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第5章 王都編
招待 2
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白く清廉なる宮城。
何ものにも遮られることなく、その全貌を誇るようにそびえ立つ白亜宮。
宮城へと続く道も一般区とは違う。
通りに敷き詰められた石が、あちらの世界の白大理石以上に白く輝いている。
無数の白石で造られた真白の大通りだ。
「……」
貴族区に足を踏み入れた者を宮城に誘う真珠色の道。
その先には、白き乙女とも称される純白の白亜宮。
白都という呼び名に相応しい……。
「この眺め、美しいですよね」
「ほんっと、いつ見ても壮麗だよなぁ」
絶景を前に立ち止まり見惚れてしまった俺を、急かすことなく待ってくれているふたり。
ありがたいな。
「ええ、本当に美しいです」
「私も最初にここからの白亜宮を見た時は呆然としたものですよ」
「サイラスさんも」
「ええ、これほどの美しさを誇る宮城はそうそうお目にかかれませんからね」
「ということは、これに近い眺めもあるのですか?」
「手前味噌になりますが、我らの王都カーンゴルムにある黒晶宮もなかなかのものですので」
レザンジュの都にある黒晶宮。
「一度観てみたいものですね」
「それなら、是非お越しください。コーキ殿なら大歓迎です」
「ありがとうございます。機会がありましたら、ぜひ」
そうだな。
いつか行ってみよう。
「お越しの際は声をかけてくださいね。宮城で第三騎士隊のサイラスと言えば通じますから」
「ありがたい話ですが、そこまでは……」
王宮に勤める騎士に街案内など頼めないだろ。
「何をおっしゃるのです! エリシティア様と我ら騎士隊の命の恩人なのですよ。案内くらいさせてもらわないと」
「……」
「お待ちしていますからね」
「……」
「では、そろそろ館の方に向かいましょうか」
「ああ、すみません。時間を取らせてしまって」
サイラスさんに先導されて到着したエリシティア様の滞在する館。
白亜宮を見た後だと、どうしても見劣りしてしまうものの、これまた立派な建物だ。
その館の中を、サイラスさんに案内され向かうのはエリシティア様の居室。
謁見の間というほど大層な部屋ではないというが、それでもある程度の礼法が必要とされる場所なんだろうな。
はぁ。
やはり、気後れしてしまう。
そんな思いと若干の緊張感を抱きながら廊下を進んでいると。
先から歩いて来たのは……。
「君は……」
この凛凛と通る声。
鮮やかな濃紺の髪。
「……イリサヴィア様」
剣姫イリサヴィア。
まさか、こんな所で再会するとは。
「あの後は問題などなかったか?」
「はい、特には何も」
「そうか」
こうして再会できたんだ。
話をする前に、まずは。
「イリサヴィア様、先日は危ない所を助けていただき、本当にありがとうございました」
「感謝の言葉はもう要らぬよ。それに、危なかったのはコルドゥラの方であろう」
「いえ……」
「あの者など君の相手にもならんからな」
「……」
もちろん、剣の腕ではそうだ。
けど、そういう問題じゃないよな。
「そのコルドゥラ様とあの家族の件ですが」
無事に処理できたのだろうか?
コルドゥラに報復などされたら、ファミノたちでは対処しようもないぞ。
「彼の者については、上手く片付けておいた。心配は無用だ」
よかった。
これで安心できる。
「ありがとうございます」
「さっきも言ったように感謝は必要ない。そもそも、君が礼を言うことでもないな。それより……」
「はい?」
「……なぜ君が貴族区に、エリシティア様の屋敷にいるのだ?」
「今日は、お招きいただいたものですから」
「冒険者である君がか?」
「はい。私とこちらのジンクさんが、エリシティア様に招待していただきました」
「ふむ……」
そういう彼女もどうしてここに?
貴族位を持っているとはいえ、冒険者が他国の王族の館にいるのはおかしくないか?
「イリサヴィア殿、こちらの方々はエリシティア様の恩人でして」
「殿下の恩人?」
「ええ」
「彼が恩人か……」
王女様の恩人。
そう言われると、ちょっと気が引けてしまうな。
「……」
うん?
何かを考えているのか。
剣姫が口を閉ざしている。
「……」
「……」
「……」
全員が立ち止まったまま、廊下には微妙な空気だけが流れていく。
「……イリサヴィア殿、そういうわけですので、我々はこれで」
と、サイラスさんが上手く事を運んでくれた。
「ああ、そうであった。エリシティア様をお待たせするわけにはいかんな」
「では」
軽く会釈して、エリシティア様の居室に向かうことに。
「ジンクさん、ずっと黙ってましたね」
珍しいことに、いつもは饒舌なジンクが剣姫の前では一言も喋らなかったんだよな。
「剣姫を前にしたもんでなぁ」
萎縮を?
いや、ジンクに限って、それはないだろ。
「剣姫には気圧されるからよ」
「……」
「しっかし、さすがの迫力だったぜ」
迫力があるといえば、そうかもしれないが。
今はかなり気を抑えていたぞ。
こいつ……。
何ものにも遮られることなく、その全貌を誇るようにそびえ立つ白亜宮。
宮城へと続く道も一般区とは違う。
通りに敷き詰められた石が、あちらの世界の白大理石以上に白く輝いている。
無数の白石で造られた真白の大通りだ。
「……」
貴族区に足を踏み入れた者を宮城に誘う真珠色の道。
その先には、白き乙女とも称される純白の白亜宮。
白都という呼び名に相応しい……。
「この眺め、美しいですよね」
「ほんっと、いつ見ても壮麗だよなぁ」
絶景を前に立ち止まり見惚れてしまった俺を、急かすことなく待ってくれているふたり。
ありがたいな。
「ええ、本当に美しいです」
「私も最初にここからの白亜宮を見た時は呆然としたものですよ」
「サイラスさんも」
「ええ、これほどの美しさを誇る宮城はそうそうお目にかかれませんからね」
「ということは、これに近い眺めもあるのですか?」
「手前味噌になりますが、我らの王都カーンゴルムにある黒晶宮もなかなかのものですので」
レザンジュの都にある黒晶宮。
「一度観てみたいものですね」
「それなら、是非お越しください。コーキ殿なら大歓迎です」
「ありがとうございます。機会がありましたら、ぜひ」
そうだな。
いつか行ってみよう。
「お越しの際は声をかけてくださいね。宮城で第三騎士隊のサイラスと言えば通じますから」
「ありがたい話ですが、そこまでは……」
王宮に勤める騎士に街案内など頼めないだろ。
「何をおっしゃるのです! エリシティア様と我ら騎士隊の命の恩人なのですよ。案内くらいさせてもらわないと」
「……」
「お待ちしていますからね」
「……」
「では、そろそろ館の方に向かいましょうか」
「ああ、すみません。時間を取らせてしまって」
サイラスさんに先導されて到着したエリシティア様の滞在する館。
白亜宮を見た後だと、どうしても見劣りしてしまうものの、これまた立派な建物だ。
その館の中を、サイラスさんに案内され向かうのはエリシティア様の居室。
謁見の間というほど大層な部屋ではないというが、それでもある程度の礼法が必要とされる場所なんだろうな。
はぁ。
やはり、気後れしてしまう。
そんな思いと若干の緊張感を抱きながら廊下を進んでいると。
先から歩いて来たのは……。
「君は……」
この凛凛と通る声。
鮮やかな濃紺の髪。
「……イリサヴィア様」
剣姫イリサヴィア。
まさか、こんな所で再会するとは。
「あの後は問題などなかったか?」
「はい、特には何も」
「そうか」
こうして再会できたんだ。
話をする前に、まずは。
「イリサヴィア様、先日は危ない所を助けていただき、本当にありがとうございました」
「感謝の言葉はもう要らぬよ。それに、危なかったのはコルドゥラの方であろう」
「いえ……」
「あの者など君の相手にもならんからな」
「……」
もちろん、剣の腕ではそうだ。
けど、そういう問題じゃないよな。
「そのコルドゥラ様とあの家族の件ですが」
無事に処理できたのだろうか?
コルドゥラに報復などされたら、ファミノたちでは対処しようもないぞ。
「彼の者については、上手く片付けておいた。心配は無用だ」
よかった。
これで安心できる。
「ありがとうございます」
「さっきも言ったように感謝は必要ない。そもそも、君が礼を言うことでもないな。それより……」
「はい?」
「……なぜ君が貴族区に、エリシティア様の屋敷にいるのだ?」
「今日は、お招きいただいたものですから」
「冒険者である君がか?」
「はい。私とこちらのジンクさんが、エリシティア様に招待していただきました」
「ふむ……」
そういう彼女もどうしてここに?
貴族位を持っているとはいえ、冒険者が他国の王族の館にいるのはおかしくないか?
「イリサヴィア殿、こちらの方々はエリシティア様の恩人でして」
「殿下の恩人?」
「ええ」
「彼が恩人か……」
王女様の恩人。
そう言われると、ちょっと気が引けてしまうな。
「……」
うん?
何かを考えているのか。
剣姫が口を閉ざしている。
「……」
「……」
「……」
全員が立ち止まったまま、廊下には微妙な空気だけが流れていく。
「……イリサヴィア殿、そういうわけですので、我々はこれで」
と、サイラスさんが上手く事を運んでくれた。
「ああ、そうであった。エリシティア様をお待たせするわけにはいかんな」
「では」
軽く会釈して、エリシティア様の居室に向かうことに。
「ジンクさん、ずっと黙ってましたね」
珍しいことに、いつもは饒舌なジンクが剣姫の前では一言も喋らなかったんだよな。
「剣姫を前にしたもんでなぁ」
萎縮を?
いや、ジンクに限って、それはないだろ。
「剣姫には気圧されるからよ」
「……」
「しっかし、さすがの迫力だったぜ」
迫力があるといえば、そうかもしれないが。
今はかなり気を抑えていたぞ。
こいつ……。
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