Straight Flash

市川 電蔵

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Scene 37

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「佐藤があーくんを褒めてたわ、いい教師になるだろうって」
週末の夕食の食卓で、母がそう切り出した。父はおや、という顔で俺と母を見比べる。
「なになにその話」
雪江が相変わらずもりもりと飯を食いながら聞く。
「こないだのホームルームでね、あーくんが自分のプロフィールを生徒に話したんだって。バンドの事とか結婚のこととか。その話を、ちゃんとした教訓でまとめた、って」
「ほう、なんてまどめだなや」
父もばくばく飯を食う。
「あぁ、無理矢理っぽかったけど、人はひとりじゃ生きていけないんだ、って。バンドのメンバーとはしゃいでた話をそこで落としたと」
「かっこいいじゃん」
雪江がにっこりと俺に笑いかける。
「むかしお父さんに言われた、流れを絶やさないって話を俺なりに解釈してみたんですよ」
俺も飯をばくばく食って言った。とりあえず米が美味いのだ、この家のメシは。
「ほだなごど言ったっけがな」
父は少し照れて味噌汁を飲みほす。そして町会の集まりに顔を出すと言って食卓を離れた。
「あーくんはいい教師になるべ。ばぁちゃん扱いもじょんだがら」
祖母が茶をすすりながら笑う。
「そういや明日、西川が来るんですって?ギター習いに。あの喧嘩屋をよく手懐けたもんだわ」
母も食事を終えて笑いながら言った。
「あぁ、本楯のハーフの子か。目立つよねーあの子」
雪江は三杯目を盛っている。
「西川の爺さまと婆さまだらよっくおべっだげっと、孫ばおいで娘逃げでったとぎなの、おいおい泣いっだっけんだじぇ、あいの子な孫おいでいがっだてなじぇしていいがわがらねはー大奥様ーて」
よほどの大事件だったのだろう。
「ほうほう」
「んだげ諭したなよー、このんぼこなの、なにわれごどしたなや、がんばって孫ばおがさんなねべしたー、って」
だいぶ方言に慣れた俺でも少し理解できないところがあったので、俺は雪江を振り返った。
「子供にはなんの罪もない、頑張って養育しなさい、って」
雪江が察して通訳する。
「でも仕方ないとこもあるわ。この田舎であの容姿じゃ、いじるなって方が無理よね。帰省してきたとき見かけたけどきれいな金髪に染めてたし。もとが色素薄いから、きれいに染まるのよねコレが」
雪江はおかしなところに感心する。
「根っこまで毒されてないってのは、あの子が爺ちゃんと婆ちゃんの言うことだけは絶対にきく、ってとこでわかった。並外れた孝行孫なのよ、あれでいて。西川の爺ちゃんは厳しい人だし、男の子が喧嘩するくらいあたりまえのことだって言ってたから、喧嘩は止めなかった。でも、盗みとか薬物とかは絶対許さない人。だから入学を許可したの」
俺はそれを聞いて素直に感動する。親孝行など真似事もしたことのない俺には耳の痛い話だが。
「たしかに、ギターのことに関してはすごく真面目でしたよ。あの音はどうやって出す、エフェクターはあと何が要る、質問攻め。だから、詳しく教えるから家に来いって言っちゃいまして」
「別にいいのよ、そんなこと。私が学校の外ではただの母親だって見せるのもいいし。安孫子だって一番荒れてる時ここに連れてきて、補習してあげたんだから」
それは初耳だ。
「オニシロウちゃんが来たの憶えてるわぁ。私小学生だった。陸兄も付き添いで来てたよね」
「荒木は安孫子の親友だもん。高校から寒河江に来たから、安孫子が中学時代どんなのか知らなくて、気軽に声かけて友達になっちゃったって。安孫子も本当は寂しかったのよ、誰も話しかけてくれなかったろうし」
「人はひとりでは生きられないもんね、あーくん」
雪江が飯を食い終わり、ごちそうさまと手を合わせてから俺に笑いかけた。
次の日、朝飯を食い終わって家族でくつろいでいるところで玄関のチャイムが鳴った。雪江が玄関へ行く。少しして、ギターケースを背負った西川と大泉を伴って居間へやって来た。西川は学校では金髪をオールバックで固めているが、今日は洗いざらしのままだ。
「お、おじゃまします」
「失礼しまーす理事長ー」
西川は緊張しているようだが、大泉はいつものマイペースだ。
「はいいらっしゃい。私は家では理事長じゃないよ」
母が笑う。
「富士男、爺さま元気だが?」
父も笑って声をかける。祖母が言っていたように、西川の祖父母とは旧知らしい。西川がいっそう緊張してハイッスと大声を上げ、祖父に持たされたという土産のさくらんぼを差し出した。
「雪江様の家さ呼んでもらったなて優菜さゆったら、悔しがるべねー」
大泉が雪江を見てにこにこしている。普段軽音楽部の部室で話すときの大泉は普通に標準語で話していたが、今日はローカルモードのようだ。
「厚化粧やめたら来てもいいって言っといて」
雪江も笑って大泉の頭をなでる。
「ほれ、はやぐギター習うだくてしょうがないべ、行け行け」
父が笑って、手を振って追い出す仕草をする。爺さまのどごさまだいぐがらな富士男、と声をかけた。
俺は西川と大泉を連れて書斎へ行く。二人は歩きながら周りをきょろきょろ見回した。
「やっぱりすばらしぐでっかいお屋敷だごどー」
大泉が感嘆する。
「俺も最初ビビった」
俺は二人を振り返って笑う。
「旦那様は何度もおら家さ来たすけわがったげっと、理事長はぜんぜん感じが違う」
西川が少し緊張を解いて笑った。
「俺も最初びっくりした。お母さんが理事長なのを見たのは4月からだからな」
二人を書斎へ招き入れる。俺のギターとマオカラーのスーツを見て、西川が歓声を上げた。
「あ、アイのスーツ、これ本物だべした!白のレスポールも!」
おれがその本人なのだから当たり前なのだが。
「俺のギター、弾いてみるか?」
「お、お願いします、さわらせでけろっす!」
西川の表情から、最初に出会った時の凶悪さが消え失せている。夢中でミニカー遊びに興じる男児のような表情だ。大泉はその姿を目を細めて見ている。大泉は、容姿のせいでガイジンといじめられていた西川を子供の頃からずっとかばっていたのだと母が言っていた。背は小さいが、包容力のある女の子なのだと。
「西川のギター、もう一回見せてもらうよ」
俺のギターに夢中な西川はどうぞっスと答える。俺は西川のギターケースを開ける。部室でも見たが、西川の年齢に似合わずけっこう使い込まれているケースだ。西川のレスポールはサンバーストカラーだ。抱えて弦を弾く。さすがに生でもボディの鳴りは申し分ない。だがしかし。だがしかし。だがしかし。
俺は西川のギターをしげしげと観察する。まるで石川家にやって来た小川のように、細部まで観察した。そしてひとつの仮説に達する。
「西川。これ、もしかして本物の五十八年か」
「…んだっす」
西川は俺のギターを弾くのをやめて答える。だが、俺に背を向けたままだ。
「中二んどぎ、寒河江さ実の両親来たんだ、いぎなり。爺ちゃんはえらぐごしゃいで、敷居はまたがせねえって怒鳴ったんだげっと。結局、近くの蕎麦屋さ俺ど実の両親だげで行った」
「私も見に行ったっけ」
普段は底抜けに明るい大泉が、陰鬱な表情になった。
「実の母親は、おんおん泣いて謝ったっけ。俺は、親は爺ちゃんと婆ちゃんだど思ってっさげ、もう二度と来ねでけろ、って言ってやった」
西川はそう言って俺に向き直った。
「そうか、お前の事情は理事長に聞いてる。大変だったな」
「さすかえない、ほだなごど。どうでもいいんだ。爺ちゃんと婆ちゃんさえいればしぇんだ俺は」
「私はどうなんなや」
大泉がふくれる。
「いやお前もだげっとよ」
西川も大泉には弱いと見える。
「なえだて、ほだなごどあったっけんだがしたー」
ジュースとお菓子を持って書斎にやって来た雪江が、一部始終を聞いていた。大勢に合わせて、方言バージョンだ。
「富士男くん、中学二年でそごまでゆうって、大人だずねー」
雪江におだてられ、西川がはにかんだ。
「実の父親は、あだりまえだげっと、普通に白人だっけ。日本語はほどんど語らんねみでで、実の母親が通訳したっけ。軍隊をやめでがらアメリカさ帰って、修業してそこそこのスタジオミュージシャンになったんだど。頼むから自分が愛用してたギターを貰ってけろ、ってゆうがら、貰ってやったったっだなー」
西川は無理に笑った。
「どうせ貰ったもんだす、どうせならうまぐひいでみっぺど思ってよ、練習し始めたらけっこうおもしゃくて、ギターって」
「そのスタジオミュージシャンって、なんて名前だったんだ?」
「しゃねっす。確かに名乗りはしたげっと、ジョンだがなんだがってゆたっけべが。憶える気もねっけっす」
西川のギターのセンスは非凡な物があると感じていたが、実の父親のDNAだったか。
「知ってるかもしれんけど、そのギター、家が一軒建つ値段で取引されてるシロモノだからな」
「ほいづは実の母親がゆったっけっす。すばらすぐ高いものだがら、金に困ったら売れって。バカにすんな、おらえは爺ちゃんのさくらんぼ畑あっさげ金になの困らねえってゆってやったっす」
ただ、五十八年はぴかぴかに磨き上げられており、西川も非常に大切に扱っているようだ。
「いやあ、ギター弾きの端くれとして、伝説の一本を触らせてもらってウレシイよ。ありがとう、西川」
ギターを丁寧にケースに戻し、俺は西川に頭を下げる。
「先生、やめでけろっす。俺だて、アイさんのギター触るいなて、思ってもみねっけんだがら、俺のほうが土下座してお礼言わんなねどごだべした」
西川があわてる。雪江と大泉がにっこりと笑った。
俺はコピーをとっておいたJET BLACKの全楽曲のタブ譜を西川に渡す。西川は狂喜して大泉に見せてやっている。それからしばらく、西川への個人レッスンを続ける。雪江は昼食の支度をすると言って部屋を出た。
「大泉も入れよ」
「んだ、春陽、まじゃれ」
「アンプもてこねっけー」
「小さいけど、ベーアンもある」
俺は書斎にしつらえられた物置から小ぶりなベースアンプを持ち出す。
「ベースのやつから貰ったんだ」
「キタさんのがっす?」
JET BLACKの大ファンであるという西川が、ベースアンプをニコニコして眺めている。しまいには顔を近づけて匂いをかぎ始めた。
「キタさんのアンプさシールド差すいなて、幸せもんだな春陽」
西川のファンっぷりはたいしたものだ。
「こないだ部室でやってたあの曲演ってみるか?」
大泉はあのバンドのファンらしい。女性ボーカルで残りのパートがいかつい男というユニットだ。
「先生、あれおべっだの?」
大泉が小さな身体でベースを抱え、フィンガーピッキングで例の曲のベースラインを爪弾く。
「耳コピだがな」
俺は大泉のベースラインに合わせ、リフをカッティングする。
「さすがだねっす」
西川がリードを取り、セッションが始まる。驚いたことに彼らはまた上達している。素人の域は完全に脱していた。
「すごいじゃない、西川、大泉。プロのあーくんに完全についてってる」
書斎のドアを開けて母が入ってきて拍手する。西川が驚いて、演奏をやめた。
「理事長、石川先生ばあーくんなて呼んでだの?」
大泉もネックから手を離して笑う。
「家でと学校は完全に分けてるのよ、ないしょね。でもあなたたち本当に上手。私みたいな素人でも巧いってわかる」
西川はどうもやりにくそうだ。これまでさんざん逆らってきた理事長が手放しで褒めてくれるし、何より家庭にいる理事長は優しい母親以外の何者でもなく、ギャップが激しいのだろう。
「今だけ理事長に戻るわよ。…石川、陵山祭のステージ発表のトリは軽音楽部に任せます。部員の演奏技術を指導し上達させ、必ず成功させるように、以上」
「…かしこまりました、理事長のご期待に添えるよう頑張ります」
俺も教師に戻って拝命する。
「頑張ってねあーくん。さぁさぁ、みんなお昼ご飯食べましょ。いらっしゃい」
理事長が優しい母親に戻って微笑んだ。
昼食は質素だが、高校生が二人加わったことでにぎやかなものになった。
「富士男、ばぁちゃん丈夫だが?」
「ハイっす、おがげさまで丈夫だっす大奥様、婆ちゃんば気にかげでもらってありがどさまっす」
西川はだいぶ緊張がほぐれたと見え、祖母に笑って答えた。
「春陽もじょんだどれ、ベース。いづからやってだの」
雪江が大泉に尋ねる。西川と大泉に合わせて方言全開バージョンだ。
「富士男がギターはじめだどぎから。お前ベースひげて言わっだがら」
「仲がいいもんね、西川と大泉」
母がまぜっかえす。
「結婚するもの」
大泉が照れもせず真顔で言った。西川が真っ赤になったが否定はしない。
「プロデビューしたら結婚するべって言われたもん」
大泉はこともなげに言い、飯を食う。西川はこだなどごでほいづば言うなちゃ、とか言っているがやはり否定しない。
「プロになりたいか」
俺は茶碗を置いて西川に問いかけた。
「すげえ大変だぞ」
「わかってるっす。甘ぐはねぇ、むしろ死ぬほど大変なこどだどはわがってます」
西川も飯を食うのを中断して、正座に直って俺を見た。
「こだなごど言うだぐないげっと、爺ちゃんと婆ちゃんが生きてるうちに、俺、プロになって見せてやっだいのよっす」
西川の目は真剣だった。
「よぐ言った、富士男!お前はたいした男だ!愛郎、お前のつてで何とかしてやれ、しぇーな?」
父が大声で言った。もとよりそのつもりだ。
「指導部にもひとこと言っておくわ。西川の進路指導は石川に任せるって」
母がまた理事長になって言う。
「いづ結婚するいんだべね」
大泉だけがまったく変わらず、もりもりと飯を食っていた。西川も含めて、みなが笑った。
このあと西川と大泉はまじめに練習を続け、結局夕飯も石川家で平らげて帰っていった。俺は西川と大泉がギターを抱えて並んだ写真を撮り、ミギにメールで送った。俺の一番弟子だとコメントを付け、俺が持っていたJETの全曲のタブ譜をコピーしてくれてやったことも付け加えた。そして、相談があるので近々会いに行くつもりだと結んだ。
メールを打って程なくして、携帯が鳴った。ミギからだ。
「アイ、久しぶり」
懐かしい声だ。たもとを分かってからもう半年以上経ったのだ。
「学校の子か?ハーフなんだろうな、男の子のほう。女の子のほうちっちゃいなー、ベースよりちっちゃいんじゃね?」
「なかなかうまいんだよ、これが」
「ほう、アイのお眼鏡にかなうとはよっぽどだな」
「プロを目指すと言ってる」
「頼もしい若者が出てきたねぇ」
「面接してくれないか?東京まで出て行くよ」
「…教師になったな、アイ」
「JETを捨てて教師を選んだ。真剣にやってるつもりだ」
「お前はのめり込むからなぁ。わかった、社長に相談する。また連絡するよ」
「ありがとう、ミギ。電話くれて嬉しかった。俺のことなんかもう関係ないだろうに」
「馬鹿野郎。俺が愛した男を関係ないとはなんて言い草だ。怒るぞマジで」
ミギは本当に気分を害したようだ。電話とはいえ愛した男、とか男に言われると微妙だ。
「ごめん。俺はただ、JETを抜けちゃった人間だから、心苦しくてさ」
「アイはJETの創立メンバーだ。永遠にVIPだよ」
ミギは優しい声で言った。
「本当にありがとう、ミギ」
「気にするな、俺とお前の仲じゃん。それに、写真見てると、この子モノになるかもな。ルックスでボーナスポイントたっぷり乗ってるよ」
「先に言っておくが、訛りがすごいぞ。ルックスとのギャップ」
ミギがそりゃいいやと言って爆笑した。そしてもう一度、社長と相談してまた連絡すると言って電話を切った。
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