30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

冷たい

「「「「「セレスティーヌさま!!」」」」」

「「「「「セレスさまぁぁ!!」」」」」

「……」

「そんな……」
「嘘だ!」
「セレス様……」

「ワディンの神娘が……」
「どうして……」

「白が……」
「黒が健在なのに白だけが……」

「「「「「ああぁぁ」」」」」

「「「「「……」」」」」

「「「「「……」」」」」


 腕に感じるこの軽さ。
 消えていく温もり。
 どれだけ経験しても慣れることはない。
 こんなこと、慣れるわけがない。

 ただ……。

 残酷な現実の前に打ちのめされるばかり。

「……」

 また……。
 また、俺は失ってしまった。

 これで何度目?
 何度目なんだよ。

 くそっ!

「……」

「……」

「……」


 けど、まだだ。
 まだ手が残されている。
 時間遡行を使えるんだ。

 そう。
 これも過去に何度も経験したこと。
 4時間前に戻ればいい。
 
 だから、冷静に。
 今だけは感情を捨て、情動を消し去れ。

 冷静に、冷徹に……。

「ふうぅ」

 深呼吸をひとつ、ふたつ。

「ふぅぅぅ」
 
 さらに重ねて……。


 よし。
 ここからが勝負だ!

 まず、今回は俺ひとりじゃない。
 時間的な猶予も少しはあるはずだから、今すぐに遡行する必要もない。

 なら、調べるべき。
 時間遡行を使う前に、可能な限り多くのことを調査すべき。
 直接の死因、原因を。
 魔法なのか、呪いなのか、毒なのかを。

 抱えていたセレス様を床に……。

 床に横たえ、立ち上がる。
 表情を消し、皆に向き直る。

「セレス様の症状に心当たりのある方はいませんか?」

 多くのことを調べたいが、時間がどれほど残されているのか分からない現状では、ゆっくり調べている余裕まではない。

「そんなことより、先生、まだ何とか! 何とかならないんですか!?」

「そうだぜ。原因なんかより、まずは救命だろ。で、蘇生だろうが!」

「シア、ヴァーン……」

 2人がセレス様の手を取り、治療を始めようとしている。
 アルも……。

「「「「「コーキ殿!」」」」」

 他の騎士たち、皆がセレス様を囲み、こちらに冷ややかな視線を投げてくる。

「……」

 そうだよな。
 それが普通の感情だよな。
 簡単には諦められないよな。

 分かってる。
 けど、こっちは違うんだ。
 不可能だと誰より知っているんだ。

 それに、言い訳や説明に時間を割いている場合でもない。

「残念だが……もう助けることはできないだろう」

「そんな……」

「助けられないなら、早急に犯人を探すべき。そのためには原因を特定しなきゃならない」

「おめえ……冷てえな」

「コーキさん! ここに倒れているのはセレス様なんだぞ!」

「……」

「分かってんのか!」

 そんなことは百も承知だ。

「倒れたばかりのセレス様の前で、よくも!」

「……」

「よくも、そんなことを!」

 アル……。

「ふたりの関係はそんなもんだったのかよ!」

「……もう一度言う。救命も蘇生もできない」


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