30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

ローンドルヌ河 7

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<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>



「決行日はコーキさんから連絡をいただいた後に、決めたいと思っています」

「渡河の決行日ではありません」

 だったら、何の決断を?
 
「戻るなら今だということです」

 その話はもう済んでいる。

「戻らないと決めましたよね」

「ローンドルヌからの撤退についてではなく、セレスティーヌ様の退避についてです」

 撤退でなく退避?

「それは、同じではないのですか?」

「セレスティーヌ様はワディン戦役が始まったおり、オルドウに避難されておりました」

「……」

「閣下の深い思いがあったればこその措置です」

 隊長の言う通りだけど、だから何?

「閣下が健在で、こうして南部で再起を図るようになった現状。あなた様がそれに付き合う必要はありません」

「……」

「もう一度オルドウに退避するという考えはございませんか?」

 ああ、なるほど。
 そういうことだったのね。

「以前お尋ねした際は、閣下と合流されるまでとお答えになられました」

 そうだ。
 父に合流して話し合う。
 それがわたしの目的だった。

「行先がワディナートからトゥレイズに変わり、道行きも困難な今。セレスティーヌ様が無理をされる必要などないのではないかと」

「……」

「ワディン戦役前のように、オルドウに避難すべきではないかと」

 ルボルグ隊長は、わたしのオルドウ避難を望んでいる。

「私はそう考えております」

「……」

 オルドウへの避難。
 確かに、それが正解なのかもしれない。

「オルドウを選ぶのであれば、ディアナ、ユーフィリア、シアをあなた様に同行させましょう」

 オルドウに退避し、本来の形に戻る。
 無難で安全な行動だと思う。

 でも、私の中の何かが、それを拒否している。
 トゥレイズに向かうように叫んでいる。
 トゥレイズで神娘の力が必要になると。

「……」

 あの隠れ里で倒れ意識を失って以降、わたしは神娘の力が使えなくなっている。このままだと、トゥレイズの城塞に入っても力になれないだろう。それどころか、ただの足手まといになってしまう。

 けど、それなら。
 役に立てるようになればいい。
 今も曖昧なわたしの記憶をしっかりと取り戻せば、神娘の力も戻ってくる。
 だから、トゥレイズ到着までに記憶を回復させ。
 お父様を助ける!


「ルボルグ隊長。あなたの考えはよく分かりました。心遣い、感謝します」

「それでは、オルドウに?」

「いいえ、わたしはローンドルヌ大橋を渡り、トゥレイズに向かいます」




********************




 村を出た俺は、ローンドルヌ河を目指しひたすら足を動かし続ける。

 雲ひとつない晴天の街道。
 道端を照らす日は優しく、頬を撫でる風はこの上なく気持ちがいい。

「……」

 穏やかで心地良い街道行。
 道を行き交う人の顔も穏やかなものばかり。
 長閑さに溢れている。

 先に待ち受ける任務を忘れてしまう程の安楽な空気……。

 これは、良くないな。
 心が緩んでしまいそうだ。

 そんな歩みを続けていると。
 前方にローンドルヌ大橋が見えてきた。

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