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第五章 破滅を招くもの
415 アンリカ・デベッセ
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南海の戦艦は一路南へとしばらく進んでいたが、やがて半島を回り込んで西に進路を変える。
甲板にいると風の精の翼がキラキラと輝いて見えるので子ども達が大喜びだ。
「あの……」
「なんですかな?」
大使は相変わらずご機嫌だ。
「ずっと気になっていたんですけど、この船の周囲にいるのって魔物ですよね?」
「ほう! それに気づくとはさすがですな」
やっぱりそうだったのか。
強い魔力の気配と船よりも大きな影が波の下に見え隠れしているんでずっと不安だったんだ。
恐ろしいのは、海にいるらしい魔物の気配がひどく掴みにくいということだ。
海自体にほんのりと魔力があるので、ベール越しに影を見ているような感じがする。
あやふやな存在感がひどく不安を煽るのだ。
「この魔物達は船の護衛なのですよ」
「……船の護衛、ですか」
「ええ、アンリカ女王のご厚意で彼の国の守護神の一部をお借りしているのです」
「なるほど」
なんでもないように応じたが、俺は戦慄した。
この船自身がかなり大きいのに、海のなかにいる魔物はもっとでかいのだ。
下手をするとドラゴンに匹敵する大きさではないだろうか。
こんな怪物を軍事力として使えるなら、南海やアンリカ・デベッセは海での戦闘では無敵に近いだろう。
ちょっと試しに「断絶の剣」の標的として意識を定めようとしたが、海自体がスライムの外皮のような感触を持っていて、剣が届きそうもなかった。
絶対に戦いたくない相手である。
俺達がそんな風に船で過ごしたのは約一日半だった。
とは言え、それは平穏なものとはならなかったのではあるが。
俺もそうだが、勇者たちも何か酒にでも酔ったようなままならない体の感覚を感じていて、船員に相談したら船酔いとのことだった。
船は常にわずかに揺れているので、地上に慣れた人間は調子を崩すのだそうだ。
勇者も子どもたちも最初の半日は元気だったが、すぐに倒れて部屋から出なくなってしまった。
メルリルとモンクはなぜか元気だったので、全員に水を配ったりと忙しく働いていた。
ありがたいことだ。
本来は聖女の力が役に立ちそうなものだが、肝心の聖女自身が目も開けていられない状態だったので、今回は役に立たなかった。
「違うのです。これは攻撃ではなくて、正常な体の反応なのです。だから防ぐ方法がないのです」
とは本人の弁である。
そんなアクシデントもあったが、到着したアンリカ・デベッセは遠くから見ても美しい国だった。
巨大な骨か石材を使っているのか、白く輝く建物が水の上に浮かんでいる。
水路は人工のものではなく天然のものだということだったが、広々としているので、見た目には、大陸の手前にいくつもの島があるように見えた。
その島々の陸地ではなく、水上側に建物が作られているのである。
戦艦から降りて、小舟で奥地へと入って行くと、全ての建物が橋のような構造をしていることがわかる。
白く磨かれた構造物は隙間が多く、たくさんのカラフルな布で飾られていた。
水路の奥に行くと、水のなかに植物が増えて、まるで森の上空を船で進んでいるようにさえ感じられる。
しかも水中には多くの人が普通に行き交っていて、時折上を向いて手を振って来た。
「これが水棲人の都か。水棲人は西にはほとんどいないからなんというか幻想的な種族に見えるな」
勇者が感動したように言った。
「服装も薄手の衣を重ねているので水中で広がって揺れて、とてもきれいです。地上よりも水中で鮮やかな衣装なのですね」
聖女が船べりから水中を眺めて手を振りつつうっとりしたように言う。
どうやら船に酔ったのも落ち着いたようだ。
ふいに船に乗っていた者の一人が水中に飛び込んだ。
飛び込むときに水音一つ、水しぶき一つ立たないのは凄い。
「あれは?」
大使に尋ねる。
「先触れです。水路の門を開けて船が通れるようにしているのです」
「開放の仕組みが水中にあるのですね」
門を開ける仕組みが水中にあるなら、水棲人以外にはなかなか開放が難しいだろう。
辺境の集落は何度も襲われているらしいが、さすがに中心部には簡単には到達出来ないようだ。
「女王のおわします都はこのように地上も華やかですが、本来水棲人は地上の建物はかなり適当に作るのです。彼らにとって地上は寝るためだけの場所なので、あまり頑健には作りません。海賊共にはそこを付け込まれて、寝入っている時間帯に襲撃を受けているのです」
「見張りを置くとかは?」
「水棲人の国はかなり大きく、小さな集落は広範囲に渡ります。全てをずっと守るのは難しいのです」
「頭の痛いところですね」
「腹立たしいことです」
そんな話をしている間にも水門が次々と開き、アンリカ・デベッセの城らしきものがその全貌をあらわにした。
「きれい。……まるでレースで作ったお城みたい」
聖女がほうっと、感嘆のため息を吐く。
真っ白な建材で造られたその城は、あまりにも複雑すぎてどんな風に建てられているのか想像も及ばなかったが、繊細で美しいということだけははっきりとわかった。
代々女王が治めているということだが、そのせいかシルエットは女性的だ。
城の真下に太い柱があり、水上に当たる部分にテラスのようになっている船着き場があった。
そこからなかに入れるらしい。
リーンリーンと、どこからか美しい鈴の音が響き、城に飾られた鮮やかな飾り布が風に翻る。
キラキラと銀色の粉を撒いたような肌をした女官らしき人たちがひらひらの鮮やかな衣装で出迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました。陛下がお待ちかねです」
俺たちと勇者一行、そして研究所から共に脱出したみんなが案内に従って進む。
ただし、海王で別れたウルスと、途中から別行動になったッエッチは共にいない。
俺たちが案内されたのは部屋のなかに池がある場所だった。
池には色とりどりの花が咲き誇り、水中に色鮮やかな魚の姿が見える。
池が美しく眺められる場所に、蔓草かなにかで編まれた体全体を押し包むような丸みのある長椅子が用意されていた。
底部と背もたれ部分にクッションのようなものが敷かれていて、座るとあまりの心地よさに寝てしまいそうになる。
「お飲みものをどうぞ」
「ありがとう」
女官達が全員に飲み物を配った。
固くて大きな何かの実を半分に割ったような容器に赤味かかった飲み物が入っている。
刺さっているのは水辺に生える植物の茎のようだ。
なかは空洞の筒状となっているので、もしかするとこれを使って飲み物を飲めということなのかもしれない。
試しにひと口飲んでみたら、酒ではなく、甘いながらすっきりとした飲み心地のものだった。
果汁に何かを合わせているようだ。
「美味しい!」
「うめえ!」
子ども達は無邪気に喜んでいる。
当然と言えば当然なんだが、どうやら歓迎されているようでよかった。
甲板にいると風の精の翼がキラキラと輝いて見えるので子ども達が大喜びだ。
「あの……」
「なんですかな?」
大使は相変わらずご機嫌だ。
「ずっと気になっていたんですけど、この船の周囲にいるのって魔物ですよね?」
「ほう! それに気づくとはさすがですな」
やっぱりそうだったのか。
強い魔力の気配と船よりも大きな影が波の下に見え隠れしているんでずっと不安だったんだ。
恐ろしいのは、海にいるらしい魔物の気配がひどく掴みにくいということだ。
海自体にほんのりと魔力があるので、ベール越しに影を見ているような感じがする。
あやふやな存在感がひどく不安を煽るのだ。
「この魔物達は船の護衛なのですよ」
「……船の護衛、ですか」
「ええ、アンリカ女王のご厚意で彼の国の守護神の一部をお借りしているのです」
「なるほど」
なんでもないように応じたが、俺は戦慄した。
この船自身がかなり大きいのに、海のなかにいる魔物はもっとでかいのだ。
下手をするとドラゴンに匹敵する大きさではないだろうか。
こんな怪物を軍事力として使えるなら、南海やアンリカ・デベッセは海での戦闘では無敵に近いだろう。
ちょっと試しに「断絶の剣」の標的として意識を定めようとしたが、海自体がスライムの外皮のような感触を持っていて、剣が届きそうもなかった。
絶対に戦いたくない相手である。
俺達がそんな風に船で過ごしたのは約一日半だった。
とは言え、それは平穏なものとはならなかったのではあるが。
俺もそうだが、勇者たちも何か酒にでも酔ったようなままならない体の感覚を感じていて、船員に相談したら船酔いとのことだった。
船は常にわずかに揺れているので、地上に慣れた人間は調子を崩すのだそうだ。
勇者も子どもたちも最初の半日は元気だったが、すぐに倒れて部屋から出なくなってしまった。
メルリルとモンクはなぜか元気だったので、全員に水を配ったりと忙しく働いていた。
ありがたいことだ。
本来は聖女の力が役に立ちそうなものだが、肝心の聖女自身が目も開けていられない状態だったので、今回は役に立たなかった。
「違うのです。これは攻撃ではなくて、正常な体の反応なのです。だから防ぐ方法がないのです」
とは本人の弁である。
そんなアクシデントもあったが、到着したアンリカ・デベッセは遠くから見ても美しい国だった。
巨大な骨か石材を使っているのか、白く輝く建物が水の上に浮かんでいる。
水路は人工のものではなく天然のものだということだったが、広々としているので、見た目には、大陸の手前にいくつもの島があるように見えた。
その島々の陸地ではなく、水上側に建物が作られているのである。
戦艦から降りて、小舟で奥地へと入って行くと、全ての建物が橋のような構造をしていることがわかる。
白く磨かれた構造物は隙間が多く、たくさんのカラフルな布で飾られていた。
水路の奥に行くと、水のなかに植物が増えて、まるで森の上空を船で進んでいるようにさえ感じられる。
しかも水中には多くの人が普通に行き交っていて、時折上を向いて手を振って来た。
「これが水棲人の都か。水棲人は西にはほとんどいないからなんというか幻想的な種族に見えるな」
勇者が感動したように言った。
「服装も薄手の衣を重ねているので水中で広がって揺れて、とてもきれいです。地上よりも水中で鮮やかな衣装なのですね」
聖女が船べりから水中を眺めて手を振りつつうっとりしたように言う。
どうやら船に酔ったのも落ち着いたようだ。
ふいに船に乗っていた者の一人が水中に飛び込んだ。
飛び込むときに水音一つ、水しぶき一つ立たないのは凄い。
「あれは?」
大使に尋ねる。
「先触れです。水路の門を開けて船が通れるようにしているのです」
「開放の仕組みが水中にあるのですね」
門を開ける仕組みが水中にあるなら、水棲人以外にはなかなか開放が難しいだろう。
辺境の集落は何度も襲われているらしいが、さすがに中心部には簡単には到達出来ないようだ。
「女王のおわします都はこのように地上も華やかですが、本来水棲人は地上の建物はかなり適当に作るのです。彼らにとって地上は寝るためだけの場所なので、あまり頑健には作りません。海賊共にはそこを付け込まれて、寝入っている時間帯に襲撃を受けているのです」
「見張りを置くとかは?」
「水棲人の国はかなり大きく、小さな集落は広範囲に渡ります。全てをずっと守るのは難しいのです」
「頭の痛いところですね」
「腹立たしいことです」
そんな話をしている間にも水門が次々と開き、アンリカ・デベッセの城らしきものがその全貌をあらわにした。
「きれい。……まるでレースで作ったお城みたい」
聖女がほうっと、感嘆のため息を吐く。
真っ白な建材で造られたその城は、あまりにも複雑すぎてどんな風に建てられているのか想像も及ばなかったが、繊細で美しいということだけははっきりとわかった。
代々女王が治めているということだが、そのせいかシルエットは女性的だ。
城の真下に太い柱があり、水上に当たる部分にテラスのようになっている船着き場があった。
そこからなかに入れるらしい。
リーンリーンと、どこからか美しい鈴の音が響き、城に飾られた鮮やかな飾り布が風に翻る。
キラキラと銀色の粉を撒いたような肌をした女官らしき人たちがひらひらの鮮やかな衣装で出迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました。陛下がお待ちかねです」
俺たちと勇者一行、そして研究所から共に脱出したみんなが案内に従って進む。
ただし、海王で別れたウルスと、途中から別行動になったッエッチは共にいない。
俺たちが案内されたのは部屋のなかに池がある場所だった。
池には色とりどりの花が咲き誇り、水中に色鮮やかな魚の姿が見える。
池が美しく眺められる場所に、蔓草かなにかで編まれた体全体を押し包むような丸みのある長椅子が用意されていた。
底部と背もたれ部分にクッションのようなものが敷かれていて、座るとあまりの心地よさに寝てしまいそうになる。
「お飲みものをどうぞ」
「ありがとう」
女官達が全員に飲み物を配った。
固くて大きな何かの実を半分に割ったような容器に赤味かかった飲み物が入っている。
刺さっているのは水辺に生える植物の茎のようだ。
なかは空洞の筒状となっているので、もしかするとこれを使って飲み物を飲めということなのかもしれない。
試しにひと口飲んでみたら、酒ではなく、甘いながらすっきりとした飲み心地のものだった。
果汁に何かを合わせているようだ。
「美味しい!」
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子ども達は無邪気に喜んでいる。
当然と言えば当然なんだが、どうやら歓迎されているようでよかった。
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