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ないないないん -曖昧な存在-
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ドアの前まで来て、立ち止まってしまった。怯んでしまった。まあそりゃね。
私には、というか私にも。要にも。優理にだって。誰だって「友達になろう!」と言ったら友達になれるという時期はせいぜい保育園と小学校低学年の時くらいで、それ以降の友達になったっていうラインがすごくあやふやで定まらないものなのだ。だから、そう。この位仲良くなったらこの位踏み込んでも良いかなっていうのが分からないのだ。
そう考えると、一次関数で表せるものはとても便利だ。数学なんて簡単だ、と思えるなあ。まあ、人間関係はもちろん一次関数では表せないけれど。
私が作っているはずの壁が誰かには見えていなかったり、作っていないはずの距離が誰かには感じられたり。そういうすれ違いを、私はずっと―恐れてきた。
だから、誰かから自分に歩み寄ることが出来なかったのか。そりゃあ、家族からも距離を作られる訳だ。
だけど、今。こんな私に自ら歩み寄って、望まれもしないのに仲良くなりたがった少女が、このドアの向こうにいる。優理の時も、私からでは無かった。
それはもう、変わらない事実でしかなく、悔やんでも仕方が無いのだろう。ならば。この先の事実は、私が作ろう。私が、自ら、望んで。そこにはきっと、望んでくれる人がいると信じて。
自分を信じ、要を信じる。
自分を望み、要に望もう。
1歩歩き出した。またこれからも見続けるであろうドアをゆっくりと開けて。
あぁ、歩み寄る気持ちってこんな感じだったのか、なんて思いながら。はい、ここで真面目パート終了。
「…ばーか。ばかばかばかばか。」
「入ってきた瞬間にそんなこと言われると即座に帰りたくなるな…。」
「はい。ごめんなさい。…なーんかなー親ってやだなー。そう思わない?」
「とても思う。要に同感だよ。……でもまあ、嫌なだけでも無いんだろうねーきっと。ほら、例えば…」
「お小遣いをくれる!とか?」
「お金より……なんかあるでしょ!」
「例えば?」
「……よく言うのは愛、だよね。私はそのふたつを並べることに意味を感じないけれど。」
「あなたは、浅手要さんと永遠の愛を誓いますか?」
「いいえ。お断りいたします。」
「丁寧に振られたぁーっ!」
「そりゃ、ねえ。」
「いやいや、そんな当たり前みたいな顔して言ってるけど、そんなんじゃ結婚式できないよ?正確に言えば、できるけど空気を乱すムードメーカーになっちゃうよ?全く、冷めてるね。」
「お断りしたのはただ単純に要だからだし。冷めてるのも要だからだよ。」
少しムスッとして私はそう言う。久しぶりのツンデレサービスである。
「そんな悲しいこと言わないでよ!ドMキャラに定評のある、特に最近は部活の顧問から定評をいただいている要でも流石に悲しい…!」
「そんな定評をいただかないで。」
「そんなとはなんだ!その定評をいただいてからというもの、あの恐ろしい顧問がニコニコしながら話しかけてきてくださるようになったんだ!素晴らしい快挙だと思わない?」
「おぉーそれは凄いかも。ちなみにどんな話題を振ってくるの?」
「んー大体はドM根性の話かな。」
「要とセットで即座に部活から追放しよう。」
「いやいや、その2人が居なくなれば、部活は成り立たない!私は次期部長候補だしな!」
「副部長に喧嘩を売っているの?」
「あー…そういえば副部長だったね。」
「そういえばって…。」
そう、恥ずかしくてあまり公表していないのだけれど、一応私はテニス部副部長である。けれど私は、要にも忘れられるレベルで副部長っぽさが無いのだ。
「…あ、そうだ。優理にはもう話したんだけど…九にも言ってこうと思ってたことがあったんだ。」
少し口調が重くなった、気がした。私はその言葉に少し傷つく。優理には話してたのかあ…。まあそれは、歩み寄らない私が悪かったよね。そう考えて、納得した私は要の次の言葉を待った。
私には、というか私にも。要にも。優理にだって。誰だって「友達になろう!」と言ったら友達になれるという時期はせいぜい保育園と小学校低学年の時くらいで、それ以降の友達になったっていうラインがすごくあやふやで定まらないものなのだ。だから、そう。この位仲良くなったらこの位踏み込んでも良いかなっていうのが分からないのだ。
そう考えると、一次関数で表せるものはとても便利だ。数学なんて簡単だ、と思えるなあ。まあ、人間関係はもちろん一次関数では表せないけれど。
私が作っているはずの壁が誰かには見えていなかったり、作っていないはずの距離が誰かには感じられたり。そういうすれ違いを、私はずっと―恐れてきた。
だから、誰かから自分に歩み寄ることが出来なかったのか。そりゃあ、家族からも距離を作られる訳だ。
だけど、今。こんな私に自ら歩み寄って、望まれもしないのに仲良くなりたがった少女が、このドアの向こうにいる。優理の時も、私からでは無かった。
それはもう、変わらない事実でしかなく、悔やんでも仕方が無いのだろう。ならば。この先の事実は、私が作ろう。私が、自ら、望んで。そこにはきっと、望んでくれる人がいると信じて。
自分を信じ、要を信じる。
自分を望み、要に望もう。
1歩歩き出した。またこれからも見続けるであろうドアをゆっくりと開けて。
あぁ、歩み寄る気持ちってこんな感じだったのか、なんて思いながら。はい、ここで真面目パート終了。
「…ばーか。ばかばかばかばか。」
「入ってきた瞬間にそんなこと言われると即座に帰りたくなるな…。」
「はい。ごめんなさい。…なーんかなー親ってやだなー。そう思わない?」
「とても思う。要に同感だよ。……でもまあ、嫌なだけでも無いんだろうねーきっと。ほら、例えば…」
「お小遣いをくれる!とか?」
「お金より……なんかあるでしょ!」
「例えば?」
「……よく言うのは愛、だよね。私はそのふたつを並べることに意味を感じないけれど。」
「あなたは、浅手要さんと永遠の愛を誓いますか?」
「いいえ。お断りいたします。」
「丁寧に振られたぁーっ!」
「そりゃ、ねえ。」
「いやいや、そんな当たり前みたいな顔して言ってるけど、そんなんじゃ結婚式できないよ?正確に言えば、できるけど空気を乱すムードメーカーになっちゃうよ?全く、冷めてるね。」
「お断りしたのはただ単純に要だからだし。冷めてるのも要だからだよ。」
少しムスッとして私はそう言う。久しぶりのツンデレサービスである。
「そんな悲しいこと言わないでよ!ドMキャラに定評のある、特に最近は部活の顧問から定評をいただいている要でも流石に悲しい…!」
「そんな定評をいただかないで。」
「そんなとはなんだ!その定評をいただいてからというもの、あの恐ろしい顧問がニコニコしながら話しかけてきてくださるようになったんだ!素晴らしい快挙だと思わない?」
「おぉーそれは凄いかも。ちなみにどんな話題を振ってくるの?」
「んー大体はドM根性の話かな。」
「要とセットで即座に部活から追放しよう。」
「いやいや、その2人が居なくなれば、部活は成り立たない!私は次期部長候補だしな!」
「副部長に喧嘩を売っているの?」
「あー…そういえば副部長だったね。」
「そういえばって…。」
そう、恥ずかしくてあまり公表していないのだけれど、一応私はテニス部副部長である。けれど私は、要にも忘れられるレベルで副部長っぽさが無いのだ。
「…あ、そうだ。優理にはもう話したんだけど…九にも言ってこうと思ってたことがあったんだ。」
少し口調が重くなった、気がした。私はその言葉に少し傷つく。優理には話してたのかあ…。まあそれは、歩み寄らない私が悪かったよね。そう考えて、納得した私は要の次の言葉を待った。
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