30年待たされた異世界転移

明之 想

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第9章 推理編

因果

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 高速のアイスアローが貴賓席に座るセレス様のもとに飛来する。

「「「「「きゃあぁ!!」」」」」
「「「「「セレス様!!」」」」」

 この距離でこの速さ。
 普段なら慌てるところだが、十分に警戒していた今は違う。

「ストーンウォール!」

 いつ何が起きてもすぐ発動できるよう準備していた魔法を発動。

「えっ!?」

 と同時にセレス様を庇うように抱きかかえ、後方に跳躍。
 さらに念のため。

「ストーンウォール!」

 2重の防壁を作り上げる。

 ドゴッ!

 直後、飛来したアイスアローが前方のストーンウォールに激突!

 ガガガッ!!

 驚くことに、アイスアローの勢いが衰えない。
 推進力を保ち防壁の表面を削り続けている。

 ガガッ……。

 ただ、それも数秒のこと。
 込められていた魔力が消失し地面に落下、そして……。

 バリーン!

 砕け散った。

「「「「「……」」」」」
「「「「「……」」」」」
「「「「「……」」」」」

 突然の凶弾に、貴賓席は言葉を失ったまま。
 驚愕と静寂が広場を支配している。

 俺はといえば、ストーンウォールを保持し防壁を展開中。
 警戒を緩めてはいない。

「……」

 いつ、どんな場面で、誰が何を使って仕掛けてくるのか、何もかも全く分からない状況。今この瞬間に隙をついてくる可能性も十分に考えられる。目に見えるもの、見えないもの全てを警戒し探り続けるしかない。

 しかし……。

 今回の魔法。
 ユーフィリアが放ったこれまでの攻撃魔法とは隔絶した威力を誇っていた。
 ストーンウォールに阻まれてなお勢いが消えない推進力を持つアイスアローが、真っ直ぐにセレス様に向かって飛んできた。

 ただ、あの跳弾が意図的なものだとは考えづらい。
 もちろん、ユーフィリアが犯人だとも思えない。
 なら……彼女は己の技量を隠していたのか?
 これまで共に数々の死線をくぐり抜けて来たのに?

 あるいは、最高出力が偶然出たと?
 さらに偶然アイスアローの進路が逸れてセレス様を襲ったと?
 全ては偶然……?

 単なる偶然、そう片付けていいものなのか?
 一度目じゃないのに?

 エンノアで最初に時間遡行した、あの時。
 戦勝を祝う宴でルボルグ隊長とワディン騎士たちが剣とファイヤーボールの芸を披露し、ファイヤーボールが幸奈に飛来した。当時は、偶然の事故だと納得したけれど……。

 ともにセレス様の悲劇直後、遡行でやり直した際に起こっている。
 まるで、事実が強制力を持って迫って来るように。

「……」

 やはり、因果は収束する性質を持っているのか?
 セレス様の命を奪おうとしているのか?
 だとすれば、これまでにも収束事象が起こっていたと?

 ユーフィリアのアイスアロー、ルボルグ隊長や騎士たちによるファイヤーボール、ニレキリの毒、エレナさんの腐敗した甘味。セレス様の咳。
 偶然と見えるこれら全てが必然である可能性も……。

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