30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
248 / 1,640
第3章 救出編

異世界人


「その、私は異世界人ですが、こちらの世界の人々と特に変わりはないと思いますので、今まで通り接してくれれば嬉しいです」

「えっ? 何を言ってるの?」

「……」

 何って、どういう意味だ?

「私はコーキさんが異世界人でも全く気にならないわ。あなたが恩人であることに変わりはないし。ただ、少し驚いただけよ」

 そういうことか。

「ありがとうございます。嬉しいです」

 気にしないという言葉。
 ありがたく受け取っておこう。

「それより、コーキさん、また口調が硬くなってるわよ。もっと、楽に話すって約束したでしょ」

「そうなんだけど、もうすぐシアたちと合流するかもしれないからさ」

「それまでは楽にして」

「……分かった」

「それで、話を戻すけど、あなたが異世界人ってこと周りの人は知っているのかしら?」

「誰も知らないんだ。それで……セレス、お願いなのだけど、異世界人だってことは黙っていてもらえないかな。できれば、ふたりだけの秘密で」

「ふたりだけの秘密……。え、ええ、いいわよ。あなたがそう言うなら秘密にするわ」

「ありがとう。本当に助かるよ」

「そこまで安心するって、秘密が漏れるとまずいことでもあるの?」

 これは……。

 セレス様には話しておいた方がいいかもしれないな。

「異世界人であるという事実が3人に知れたら、この世界に存在できなくなるんだ」

「えっ!? そんな……。嘘でしょ?」

「残念ながら本当なんだよ」

「……そうなの? だったら、私以外のふたりの人に知られたら元の世界に送還されるってこと?」

 理解が早くて助かる。

「そうなるかな」

「本当に……。分かったわ! 絶対誰にも話さない」

「ありがとう」

「いいのよ、そんな事なんでもないわ。あなたが私にしてくれたことに比べたら。それに、会えなくなるのは……」

 ありがたいことだ。
 セレス様の言葉なら信じることができるな。
 秘密にしてくれるのは本当に助かる。

「とにかく、黙ってる!」

「助かるよ」

 これで一安心。

「と、ところで、トトメリウス様が私の停滞を緩和してくださったという話だけど」

 ああ、それも話さないとな。

「どういうことなのかしら?」

「それについては……」


 セレス様がワディンの神娘であることと、その異能についての話は既に聞いている。
 今はほとんど使えないという話もだ。

 なので、彼女のステータス画面を確認し鑑定した結果を伝えることにした。
 ステータス画面に関しては話が長くなるので、今は適当にごまかしながら伝えたんだけどさ。


「……本当なのね」

「本当です。それに、祝福は本来ワディン領でしか使えない力だったようですが、今はワディン領以外でも使えるようです。力は弱まるみたいですけど」

 セレス様の持つ祝福のスキル。
 それは祈りを捧げることで生物、植物などの持つ生命力を増進させるというもの。
 具体的には、成長促進、免疫力向上、HP回復、そんなところかな。
 とにかく、非常に優れた力だ。

「嬉しい……」

 ただ、もう1つの能力である予知はワディン領以外ではほぼ使えないみたいだ。
 それを伝えたところ。

「えっ、だって、それならあれは!? さっきも? でも、ほぼということなら……」

 ひとりでぼそぼそと呟きながら考え込んでしまった。
 が、それも少しの間だけで、その後は祝福が使えるだけありがたいと、喜んでいたな。

 事実を伝えた俺としても一安心といったところだ。

 ああ、そうそう、加護についても伝えたのだが、これに関しは詳細が分からないので加護が存在するという事実だけを伝えるにとどめた。
 まあ、それは既にトトメリウス様に聞いて知っているんだろうけどさ。

 ということで、シアたちに合流する前に話しておきたいことは全て話し終わった。
 日も随分と傾いてきたことだし、そろそろ下山するとしようか。



 歩くこと数分。

「ゴホッ、ゴホッ」

 セレス様が咳込んでいる。

「大丈夫ですか」

「ええ、平気」

 神域を離れてから、咳が増えているんだが……。

「それより、コーキさん。あそこにいるのは?」

「見えてきましたね」

 俺にとっては、随分と久しぶりに見る景色。

 テポレン山と常夜の森の境界に位置する空地が目に入ってきた。
 まだ少し距離はあるが、木々の隙間から空地を眺めることができる。

「シアたちが待ってくれているみたいです」

 シアとアル、それにギリオンとヴァーンベック。
 他にも2人の冒険者っぽい者がいるな。
 あっちは、まだ俺たちに気づいていないようだが。

「本当に到着したのね……。本当に!」

「ええ、到着です」

「よかったぁ……」

「……」

 ああ、本当に良かったよ。

 ここまで苦労したからなぁ。
 感慨ひとしおというのも納得できる。
 俺も胸にくるものがあるし。

 ……。

「セレス様、それで、この後ですが」

「ええ」

「地下大空洞やトトメリウス様のことは秘密で。この20日以上の期間は無かったということで」

 俺が異世界人であることを含めそのあたりの話は複雑なので、もう一切なかったことにしようと2人で決めている。

 そもそも、この世界では数時間しか経過していないのだから。

「分かっているわ」

「では、行きましょうか。それと、口調はこれでいきますからね、セレスティーヌ様」

「分かったわ。いえ、分かりました。ただし、セレスティーヌは止めてくださいね」

「了解いたしました。セレス様」

「では、参りましょうか」

「ご随意のままに」

 恭しく頭を下げたまま右手を差し出す。
 セレス様が俺の手を取る。

「ふふふ、行きましょう」




**************

<セレスティーヌ視点>



 トトメリウス様の神域を出てから、なぜか頭痛が治まらない。
 咳も出るし、呼吸も苦しいような気がする。

 久しぶりに、あの領域を出たからかしら。
 空気の違いなのかな。

 でも、これくらいなら平気。
 もう、そこにシアたちが待っているのだから。
 我慢できる。

 それより、今は。

「コーキさんは……異世界人なのね」

「……そうですね」

「本当なのね」

「ええ、この世界とは異なる世界からやって来ました」

 やっぱりそうなんだ。
 本来なら驚きで呆然とするところだけど、なぜだかスッキリと腑に落ちたような感覚でいっぱいになる。

 だって、コーキさんの今までの行動は、私の知っている誰ともちがう。
 普通の人じゃないって思っていたから。
 だから、異世界人と聞いても納得するだけだった。

 それに、テポレン山の地中で何度か見た夢。
 見たこともない、全く知らない世界に私がいる夢。

 想像もできないくらい高い建物、絵の内容が次々と変化し音まで出る絵画、馬なしで走る馬車……。

 もう何が何だか分からない夢。
 でも、まるで現実のように感じられた。

 あの感覚は予知のもの……。


感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。