7 / 14
Episode.1 目覚めた先
◇6
しおりを挟む
「おいセラ?俺、まだ君にお嬢さんのこと伝えてなかったよね?なんでここにいるのかな?」
「適当に歩いてたら着いたんだよねぇ。やっぱり女の子は髪長いほうがいいねぇ」
「適当に、って…はぁ、お願いだから大人しくしてくれよ。これからお嬢さんに説明しなくちゃならないんだからさ」
「はいはーい。フィスさぁ、もう少し肩の力抜いたら?肩凝っちゃうよ?」
「誰のせいだと。あ、お嬢さん食べられたんですね。体調はどうです?顔色はさっきよりいいですね」
ポンポンと会話を弾ませる二人に少し呆気に取られながら待っていると、彼(フィスと呼ばれていた方)が大きな溜息をついてから、くるりとティアシェの方に向き直る。
「大丈夫です。助けて頂いてありがとうございました」
一度ベットから立ち上がって、きちんとした礼を取る。頭は少しはぼうっとしているが、身体が覚えていてくれたようでふらつくことはなかった。最後に、にこりと柔らかく微笑めば作法は完璧な筈である。
「申し遅れましたが、私、ティアシェ・ルシフェンと申します。初めまして」
そういえば、死んだ事になっている筈の身だし、家名まで名乗る必要はなかったな、と。少し後悔しながらも反応を伺うと、フィス、セラ、と呼ばれた二人はパチリパチリと目を瞬かせていて。
「ルシフェンって、うっそぉ!?どこかの貴族かだとは思ってたけど……。まさか本物のお姫様だったなんて……」
「俺、お嬢さんとか言っちゃったんだけど…」
「いえ、諸事情あって今は王族とは関係ない身ですし。あの、気にせずに──」
狼狽える二人に慌てて説明し、平気です、と言いたかったのだけれど、そこでぐらりと視界が回る。運が悪い事に、シーツか何かに足を取られそのまま体勢を崩してしまった。
あぁ、やってしまいました、と冷静な部分で考える。あまり言うことを聞いてくれない身体では上手く立て直すことも出来ず、そのまま床に倒れる事を覚悟した。
諦めて痛みに耐えようと、身体を硬くさせぎゅっと目をつぶって待つこと少し。
しかし、彼女が味わったのは痛みではなく少しの浮遊感。
「熱があるのだろう。立たなくていい。大人しくしていろ」
それでも会話は出来る、と上から降ってくる声に小さく頷くと、静かにベットの上におろされる。きつく閉じていた目を開けてみれば、そこにいたのは二人よりも深い赤を持ったその人で。ありがとうございます、と礼を言い、言葉に甘えてベットに座っていることにした。
「さて、色々と話すことはあるんですけど───」
にこり、と親しみを感じる笑みを浮かべて、金髪赤目の──フィスはここがどこなのか、どうしてティアシェが生きているのかなどを説明してくれた。
予想通り、ここはエルフェリル帝国…の軍艦、らしい。海を渡って、国に帰ろうとしていた最中に、ティアシェが飛び降りた音に反応して拾ってくれたそう。
「で、拾ってくれた方っていうのが、陛下なんです」
フィスが指し示した先を辿ると、どこから用意したのか椅子に座ってこちらを見ている、先程も助けてくれた人で。
二度も助けてくれたらしい彼に、もうもう一度礼を言おうと口を開いて……閉じた。
───陛下?
「適当に歩いてたら着いたんだよねぇ。やっぱり女の子は髪長いほうがいいねぇ」
「適当に、って…はぁ、お願いだから大人しくしてくれよ。これからお嬢さんに説明しなくちゃならないんだからさ」
「はいはーい。フィスさぁ、もう少し肩の力抜いたら?肩凝っちゃうよ?」
「誰のせいだと。あ、お嬢さん食べられたんですね。体調はどうです?顔色はさっきよりいいですね」
ポンポンと会話を弾ませる二人に少し呆気に取られながら待っていると、彼(フィスと呼ばれていた方)が大きな溜息をついてから、くるりとティアシェの方に向き直る。
「大丈夫です。助けて頂いてありがとうございました」
一度ベットから立ち上がって、きちんとした礼を取る。頭は少しはぼうっとしているが、身体が覚えていてくれたようでふらつくことはなかった。最後に、にこりと柔らかく微笑めば作法は完璧な筈である。
「申し遅れましたが、私、ティアシェ・ルシフェンと申します。初めまして」
そういえば、死んだ事になっている筈の身だし、家名まで名乗る必要はなかったな、と。少し後悔しながらも反応を伺うと、フィス、セラ、と呼ばれた二人はパチリパチリと目を瞬かせていて。
「ルシフェンって、うっそぉ!?どこかの貴族かだとは思ってたけど……。まさか本物のお姫様だったなんて……」
「俺、お嬢さんとか言っちゃったんだけど…」
「いえ、諸事情あって今は王族とは関係ない身ですし。あの、気にせずに──」
狼狽える二人に慌てて説明し、平気です、と言いたかったのだけれど、そこでぐらりと視界が回る。運が悪い事に、シーツか何かに足を取られそのまま体勢を崩してしまった。
あぁ、やってしまいました、と冷静な部分で考える。あまり言うことを聞いてくれない身体では上手く立て直すことも出来ず、そのまま床に倒れる事を覚悟した。
諦めて痛みに耐えようと、身体を硬くさせぎゅっと目をつぶって待つこと少し。
しかし、彼女が味わったのは痛みではなく少しの浮遊感。
「熱があるのだろう。立たなくていい。大人しくしていろ」
それでも会話は出来る、と上から降ってくる声に小さく頷くと、静かにベットの上におろされる。きつく閉じていた目を開けてみれば、そこにいたのは二人よりも深い赤を持ったその人で。ありがとうございます、と礼を言い、言葉に甘えてベットに座っていることにした。
「さて、色々と話すことはあるんですけど───」
にこり、と親しみを感じる笑みを浮かべて、金髪赤目の──フィスはここがどこなのか、どうしてティアシェが生きているのかなどを説明してくれた。
予想通り、ここはエルフェリル帝国…の軍艦、らしい。海を渡って、国に帰ろうとしていた最中に、ティアシェが飛び降りた音に反応して拾ってくれたそう。
「で、拾ってくれた方っていうのが、陛下なんです」
フィスが指し示した先を辿ると、どこから用意したのか椅子に座ってこちらを見ている、先程も助けてくれた人で。
二度も助けてくれたらしい彼に、もうもう一度礼を言おうと口を開いて……閉じた。
───陛下?
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
逆ハーレムを完成させた男爵令嬢は死ぬまで皆に可愛がられる(※ただし本人が幸せかは不明である)
ラララキヲ
恋愛
平民生まれだが父が男爵だったので母親が死んでから男爵家に迎え入れられたメロディーは、男爵令嬢として貴族の通う学園へと入学した。
そこでメロディーは第一王子とその側近候補の令息三人と出会う。4人には婚約者が居たが、4人全員がメロディーを可愛がってくれて、メロディーもそれを喜んだ。
メロディーは4人の男性を同時に愛した。そしてその4人の男性からも同じ様に愛された。
しかし相手には婚約者が居る。この関係は卒業までだと悲しむメロディーに男たちは寄り添い「大丈夫だ」と言ってくれる。
そして学園の卒業式。
第一王子たちは自分の婚約者に婚約破棄を突き付ける。
そしてメロディーは愛する4人の男たちに愛されて……──
※話全体通して『ざまぁ』の話です(笑)
※乙女ゲームの様な世界観ですが転生者はいません。
※性行為を仄めかす表現があります(が、行為そのものの表現はありません)
※バイセクシャルが居るので醸(カモ)されるのも嫌な方は注意。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる