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第2章 エンノア編
エンノア 6
「それは!」
驚いたような表情で俺を見つめるゼミアさん、スペリスさん。
「我らにとっては、まことにありがたい話ですが……」
「可能性が高いとは言えません。それでも、私にできることがあるかもしれませんので、どうでしょう?」
「本当に、お手を煩わせてもよろしいので?」
「もちろんです。この食事のお礼になればとも思っています」
「コーキ殿……」
そう言ったまま沈黙するゼミアさん。
他のみんなも黙ってこちらを見つめるだけ。
「……感謝いたします」
「いえ。それで、詳しい話を聞かせてもらえますか?」
「はい、まずは症状についての話を。スペリス頼めるか」
「承知しました。まず、この病は発症当初はそうとは気づかない程度の軽微な症状が続くようです。症状は倦怠感、筋肉痛、関節痛など。発疹が出ている者もおります。また、これは関係のないことかもしれませんが、歯が抜ける者も2名おりました。それと、この病は伝染性の流行り病といったものではないと思われます」
これは……。
俺の家庭医学の知識の中に、思い当たる病気がある。
ただし、あちらの世界での病なので、こちらにその病が存在するのかは分からない。
魔力が関係する病である可能性もある。
けれど、ここは俺の知っている病だと仮定して。
「少し聞いてもいいですか」
「どうぞ」
「エンノアの皆さんの食事について聞きたいのですが」
「食事を? それが病と関係があるのでしょうか?」
「まだ分かりませんが、可能性はあります。それで、今夜のような食事をいつもされているのでしょうか?」
「いえ、今夜のように豪華なものは……。恥ずかしながら食料不足でして」
「あっ、そういうことではなく、いつも肉が中心の食事なのかということです」
「ええ、そうですね。基本的には肉とベオです」
やはりそうか。
「野菜などは?」
「今はほとんど食していません。今年は山の恵みが殊の外少なかった上に、レザンジュとの間で問題があった影響で、外の町から手に入れることもできませんでしたから」
「昨年までは手に入っていたのですね」
「はい、山からもレザンジュからも入手可能でした」
これは、野菜不足が病の原因と考えるのが妥当だろうな。
だとすると、平気な人達とは何が違うのか。
「病に伏せっている方たちと、ここで元気にしている皆さんとの食事に違いなどはありますか?」
「各家庭の食事は異なりますので、皆が同じもの、同じ量を食べているわけではありません。ですが、食材としては変わりはないかと思います」
量による差異だけなのか。
この世界の肉やベオの栄養成分などは分からないから、食事量の可能性もあるけど。
「もちろん、伏せっている者には可能な限り多くの食事を与えております。食欲がない者もいますので、その者たちは多くを摂取できていませんが」
病の者には多くの量を食べさせているのか。
となると、やはり肉とベオに含まれていない栄養が不足しているんだろうな。
「ゼミアさんやスペリスさんは何か異なるものを口にしていませんかね」
「食事となると……」
「スペリスよ、我らは獣の心血を口にしておるぞ」
「ああ、そうでした。ですが、それは食事ではなく儀式です」
「じゃが、口にはしておるじゃろ」
「まあ、そうですね」
「獣の心血? それは動物の血ですよね」
血を飲んでいる!
それじゃないのか。
血にはビタミンも多少含まれていると聞く。
この世界での真偽は不明だが、場合によっては地球の動物以上に含まれている可能性だってある。
「はい、我らがよく食する獣といえば角猪なのですが、その角猪の中でも生後8ヶ月以内のものの新鮮な血を心血と呼んでおりまして、豊猟の儀式としていただいております」
それなら頻度は少ないのか。
「どの程度口にしているのでしょう?」
「1度に飲むのは杯に半分ほどです。頻度としては、手に入った時は毎回いただきますので、10日に1回、多い場合は10日に3回、4回でしょうか」
少なくはないな。
こうなると、口にする者と口にしない者で差が出そうだ。
特に外から野菜が手に入らない現状では……。
心血がビタミン源となっている可能性が高くなってきたな。
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