイブニクル王国では国存続の危機が迫り始めていた…… これは"無能"と虐げられた主人公レイクと最強竜種ヴィルヘリアの師弟コンビによる竜種を統べ、レイクが『竜人王』になるまでを描いた物語である。 ※30話程で完結します。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

処理中です...