勇者パーティから追い出されたと思ったら、土下座で泣きながら謝ってきた!

蒼衣翼

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第八章 真なる聖剣

781 港とカップル

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 結局、貝柱以外にもいろいろ食べ歩きをすることになった。
 いや、いいんだが、当初の目的が果たせてないからな?
 勇者よ、眠いから帰るとか言い出すのをやめろ。
 ただ、ルフも相当眠そうだったので、とりあえず勇者達にルフを連れて帰るように任せることにした。
 いっそ単独行動のほうが動きやすいと思って、メルリルにも戻るように言ったのだが……。

「ダスターは、私が言った言葉を理解してない」

 と、怒られてしまった。
 いや、だが相棒だったとしても、べったりとくっついている必要はないからな?

「もうさ、お友達だって結婚したんだから、ダスターも覚悟を決めてメルリルと付き合うべきなんだよ。そういう思わせぶりで、その実、煮え切らないってのが一番駄目」

 俺が一人で動くという話をしてメルリルと揉めていると、横から、モンクがビシッと言って来た。
 メルリルが感謝のまなざしをモンクに向ける。
 最近の女性陣の仲のよさは、俺達男共には理解出来ないぐらいなので、きっとメルリルはモンクに何もかも話してしまっているのだろう。
 いや、モンクの言う通りなんだがな。

「別に俺はメルリルと一緒にいるのが嫌だとかそういう理由で単独行動をしようとしていた訳じゃないぞ? そのほうが慣れているから動きやすいってだけで」
「なら、今後は一緒に行動するのに慣れればいいじゃない」
「うぬ……」

 なるほど、モンクの言うことはいちいち正しい。
 俺は両手を挙げて降参のポーズをしてみせる。
 いわゆる対人における、何も武器を持っていないというポーズだ。

「わかった。その代わり、アルフとルフの面倒をみてやってくれ。あの二人、今にもそこら辺に寝転がりそうな感じだろ? ミュリアもあくびを噛み殺しているし、頼りになるのは、お前と、クルスしかいない」

 モンクがニヤッと笑う。

「ミュリアは私が絶対に守るって約束するよ。アルフと坊やはクルスに任せとけばいいんだよ。あの天然壁男、誰かを守ってるって実感がないと死にそうだからね」
「天然壁男って……お前」

 聖騎士は聞こえてるのか聞こえてないのか、特にこっちに注意を払うことはなく、ルフを抱えあげて、ふらふらしている勇者の進路をさりげなく誘導しつつ、話がまとまるのを待っているようだ。

「まぁいい。とにかく頼んだからな」

 聖女のことは間違いなくモンクが守るだろうし、勇者や子どもを聖騎士が守らないはずもない。
 特に心配することなく、俺とメルリルとフォルテは、勇者一行と別れて別行動を開始した。

 勇者から相談のあった若葉も、今のところ、特に動きはない。
 魔力の吸収も、どこに入っていっているのか、蓄積しているとか、溢れそうだとかいう状況でもないので、放置するしかない。
 よく考えてみれば、アドミニス殿は俺達よりもドラゴンに詳しいはずなので、若葉のこともルフの件と一緒に相談してみるといいかもしれないな。

「ダスター、これからどうするの?」
「今朝も言ったが、まずは港に向かう。そこで聞き込みをしよう」
「わかった」

 メルリルはうなずいて、俺に続いた。
 よく考えたら、メルリルもフォルテも、俺以上に隠密能力に長けているのだから、このメンバーで一番足を引っ張りそうなのは俺だよな。
 それに気づいて、少し戦慄してしまった。

 もしかすると、勇者とうちのパーティを合わせたなかで、一番役立たずって俺じゃないか?

 そんな不安はメルリルに見せるわけにはいかないので、やるべきことに集中する。
 商業区というか、商売人が多く集まっているエリアを抜けると、独特の潮の香りを強く感じるようになった。
 東方では沿岸部を移動することが多かったのですっかり海にも慣れてしまったが、大陸西方には海に降りれる場所が極端に少ないため、西方人は海を知らない人間のほうが多い。

 港近くには、ひと目海を見ようとやって来た、旅人のような風体の人間がかなりいた。
 なんというか、日常から浮いている服装をしているので、すぐにわかる。
 馬車を横付けにして、礼服で海を眺めている貴族の夫婦らしき二人連れ、少しおしゃれをした平民の家族、なかには、馬で港に進もうとして、衛兵かなにかに止められている者もいた。

「こっちは港で、関係者しか入れません。チケットはお持ちですか?」
「いや、見物に来ただけなんだ。だが、船旅に興味はある。船のチケットというのは、どこで購入出来るんだ?」

 警備をしている衛兵に近づくと、止められたので、ついでに聞いてみる。

「あー。よくいらっしゃるんですよ。結婚の記念に夫婦で船旅とやらを経験したいと言って来る人達が」

 衛兵はやれやれと首を振ると面倒そうにだが、説明してくれた。

「まず、ここの港の管理は、我が海洋公の管轄だということはご存知ですか?」
「ああ。有名だからな。しかし、大きな商家に港を貸し出しているとも聞いた」
「そういうのは全部、商品を運ぶ船で、人間は運びません。何を期待しているのか知りませんが、乗ったらがっかりしますよ」

 態度はよくないが、この衛兵、かなり親切だ。
 態度が悪いのは、毎日船に乗せろという連中に責め立てられているからなのかもしれない。

「俺達は、別に無茶を言いに来た訳じゃないんだ。少し小耳に挟んだことがあって、それが本当かどうか知りたいだけで」
「船のチケットが欲しいんでしょう?」
「ああ、だが、普通の船じゃなくって、大聖堂への巡礼船が出てると聞いたんだが」
「あー」

 衛兵はまいったという感じで顔を覆った。

「その話どっから広まっているんだろう。それって、一般向けの船じゃないんですよ。特別運行で、海洋公の指示だけで動かせる船で、一般人には無縁のしろものなんですよ」
「そうだったのか……残念だ。なぁ」

 俺は、衛兵が想定している新婚カップルを装うために、メルリルに話を振った。

「えっ! あ、ええ、残念ね、あなた」

 ぐっ……。
 自分でメルリルに振っておいてなんだが、『あなた』は予想外で、刺激が強すぎた。

「……し、仕方ないな。ああ、どこか港が見える場所で、俺達でも入れるところはないかな? 海が見えるだけでもいいんだが」
「いいですね。仲がよくて。ああ、それなら大丈夫ですよ。あっちの、白い建物があるでしょう? あそこは船の管理塔なんですが、港が見える料理店リストランテが三階にあります。テラス席からは海も港もよく見えますよ」

 少々うろたえた俺だったが、聞きたいことは聞くことが出来た。
 最後の情報は、おかしく思われないように、特に意味もなく聞いただけだが、勇者達が喜びそうだな。
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