30年待たされた異世界転移

明之 想

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第4章 異能編

廃墟ビル 16

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 やられた!
 逃げられてしまった。
 謎の少年に気を取られている隙に、3人に!

「っ!」

 俺がすぐ動いていれば、瞬間移動を防ぐこともできたはずなのに。
 まだ朦朧状態だった橘に油断して……。

 橘だけならまだしも、武志まで逃すなんて!

「逃げられたか」

 結界の中で、低い声を漏らす鷹郷さん。

「……申し訳ありません」

 だが、まだ挽回できる。
 橘を捕まえ、武志を連れ戻すことも。

「すぐ追いかけます」

「君がそこまでする必要はない。もちろん、謝る必要もない」

「いえ、私の責任ですので」

「普通人の君に責任などあるわけないだろ。それに……転移で逃げた橘を追うのは不可能だ」

 不可能じゃない。
 橘の瞬間移動は短距離専用なんだ。
 その上、SPの残量も少ない。

 気配を感知すれば追跡できる!

「転移を使えるのもあと数回だと思います。なら、可能性はありますので」

「……」

「3人を追います」

「3人? どういう意味だ?」

「消えた3人を捕まえに行くということですが」

「橘と結界異能者の2人じゃないのか?」

「……」

 あの透けた少年。
 鷹郷さんには見えていない?

 古野白さんと武上も……。
 不思議そうな顔をしている。

 誰も見ていないのか、あの少年を!

 あいつ……。
 まさか、本当に幽霊?

 そんな馬鹿な!

 けど、俺以外は誰も視認できていない。
 なら、幽霊だと?
 それとも、単に俺の錯覚、幻覚?

 いや、それも……。


「君、大丈夫か?」

「あっ、はい」

 そうだ。
 今は時間がない。
 考えるのは後にして、すぐに動かないと!

「私の勘違いでした。では、2人を追いかけます!」

 その言葉を残し、鷹郷さんの返答を待たずに走り出す。

「君っ!」


 隠れていた里村に合流。
 そのまま非常階段へ。

「有馬君?」

「詳しい説明は後だ。今はあいつらを追う」

「了解!」

 里村が阿吽の呼吸でついて来る。
 
「……里村はここで待ってろ」

「一緒に追うよ」

「駄目だ」

「誰も見てないんだし、問題ないよ」

「……」

「危なかったら、すぐ逃げるから」

 階段を駆け下りる俺の後ろから離れない里村。

「いいでしょ?」

 言い争ってる時間もない、か。

「分かった。ただし、俺の言葉には従ってもらうぞ」

「うん、もちろん!」


 歩を緩め、敵の気配を探りながら非常階段を下り続ける。

「……」

 8階、7階にはいない。
 6階にもいない。

 どこだ、どこにいるんだ?

「……」

 橘の気配ははっきりと覚えている。
 多少離れていても気づけるはず。

 が……5階にもいない。

「あの人たち、どこに消えたんだろ?」

「階下にいるか、既にビルの外か」

 まだ掴めない。

「あれって、瞬間移動なんだよね」

「……ああ」

「この目で見たのに、まだ信じられないよ」

 里村も消える瞬間を見ていたんだな。
 っと、待てよ。

「里村、さっき何人消えたか分かるか?」

「……えっ?」

「瞬間移動で消えたのは何人だ?」

「……2人じゃないの?」

 やはり、里村にも見えていないんだな。

「他に誰かいたの?」

「いや……2人だ」

 そんな話をしながらも、足は止めず。
 非常階段を下りながら感知を続け……。

「……」

「……」

 鑑定によると、橘の瞬間移動の有効範囲は10~15メートル程度。
 1回の発動で地上まで到達できるものではない。
 もちろん、連続で転移を使っているかもしれないが。
 まだビルの中に留まっている可能性もある。

 3階……いないな。

 2階にもいない。

 1階……!?

 間違いない、橘の気配だ。
 正面の入り口付近にいる。



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