Straight Flash

市川 電蔵

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Scene 34

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次の日は、新入生を集めてのオリエンテーションだ。管理部と指導部が様々な連絡を行っている。指導部の山口さんという人が部活動についての説明をする。学院の教職員をざっと見てきて、俺と小川が来るまでは最若手だったろうという感じの若々しさで、指導部所属だけにスラリとした筋肉質な人だ。
「みなさんはこれからいろいろな部活動を見学して、入部したい部を決めてください。入部届はゴールデンウィーク前に締め切ります」
はきはきとしたしゃべり方で、なかなかの美男子である。さぞかし女子生徒に人気があるだろう。
「ハイ。部活動は必須ですか?」
ミニ三連星の菅野がさっそく質問をする。物おじしない子だ。
「部活動は強制ではありません。ただし、何らかの部に入っていない場合、評価にプラスになりません。そこんとこも考えて部を決めてください」
山口さんが明快に説明する。そういえばこの人も訛りがない。
「ハイ。部の一覧表で、軽音部が入部不可、ってなってるのはなんでですか?」
菅野がまた質問する。
「理由は私の口からは言いません。理由はじきにわかるでしょう。ただ来年度から入部受付は再開します」
指導部の口から、不良生徒のたまり場だからとは言えないだろう、そりゃ。
「ハイ。部のかけもちはいいんですか?」
菅野はわからないことはすぐ聞くようだ。成績がいいというのもうなずける。
「特に規制はしていません。運動部の掛け持ちは体力的に無理ですが、文化部や同好会は掛け持ちしている先輩は多数います。ただ、ありえない数のかけもちは指導部が実態調査します。多くの部を掛け持ちしている方が評価に有利ということではないということだけは先に言っておきます」
「じゃー私来年軽音部に入ろうっと」
菅野が日塔と鈴木とはしゃぐ。
「では、解散して部活見学へ行ってください」
山口さんがそう告げると、新入生たちはきゃっきゃ言いながら散っていく。
「石川さん、軽音部の顧問を理事長から直々に命ぜられたそうですね」
山口さんが少し心配そうに俺に語りかける。
「事情は聞きましたよ。なぁに國井たちにボコボコに殴られるわけでもなし。それに私、ギターがめちゃくちゃ上手いんです」
「ほう、そりゃすげえ」
「失礼ですけど山口さんは山形の人じゃないですよね?」
山口さんは心やすく答え、俺もくだけた感じで問う。
「うん、俺は町田。高校出て陸自に入って、東根の第6師団で2任期満了して除隊して、ここ勧められたの。通信制大学出てようやく去年教員免許取れたんだ。俺も石川さんとそう変わらないよ、教師としちゃ」
「えぇ町田っすか?私大学町田でした」
「あぁ、あすこだ」
「すいません三流で」
「いや、たしかに一流大学ではないけどせめて二流くらいにしとこうよ、俺の地元だし、パインのオーナーもじゃん」
俺達は高らかに笑い合う。
「いちおう顧問として、軽音部に行ってみますよ、これから」
「俺も同行しますわ、ニラミだけは効かせとかないと」
山口さんは少し険しい顔をして見せる。イケメンではあるが、たしかに怖い顔になった。
「山口さん、ひょっとして元ヤンっすか」
「うん。町田って多いのよ、ヤンキー。だからあいつらのことはよくわかるの」
元ヤンで元自の教師と、元バンドマンの教師がいるこの学院というところは、なかなかに楽しめそうだ。
「石川さんめちゃめちゃギター上手いって言ってたよね。バンドやってたんだ」
「バンドにのめり込み過ぎて、あやうく中退するとこでした」
「すごいじゃん」
「自慢していいっすか?俺がいたバンド、こないだメジャーデビューしたんす」
「マジ?町田じゃ有名だった?」
「関東のハコはだいたい回りましたけど、やっぱ本拠地はキモノ・マーケットっすよ」
「マジマジ?やべえキモノつったら地元いた頃あのあたり庭よマジ」
山口さんの地が出てきた。ポケットから携帯を出し、メールを打ち始める。
「石川さんのバンド、名前なんての?地元のダチに聞いてみるわ」
「JET BLACKっすよ」
「ジェットブラック、ね」
山口さんはカタカナでそう言ってメールを送信した。
文化部の部室棟は、校舎からさほど遠くないところにあるが、なにしろ広い敷地だけに結構な距離だ。到着前に山口さんの携帯に返信が届いた。
「マジ?マジマジ?町田のバンドつって、地元じゃめっちゃ有名らしいじゃん、ジェットブラック。今メールした奴の妹が大ファンで、ギターの人が脱退したときマジ泣きしたって」
「そのギターの人が俺っす」
「なにそれやべえ、マジやべえ」
山口さんはまた猛烈なスピードでメールを打つ。
「ウチの学校にギターの人いる、ってメールしちった」
山口さんがにんまり笑って俺を見る。
「あんまし広めんでくださいよ」
俺は苦笑して答えた。脱退したギターのアイは消息不明、というのが理想だったのだが、一部のファンの間で伝説になればいいか。
部室棟の方から、ギターの音が聞こえてくる。おや、と思ったが、なんとJET BLACKのStraight Flashだ。荒削りだが、かなり正確にトレースしている。タブ譜など公開しているわけもなく、耳コピでこれだけできるとはなかなか馬鹿にしたものでもない。
「西川はギター弾いてる時だけはおとなしいからな」
「これ、俺のいたバンドの代表曲っす」
「マジ?なんか偶然多すぎて笑っちゃうな」
山口さんがゲラゲラ笑う。
「けっこう上手いっすよ、西川」
「さすがミュージシャン」
軽音楽部の部室の戸は、スプレーで精巧な落書きがしてある。グラフィティとかいうやつか。
「すぐにでも消せって言ってるんだが」
そういえば、俺達が根城にしていた例の部室も、ミギの描いた絵で埋め尽くされていた。俺達の中ではもっとも大人だったミギは、退学届を出す前にすべて壁を塗って修復したのだが。
「西川、少し音小さくしろ」
山口さんはそう言ってドアを叩き、そしてドアを開ける。俺は山口さんに続いて中に入った。
「西川、タバコ吸ってないな?」
西川富士夫、話の通り見事な金髪と欧米系の顔である。
「うっせ、タバコ吸うなはミノルさんだげだがら関係ねえず」
西川は俺をじろりと見て睨みつける。
「なんだ、新入りだがした」
「西川、石川さんは今年度からここの顧問だ。ギターがめちゃくちゃ上手いんだぞ」
山口さんがニヤニヤして西川をいじる。
「け、なんぼじょんだんだがしゃねげっと、いい気になんなよ新入り」
話のとおり、容姿にまったく似合わぬ訛りっぷりだ。櫻乃を彷彿とさせる。
「JET BLACKのStraight Flashだろ?俺のほうが数億倍上手いぞ」
西川の挑発を受け流し、俺は手を差し出す。
「ギター、貸してみ」
西川は俺を睨みつけたままだが、けっこう素直にギターを肩からおろし、俺に差し出した。腕を見てやろうというつもりだろう。
「ほぉ、本物じゃんか」
サンバーストのレスポールだ。さっきの音でチューニングが若干狂っているのがわかっていた俺は、鼻歌交じりでペグを回す。そしてアンプのボリュームを上げてディストーションを二三回踏む。西川を見やると、少し感心したような表情に変わっている。
「お前ダウンピッキングだけだろ?この曲は、アップとダウンを徹底的に使い分けるんだ」
俺がリフを刻み始めるとアンプから轟音が鳴り響く。山口さんが耳を押さえた。音を小さく、と言っているようだ。俺はカッティングをやめる。
「あとな、ソロんとこ、全然チョーキングがなってないな」
数えきれないくらいの回数弾きこなした曲だ。目をつぶっていても指は勝手にフレットの上を動き回る。
「サービスだ」
脱退ライブでコトブキと絡んだときの変調ソロを披露してやったとき、部室のドアが開いてベースギターが入ってきた。
「富士男、なにすごく上手になった…あれちがう」
身長がベースギターとさほど変わらない女子生徒だった。
「大泉、石川さんが今年度から軽音部の顧問になるからな。この通りギターはプロだから、教えてもらえ」
「ベースはあんまし上手くないっす」
西川にギターを返しながら俺は笑った。大泉という女子生徒は、目を丸くして俺を見ている。
「石川先生って、宗家の婿さんの…ギター上手いんだ」
「西川、おまえなかなかスジいいよ。今度タブ譜コピーしてやるから、練習しな」
西川は俺をまじまじと見ている。睨んでいない。
「あんた…まさか…アイ…なんで…」
「まったく今日は偶然が重なる日っすね山口さん。こんなトコで身バレですよ」
山口さんが笑った。
「まさかね、西川がジェットブラック知ってるとかね」
「え?なになに?富士夫の好きなJET BLACKでしょ?DVD見せてくれたよね出たばっかの」
大泉は目をぱちくりさせる。事態がよくわかっていないのかもしれないし天然ボケなのかもしれない。
「富士男、上手くなたなんねが」
「ギターだけは真面目だもんねあんた」
今度は秋葉がやって来た。なるほど身体のでかさは超高校級だ。山口さんよりだいぶ背が高い。隣の女子生徒も秋葉の隣にいるから小さく見えるが、実際は俺より身長が高いようだ。
「あと國井が来れば揃うな、石川さんが今年度からここの顧問だ」
山口さんが俺を二人に紹介する。秋葉はキタのような悠然とした雰囲気を持っている。女子生徒の方も大人っぽい雰囲気で、制服を着ていなければ高校生には見えないだろう。
「あぁ、宗家の婿さんか…」
「沖津、石川さんはプロのミュージシャンだった人だからな、教えてもらえ」
「おきつ、珍しい名字だな」
「この辺りじゃ珍しくはないです」
沖津はクールな感じで受け流す。
「パートはなによ?」
「ドラムです」
「それは専門外だな、頑張ってくれ」
「はいわかりました」
俺は秋葉に水を向ける。
「秋葉は楽器やらないのか」
「興味ないっす」
「あんたピアノ弾けるじゃん」
秋葉はぶっきらぼうに答えたが、沖津がツッコミを入れた。
「あれは指がよく動くようにってやってたんだ、変化球のためだ」
「ほう、俺がいたバンドのベーシストが同じ事言ってたよ。そいつも高校時代ピッチャーやってて、指がよく動くようにベースの練習も欠かさなかったって」
「ほほーなるほど」
山口さんが感心する。そこへ、最後の大物が女連れで入ってきた。
「富士男にしちゃ上手すぎると思ったんだ、やっぱあんたか。聞いてるよ、元バンドマンらしいなぁ」
「國井、口のきき方に気をつけろ」
山口さんが少し声を荒げ、國井がハイハイと答える。
「みーさん、この人が宗家の婿?」
國井が連れている女子生徒は、沖津と違った意味で女子高生らしくない。かなりの美人で櫻乃とどっこいだが、化粧ばっちりなのである。
「五十嵐、厚化粧して学校来んなって言ってるだろ」
山口さんは心底呆れ顔である。
「だって家の手伝いするんだもーん」
「優菜、俺をみーさんて呼ぶのやめろ」
國井が大泉の手を払いのけて言う。彼女じゃないのか。
「婿さん、ウチ駅前でジョークってスナックと五十嵐酒場って居酒屋やってるから来てねー」
なるほど家の手伝いとはそういうことか。
「残念ながら下戸でね。それといちおう、先生と呼ぶようにな」
俺は苦笑して五十嵐を見やった。五十嵐はすみませ~んと明るく謝る。きっとなにも考えていないのだろう。
「俺がここの顧問になることになったんで、まぁこれからよろしく頼む」
学院の札付き連中に向かって俺は頭を下げた。國井はそっぽを向き、秋葉は顎を引いて頭を下げ返したことにしている。
「お、お願いしまっス!」
驚いたことに最初敵意をむき出しにしていた西川が、腰を直角に折って俺に頭を下げた。
「お、俺の、神様だっけんだ、JETのアイ…ありがどさまっす、ありがどさまっす!」
西川のあまりの豹変に俺も山口さんもちょっと引いたが、俺は気を取り直して西川に声をかけた。
「西川、いいからいいから、俺は神様なんかじゃないし。ホントお前、スジがいいから、がんばれよ。教えてやれることは教えるから」
「石川先生ってホントのミュージシャンなんだー」
大泉が明るく言う。
「おまえ、JET BLACKは先月の末にメジャーデビューしたんだ、プロだ」
西川の表情がキラキラ輝いていた。
「そんなプロがなんでこんなとこにいるんです?」
沖津がクールに尋ねる。少し皮肉も混じっているようだが。
「去年の9月のライブで、アイ…石川先生はJET BLACKば脱退するて発表したなよ。入れ替わりに今のギターのコトブキさんが入って、先月メジャーデビュー」
西川が訛りたっぷりですらすら解説する。
「宗家に婿入りするために、バンドを、辞めた」
大泉が的確な答えを出す。國井があからさまに顔をしかめた。
「まぁ勝手にすればいい。俺は俺のやりたいようにやる」
國井はそう言い捨てて、部室を出て行く。五十嵐が後を追った。
「先生、知ってるんだよね、ミノルさんと雪江様のこと」
沖津が俺をしっかり見据えて尋ねた。
「当たり前だ。そしてなんの問題もない。俺が雪江と結婚した、それだけが事実だ」
沖津はやはり実年齢にそぐわない落ち着き払った表情で俺を見る。そしてぽつりとつぶやいた。
「自分の女の昔の男のことなんか関係ない、か。自信あんだね、雪江様に愛されてるって」
今度は少し微笑んでいる。その隣では秋葉が表情をまったく変えず、無言で立っている。
「沖津、君は本当に高校三年生か?どうもそうは見えないし、そういう言い方も高校生とは思えない」
俺は思わず本音を漏らす。山口先生が吹き出した。
「沖津は姐御とか姐さんって呼ばれてるからな…さすが初対面一発で見ぬいたな石川さん」
「センセ、いいかげんにして」
沖津が眉を吊り上げる。実年齢より老けて見えることを、自分でも気にしていたようだ。
「どっかの店で、奥様ってやっだごどあっけな」
秋葉がぼそっとつぶやき、今度は俺が吹き出す。沖津は素早く秋葉の脇腹にひじを食らわす。しかし秋葉はびくともしない。
「いらねごど語んな、賢也!」
沖津が真っ赤になって秋葉を叱責する。沖津はこれまで流暢な標準語イントネーションだったが、感情が高ぶるとネイティブな訛りが出るのだろう。このへんは雪江も同じだ。秋葉は少し口元を緩めることでごめんと言っている。
「なかなかいいカップルだな」
俺の言葉に沖津がまた赤くなり、秋葉を引っ張って部室を出て行く。俺は大泉にベースギターを見せてくれるように頼んだ。大泉ははぁいと答えて、缶バッジだらけのソフトケースからベースを引っ張り出す。
「ん、まぁ初心者・中級者用ってとこかな」
フェンダーのジャズベースのボディをコピーしたモデルだが、ボディは梅雨時のアマガエルのような蛍光グリーンにペイントされ、ヘッドも同じ色だ。
「キレイでしょ?私この色好きなんです」
好きな色に塗ってもらって一向にかまわないのだが、少々目に痛い。
「大泉は決して身体が大きくないよな。それでレギュラースケールのベースはきつくないか?」
俺はキタの奏法を思い出してちょっとフィンガーピッキングをしてみる。
「石川先生、ベースも弾ぐいながっす」
西川が感嘆の声を上げる。
「弾けることは弾ける。でも上手くはないよ。俺は弦が張ってあるものは弾きたくなるんだ。石川のばあちゃんが三味線教えてくれるって言ってるから、今度教わる」
「ふぇー」
大泉はわけの分からない声を出した。
「あのさ、二本目のベースを買うなら、ショートスケールのにしといたほうが、君のような身体の小さい人には合ってると思う。いっそスタインバーガーみたいに、ボディも最小なやつにしたらいい」
大泉にベースを渡して、俺はアドバイスをしてやった。大泉はスタインなんとかって何と西川に尋ねている。山口さんはほほーと言って感心している。
「石川さん、ほんとプロだわ」
俺達が部室を出ていくと、西川と大泉のセッションが始まった。少し前に流行ったポップな曲だ。大泉のベースがかなりまともであることに少し驚く。
「あの二人は、ほんとに軽音部です。素人から四、五歩踏み出してますね」
「プロだと、素人から何歩歩きゃいいのさ」
山口さんが笑う。
「たぶん…音楽でメシ食おうと決心した奴が、プロなんですよ。その点では私はプロじゃない」
俺はミギたちの顔を思い出しながら言った。
「なるほどな。俺も陸自には二任期居たけど、曹になろうとは思わなくてさ、他になんかあるんじゃないかって。ここに来て初めて、ガキどもを導く仕事が俺の天職だって思ってるわ」
元ヤン元自の山口さんが、いい顔で笑った。
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