837 / 1,578
第8章 南部動乱編
昏睡?
しおりを挟む
「セレス様」
「セレスさん」
「……」
アルとヴァーンが声をかけるが、返事は戻ってこない。
寝台の上で眼を閉じたまま、身動ぎひとつしない幸奈。
その傍らには、ディアナとユーフィリアが控えている。
「ディアナさん、セレス様の様子に変化は?」
「……さっきと同じだ」
当然のことながら、室内の空気は重い。
「セレス様……。起きてください、セレス様」
もちろん、シアの声にも反応は見られない。
「……」
心配そうに見つめるシア、ディアナ、ユーフィリア。
「やっぱり、あの時と同じに見えるぞ」
「だったら、またこのまま数日?」
「前回と全く同じならな」
「同じわけがない。今回は力を使われていないのだから」
「……」
「……」
「……」
おそらく、辺境伯救出後の昏睡状態は神娘力の過剰行使と魂替の影響によるものだったのだろう。
では、今回は?
軽く調べたところ、毒や呪いとは思えないが……。
「先生?」
意識が戻らない原因は不明。
治療法も分からない。
それでも、息があるなら何とかなる。
命さえ無事ならやり様はある。
「セレス様は大丈夫ですよね?」
「ああ」
「そうだぜシア。結局前回も平気だったし、今回はコーキもついてんだからよ」
「……うん」
「コーキ殿、何か手があるのだろうか?」
ディアナが強い眼差しで、こちらを見上げてくる。
ユーフィリアとシアも、アルにヴァーンまで。
「治癒魔法がいいんじゃねえか?」
「そうだ、コーキさんの魔法なら効果あるはずだって」
「……試してみよう」
まずは治癒魔法。その後は魔法薬か。
「先生、お願いします」
皆にはセレス様から少し離れてもらい、ひとり寝台横に腰掛ける。
収納から魔法薬を取り出し、魔力と気を整え……治療の準備は完了。
治療開始、のその前に。
「一応確認しておきたいのだが、昨夜俺たちがこの部屋を出た後、何か変わったことはなかったか? 些細なこともでいいから、気になることがあったら教えてほしい」
「わたしは……何もないです」
「私もないな」
シアもディアナも不審に思う所はないのか。
「ユーフィリアは?」
「……明け方に外で物音がしたような気がする。セレス様の状態に関係ないかもしれないし、聞き間違いの可能性もあるけれど」
その時間に感知にかかる不審者はいなかったが……。
「酒を飲んだ後だしよ、酔っぱらったやつが外を歩いてたんじゃねえか」
確かに、外を歩く者は数人感知している。
ただ、彼らにあやしいところは感じられなかった。
「私もそう思う。ただ、気付いたことといえばそれくらいだから」
「……」
襲撃がなかったことは動かしようのない事実。
あやしい気配の者が近づいてこなかったこともほぼ間違いない。
なら、ユーフィリアが聞いた物音を気にする必要も……。
「とりあえず治療しようぜ、コーキ」
「……そうだな」
今は色々と考えるより、幸奈の覚醒を優先した方がいいだろう。
「治療を開始する」
魔法発動と同時に寝台の上に光が溢れ出す。
今回は負傷部位の治療じゃない。
なので、まずは全身に余すところなく治癒の光を行き届かせ。
光の束で織り込むように幸奈を包んでやる。
「「「「「……」」」」」
固唾をのんで見守る5人の前で、ゆっくり治療を進めていく。
「「「「「……」」」」」
この世界に戻ってきた当初は全く自信を持てなかった治癒魔法。
ただ、それから今日まで俺は様々な経験を積んできた。
エンノアの民の病を癒し、魔落で何度も治療を行い、その後も数えきれない程治癒魔法を行使し続けてきた。結果、それなりのモノになったという思いもある。
だから今は、自信を、自負を持って治療を進めるだけだ。
「「「「「……」」」」」
治癒の光で包み込んだ幸奈を安定した状態に保ち、慎重に気を体内に送り込む。
幸奈の内部に停滞があれば、俺の気を通すことで確認できるはず。
「……」
ここじゃない。
そこでもない。
「……」
どの臓器にも問題は見られない。
だったら……。
ん?
妙な感触だが……。
やっぱり、そうだ。
この部分が普通じゃないな。
「セレスさん」
「……」
アルとヴァーンが声をかけるが、返事は戻ってこない。
寝台の上で眼を閉じたまま、身動ぎひとつしない幸奈。
その傍らには、ディアナとユーフィリアが控えている。
「ディアナさん、セレス様の様子に変化は?」
「……さっきと同じだ」
当然のことながら、室内の空気は重い。
「セレス様……。起きてください、セレス様」
もちろん、シアの声にも反応は見られない。
「……」
心配そうに見つめるシア、ディアナ、ユーフィリア。
「やっぱり、あの時と同じに見えるぞ」
「だったら、またこのまま数日?」
「前回と全く同じならな」
「同じわけがない。今回は力を使われていないのだから」
「……」
「……」
「……」
おそらく、辺境伯救出後の昏睡状態は神娘力の過剰行使と魂替の影響によるものだったのだろう。
では、今回は?
軽く調べたところ、毒や呪いとは思えないが……。
「先生?」
意識が戻らない原因は不明。
治療法も分からない。
それでも、息があるなら何とかなる。
命さえ無事ならやり様はある。
「セレス様は大丈夫ですよね?」
「ああ」
「そうだぜシア。結局前回も平気だったし、今回はコーキもついてんだからよ」
「……うん」
「コーキ殿、何か手があるのだろうか?」
ディアナが強い眼差しで、こちらを見上げてくる。
ユーフィリアとシアも、アルにヴァーンまで。
「治癒魔法がいいんじゃねえか?」
「そうだ、コーキさんの魔法なら効果あるはずだって」
「……試してみよう」
まずは治癒魔法。その後は魔法薬か。
「先生、お願いします」
皆にはセレス様から少し離れてもらい、ひとり寝台横に腰掛ける。
収納から魔法薬を取り出し、魔力と気を整え……治療の準備は完了。
治療開始、のその前に。
「一応確認しておきたいのだが、昨夜俺たちがこの部屋を出た後、何か変わったことはなかったか? 些細なこともでいいから、気になることがあったら教えてほしい」
「わたしは……何もないです」
「私もないな」
シアもディアナも不審に思う所はないのか。
「ユーフィリアは?」
「……明け方に外で物音がしたような気がする。セレス様の状態に関係ないかもしれないし、聞き間違いの可能性もあるけれど」
その時間に感知にかかる不審者はいなかったが……。
「酒を飲んだ後だしよ、酔っぱらったやつが外を歩いてたんじゃねえか」
確かに、外を歩く者は数人感知している。
ただ、彼らにあやしいところは感じられなかった。
「私もそう思う。ただ、気付いたことといえばそれくらいだから」
「……」
襲撃がなかったことは動かしようのない事実。
あやしい気配の者が近づいてこなかったこともほぼ間違いない。
なら、ユーフィリアが聞いた物音を気にする必要も……。
「とりあえず治療しようぜ、コーキ」
「……そうだな」
今は色々と考えるより、幸奈の覚醒を優先した方がいいだろう。
「治療を開始する」
魔法発動と同時に寝台の上に光が溢れ出す。
今回は負傷部位の治療じゃない。
なので、まずは全身に余すところなく治癒の光を行き届かせ。
光の束で織り込むように幸奈を包んでやる。
「「「「「……」」」」」
固唾をのんで見守る5人の前で、ゆっくり治療を進めていく。
「「「「「……」」」」」
この世界に戻ってきた当初は全く自信を持てなかった治癒魔法。
ただ、それから今日まで俺は様々な経験を積んできた。
エンノアの民の病を癒し、魔落で何度も治療を行い、その後も数えきれない程治癒魔法を行使し続けてきた。結果、それなりのモノになったという思いもある。
だから今は、自信を、自負を持って治療を進めるだけだ。
「「「「「……」」」」」
治癒の光で包み込んだ幸奈を安定した状態に保ち、慎重に気を体内に送り込む。
幸奈の内部に停滞があれば、俺の気を通すことで確認できるはず。
「……」
ここじゃない。
そこでもない。
「……」
どの臓器にも問題は見られない。
だったら……。
ん?
妙な感触だが……。
やっぱり、そうだ。
この部分が普通じゃないな。
24
あなたにおすすめの小説
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-
すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン]
何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?…
たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。
※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける
縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は……
ゆっくりしていってね!!!
※ 現在書き直し慣行中!!!
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。〜少年アレクの倫理で殴る学園ファンタジー〜
鮒捌ケコラ
ファンタジー
入学式から3週間目にして『退学」を言い渡された。
(早くない?RTAじゃないんだからさ。)
自分で言うのもアレだけど、入学してからは結構真面目に通ってた。
けど、どうやら教員の不況を買ってしまったらしい。
幸か不幸か、退学まで1週間の執行猶予が与えられた。
けど、今更どう足掻いても挽回する事は不可能だろうし、
そもそも挽回する気も起こらない。
ここまでの学園生活を振り返っても
『この学園に執着出来る程の魅力』
というものが思い当たらないからだ。
寧ろ散々な事ばかりだったな、今日まで。
それに、これ以上無理に通い続けて
貴族とのしがらみシミッシミの薬師になるより
故郷に帰って自由気ままな森番に復職した方が
ずっと実りある人生になるだろう。
私を送り出した公爵様も領主様も、
アイツだってきっとわかってくれる筈だ。
よし。決まりだな。
それじゃあ、退学するまでは休まず毎日通い続けるとして……
大人しくする理由も無くなったし、
これからは自由気ままに、我儘に、好き勝手に過ごす事にしよう。
せっかくだし、教員達からのヘイトをカンストさせるのも面白そうだ。
てな訳で………
薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。
…そう息巻いて迎えた執行猶予満了日、
掲示板に張り出された正式な退学勧告文を
確認しに行ったんだけど……
どういう事なの?これ。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる