30年待たされた異世界転移

明之 想

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第4章 異能編

廃墟ビル 15

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 さて、これで一段落といったところだが……。

「馬鹿な! あの橘さんが、やられるなんて!」

「武志に続いて橘さんまで!」

「そんな! そんなこと……」

「さすがだわ」

「あいつのあの動き、何だよ? オレの身体強化より上なんじゃねえのか!」

「そうかもしれないわね」

「そりゃねえぜ」

「自分で言ったんでしょ」

「……」

「……」

 結界の中の反応は様々。

 って、そんな場合じゃないだろ。
 今は結界の破壊に集中してくれよ。

 まあ、結構派手な戦いを目の前でやってしまったからなぁ。


「あいつ、普通人なんだよな、古野白」

「そう言ってるわね。本人は」

「ホントかよ。普通人なのに、あそこまで」

 完全に目撃されてるよな。

 はぁぁ……。

 それでも。
 それでもだ。

 今回魔法は使っていない。
 最後に少しだけ魔力で身体能力を底上げしたけれど、あの程度なら見逃してくれるはず。
 露見的にも何とか……。

 何とかならないものか……。

「……」

 ステータスを見るのが怖いな。


 喋っている4人とは異なり、鷹郷さんは黙ったままだ。
 ずっと、こっちを見つめている。

 その視線。
 居心地の良いもんじゃない。

 まいった。
 正直、このまま去りたいくらいだよ。
 けど、この結界を無視して立ち去ることはできない。

 それなら、まずは。
 倒れている橘を武志の傍に横たえて。

「結界は解けそうですか?」

 結界に近づき、鷹郷さんに話しかけてみる。

「……時間はかかるが可能だろう」

 自力で解けると。
 確かに、最初から自信ありそうだったな。
 なら、俺が助ける必要もないのか?

「問題はないのですね」

「ああ、心配無用だ」

 そうか。
 これは悪くない状況だぞ。

 ここで結界の破壊まで俺がしてしまったら、疑ってくれと言っているようなもの。
 今さらだとも思うが、もうこれ以上俺の力は見せたくないからな。
 自力で結界を解くことができるというのなら、任せるだけだろ。

「今回は君のおかげで助かった。心から感謝したいと思う」

「いえ……」

「それで、君は何者かな?」

「……」

「古野白君と武上は君のことを知っているようだが」

 これ、どこまで話していいんだ?
 古野白さんは俺のことを鷹郷さんに伝えているのか?

 どうなんだ?

 うん?
 古野白さん、首を振っているな。

 伝えていない。
 そういうことか。

 なら。

「通りすがりの者、ということで」

「通りすがりか」

「……」

「都合の良い通りすがりもいたものだな」

「ええ、まあ」

「通りすがりで、武術の達人。さらに、このふたりの知り合いだと」

「……そうですね」

「それで私が納得すると思っているのかい」

「……」

 思ってはいない。
 けど、仕方ないだろ。
 簡単に話せることじゃないのだから。

 それにだ。
 仮に話すとしても、どこまで話していいものか。
 まずは、古野白さんに相談したい。

 鷹郷さんの後ろで、古野白さんも頷いている。

 と、鷹郷さんの顔色が?

「っ!?」

 どうした?

「君、後ろだ!」

 鷹郷さんの言葉に、後ろを振り向く。

「!?」

 そこには意識を取り戻した橘。

 もう目覚めたのか?
 その早さには驚きだが、もう一度眠らせればいいだけだ。
 瞬間移動を使う前に、さっさと片付け……!?

 何だ?
 あれは?

 橘のすぐ後ろにひとりの少年が立っている。
 明らかに武志より年少。
 小学生か、いや、中学生ぐらいなのか?

 そんな少年が、年齢にそぐわない老成したような笑みを浮かべて立っている。

「……」

 どこから現れた?
 存在も気配もなかったのに?

 が……。
 そんなことより奇妙なのは……。

 透けている?
 いや、少し違う。

 何というか、幽霊のように存在が曖昧な……。

 いったい何なんだ?

 その透けるように薄い存在感。
 しかも、さっきまでいなかった。

 まさか、本当に幽霊?

 なっ?

 今、こっちを見て微笑んだ。
 確かに、俺の目をみた。

「……」

 その奇妙な少年に、思考が捕らわれる。
 怖気が走る。
 身体が止まってしまう。

 すると。

「今日はここまでだ」

 その言葉と共に、橘と武志、それに透けた少年が消えてしまった。


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