30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

到着

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 ドッガァァーーン!!

 轟音を立て、橋の中央で横転した馬車。
 誰かが外に投げ出されたのか?

「……」

 分からない。
 通常なら見える距離でも、この視界の悪さだ。
 はっきり視認できないぞ。

 ただ、あの馬車は……。

 セレス様が、幸奈が乗っている馬車では!

「っ!」

 幸奈の姿、セレス様の姿はどこに?
 見つからない。

 ということは馬車の中?
 それとも?

 この雨なのに、焦りで汗が噴き出してくる。

 けど、もう橋に着いてる。
 なら、駆けつければいい。
 倒れた馬車へと走るだけだ。

「くっ!」

 が、レザンジュ王軍とワディン騎士たちが入り乱れた橋上。
 上手く進むことができない。

 邪魔が多すぎる。
 剣で道を切り開いても、これじゃ遅すぎる。

 それでも、無理やり強引に押し通っていく。


「コーキ? コーキか!」

「ヴァーン。セレス様はどこだ? 馬車に乗っていたのか?」

「ああ、馬車の中にいるはずだぞ。シアと一緒にな」

 やっぱり!
 シアも一緒に!

「って、お前どうしてここに?」

 戦闘に気付いたからに決まってるだろ。

「そんなことより、セレス様を助けに行くぞ!」

「助けに行く?」

 こいつ、気付いてない?

「馬車が横転したんだ!」

「何!?」

「行くぞ!」

「……分かった」

 顔をひきつらせたヴァーンが後ろからついてくる。

「ああぁぁ!」

「おおぉぉ!」

 ザン!
 ザシュッ!

 押し寄せる王軍兵を斬り捨て。
 前へ。

「アイスアロー!」

「ストーンボール!」

 キン!
 ガン!

 魔法を叩き割り。
 幸奈のもとへ。

 ザン、ザン!
 ザッ、ザシュッ!

「「ああぁ」」

「「ううぅ」」

 剣を振るい。

「雷撃!」

「雷波!」

「「「「「ああぁぁ……」」」」」

 魔法を放ち。
 ただ前へ進み続ける。

「雷波!」



 僅かな時間でかなりの敵兵をなぎ倒し。
 ようやく、そこに馬車が見えてきた。

 幸奈は馬車の中か?
 外か?

 どこだ?

「ヴァーン!」

「分かってる」

 まず、馬車の中を探……。

「っ! シア!」

 シアが橋の中央に倒れている。
 やっぱり、馬車から投げ出されてたのか。

「しっかりしろ、シア、シア!」

「うぅ……ヴァーン?」

「シア!」

 駆け寄ったヴァーンの腕の中で意識を取り戻したシア。
 大きな外傷は見当たらない。

「頭は、体は、大丈夫か?」

「……平気。セレス様は?」

 シアは大丈夫?
 なら、幸奈は?
 どこにいる?

 いた!

 欄干のすぐそばに横たわっている。
 その右手が橋の外?
 何をしているんだ?

「ユーフィリアさん、すぐ助けが来ますから」

 助け?
 ユーフィリアが橋から落下しかけているのか?
 幸奈はその手を掴んで?

「!?」

 待ってろ。
 今助けてやるからな!

「なっ!?」

 欄干が!!

「「「セレスティーヌ様!!」」」

 欄干が崩れ、幸奈が橋の外へ!!

 ザッバーーン!!

「そんな……」

 信じられない。
 目の前の光景に思考が止まってしまう。
 呼吸を忘れてしまう。

「セレスさん!」

「セレス様ぁ!!」

「オオーン!」

 ヴァーンとシアが俺の傍らに。
 ノワールも。

「コーキ?」

 ああ、呆然としている場合じゃないよな。
 どこであろうと助けに行くだけだ。

「馬鹿、この激流を見てみろ」

「その激流のローンドルヌ河にセレス様は落ちたんだぞ」

 止めるヴァーンの手を払い。

「セレス様は必ず助け出す!」

「コーキ!」

「先生!」

「クウーン」

「だから、こっちは頼むぞ」

「「「……」」」

「それと、王軍の兵はこんなにはいない。これは敵の幻術だ」

「っ? 幻術?」

「ああ」

「……10倍もいねえってことかよ」

 事前の情報通り敵兵はワディンの5倍程度。
 この混線でどうなってるか判別しがたいが、おそらく大きな変化はないだろう。
 
 とはいえ、苦戦必至の兵力差に変わりはない。
 本来なら、何をおいても加勢したいところだが。

 今は幸奈を優先しなきゃいけない!

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