30年待たされた異世界転移

明之 想

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第5章 王都編

王都 3

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 心の底から異世界を実感する白都キュベルリアの大通り。
 これだけ多種多様の種族が行き交っているのに……。

 黒髪の者はほとんど見かけない。
 やはり、王都でも黒髪は珍しいのか?
 髪を染めて正解だったかもな。

「……」

 そんな大通り上に存在するのは、人だけじゃない。
 多くの馬車が人に劣ることなく往来している。

 通行している馬車の種類も豊富だ。
 辻馬車に駅馬車、貨物馬車、そして身分の高い人たちが乗っているのであろう高級馬車。
 まさに、色とりどり。
 馬車の展覧会といった様相だよ。

 往来する馬車を眺めているだけでも飽きないな。


 大通りを歩いていて、まず目に入ってくるのは無数の人や馬車。
 その活気に圧倒された後、次に目を奪われるのが通りに立ち並ぶ数多くの店だろう。

 商業区画のこの辺りは色々な店が大通り沿いに軒を連ねている。
 オルドウでも見られる一般的な商店に異国情緒あふれる店と様々だ。

 種々雑多な店々。
 そんな光景を眺めながら歩くのは楽しいし、何より興味が尽きることもない。

「ほんと……」

 歩みが遅くなる一方だ。

 興味を惹かれる店がある度に入店して一通り眺めているので、なかなか前に進まない。
 時間はたっぷりあるのでゆっくり進めばいいとは思うが、その思いがさらに足を遅くしてしまう。

 こんな商品が売ってるんだ?
 これは何に使う物?
 何の魔道具?
 あそこの店は?
 
 店に陳列されている品々に目を奪われたかと思うと。

 いい匂いがする。
 この独特の香りは?
 表で売られているあの肉は魔物肉か?
 何料理を提供しているんだろう?

 多くの料理店を前に足が止まることもしばしば。
 朝食を食べた直後だというのに、入店してしまいそうになる。

「はは」

 楽しいとしか思えない散策に、思わず頬が緩んでしまう。


 カーン、カーン、カーン!

 そんな感じでゆっくりじっくり歩いていると、5刻(10時)の鐘が聞こえてきた。
 オルドウと同様、ここ王都でも深夜を除き1刻(2時間)毎に鐘が鳴らされるようだ。



 遅々とした歩みでも、いずれは目的地に着くというもの。
 ついに、南大門(時忘門)に到着してしまった。

 到着すれば当然、北へ戻るわけだが、その前に。

「……」

 ここまでは、あえて振り返って見ないようにしていた宮城。
 白亜宮を望む絶景。

 そう。
 それは、時忘門からの眺めを楽しむため。

 よーし!

 深呼吸し。
 心構えをして。

 ゆっくりと振り返り。
 白亜宮の方向に目を向け……。

「!?」

「……」

「……」


 絶景であることは分かっていた。
 予想もしていた。

 けれど、これは!!

 眺めとしては、想像通りの構図。
 だけど、受ける印象がまったく違う。
 想像をはるかに超えている。

 言葉も出てこない。


「……」

 中央大通りの真中部分に敷き詰められた真珠色の石畳。
 南大門から北へ伸びる幅5メートルほどの純白の道。
 大通り沿い、左右に並ぶ店舗の白壁。
 そして、その先には……。

 それら全てを従えるかのように屹立する絶白無垢の白亜宮。

「……」

 陽光の下。
 時忘門から白亜宮へと続く白。
 白、白、白!!

 その全てが一体となって光り輝いて……。

 ……。

 ……。


 凄いな。

 美しいという言葉では表現しきれない。
 ひとつの名画のように、至高の芸術作品のように、圧倒的存在感を持って訴えかけてくる。
 見入ってしまう。

 時を忘れて……。




「そろそろ戻ろうか」

 絶景に囚われた意識を取り戻すように、声に出してみる。
 そうでもしないと、ここに留まり続けてしまいそうだから。

「……」

 まだこの眺めを楽しんでいたい気持ちはあるものの、せっかくの王都散策だ。
 北にも足を運んでみたい。

 よし。
 戻ろう。

 時忘門を離れ、南下してきた大通りを北上。
 白亜宮方面に向かって歩を進める。

 南下時に眺めていた店舗なんかにも目をやるが……。
 気づけば顔を上げ、白亜宮を眺めてしまう。

「ふぅぅ」

 これはもう、相当だな。


 ついつい目線を上げながらの危ない足取りで北上を続ける道中。

 カーン、カーン、カーン!

 6刻の鐘だ。

「もう昼食時か」

 適当な店があれば、食事にしよう。
 そう考えながら、歩くこと数分。
 広場が目に入ってきた。

 広場の中には複数の屋台。
 購入した軽食を、広場に座って食べている人も結構いる。

 こうした広場と屋台を見ると、セレス様と散策したオルドウの広場を思い出してしまう。
 あそこでも、軽食を食べたんだよなぁ。

「……」

 ここで昼食にするか。

 ということで、さっそく屋台で軽食を購入。
 広場のベンチに腰掛けていただくことに。


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