30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

治療

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<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>


「お父様!」

「……大丈夫、もう痛みも感じないくらいだよ」

「本当に?」

「本当だとも」

 けど!
 コーキさんの治癒魔法の光に照らされたお父様の顔色は蒼白いまま。
 血色が戻らない!

「傷口は塞がり痛みも消えた」

「お父様……」

 治療の必要がないくらい回復したの?
 顔の色も戻ってくるの?

「素晴らしい治療に心から感謝するよ、コーキ殿」

「いえ……」

「ということで、治療はもう十分だ」

「まだ治療を続けた方がいいです。傷は皮膚表面だけではありませんので」

「……」

「お父様、コーキさんに任せて、お願い!」

 せめて顔色が戻るまでは治癒魔法を受けてほしいから。

「……分かったよ。コーキ殿、頼めるかな?」

「もちろんです」

 よかった。
 治療を続けてくれて。
 魔力を消費し続けるコーキさんには申し訳ないけれど。



「閣下!」

 治療を受け続けるお父様のもとに駆け寄ってきたのはルボルグ隊長。

「ルボルグ、無事か?」

「はっ」

 隊長に怪我はない。
 みんなは?
 戦闘は?

「セレス様、我らの勝利です」

「……」

 シアさんの言う通り。
 樹林の中に立っているトゥレイズ兵はほとんどいない。

 でも、5倍の兵数だったのに?
 ワディン騎士が完全勝利を?


「ルボルグよ、騎士たちは?」

「傷を負っている者は多いですが、幸い命に別条はございません」

「そうか!」

「コーキ殿とノワール殿のおかげです」

「うむ。コーキ殿には世話になりっぱなしだな」

「はっ」

「で、子爵は?」

「申し訳ありません。逃がしてしまいました」

「通路を通って城塞に戻ったのだな?」

「……」

 そんな!
 お父様を害したトゥレイズ子爵が護衛のトゥレイズ兵とともに城塞に逃げ帰ったの?

「今からあとを追い、討ち果たしますので」

「その必要はない」

「ですが、奴は逆賊です」

「逆賊であろうと、今は捨て置け」

「……」

「通路の先には、トゥレイズの新手もいるであろう。ならば、ここにいる騎士たちの命を優先すべきだ」

「……申し訳ございません」

「気にするでない。その方らのおかげで、こうしてセレスも無事なのだからな」

「閣下……」

「うむ……ゴホッ!」

「お父様?」

 治まっていた咳がまた。

「ゴホッ、ゴホゥ!」

 お父様の口元に血?
 咳とともに血が出て!?

「お父様!!」

「閣下!!」

「だいじ……ゴホッ、ゴホッ!」

 咳も血も止まらない。
 コーキさんの魔法は続いているのに、なぜ?

「閣下、私も治療を!」

「私も!」

 喀血に気づいた治癒魔法を使える2人の騎士がお父様の傍らに。

「おまえたち、急ぐんだ!」

「「はっ!」」

 2人が治癒魔法を発動した。

 コーキさんの治癒魔法は?

「コーキさん?」

「今、全力で治癒魔法を行使しています。ですが……」

 コーキさんの額には大粒の汗。
 さっきからずっと頑張ってくれているんだ。

 だったら。
 3人同時の治癒魔法があれば。

「ゴホッ、ゴホッ、ゴホゥ!!」

 えっ!?

 大量の喀血!!
 それに吐血も!!

「お父様ぁ!!」

 どうして?
 どうして!?

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