30年待たされた異世界転移

明之 想

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第9章 推理編

媒介

「教えてくれ!」

「ふーん、取り繕うこともしませんか」

 だから、そんなことをしている場合じゃないんだ。

「知っているんだろ、侵入方法を」

「……」

「どうなんだ!」

「そんな様子を見せられちゃあ、会話を楽しむこともできませんよ。はぁ~、仕方ないなぁ、もう」

 やはり、侵入方法を把握しているんだな。

「でも、分かってますよね?」

「……借りは返す」

「さすが有馬さん、いい返事です」

「……」

 壬生少年に借りを作るなんて、決して褒められたもんじゃない。
 そんなこと分かっている。
 けど、今はこうするしかないだろ。

「それで?」

「……媒介物ですよ」

 何?

「空間異能者が使用した媒介物を探してください」

「どういうことだ?」

「うーん、ぼくも詳しくはないんですけどね。あそこは、この世界に重なるようでいて決して交わることのない異質な空間らしいんですよ」

「異能者が創り出した固有の異空間ってことか?」

「固有かどうかは定かじゃありません。うん? そもそも創り出したものなのかな?」

「……」

「それすら怪しいですねぇ」

 異能者が創ったんじゃない?

「創造したのではなく、そこに入り込んだだけ……? やっぱり、良く分からないなぁ」

「……」

「とにかく、こことは別の場所に存在している空間。異なる位相ってかんじです」

「位相空間……」

「そうそう、そんなイメージですね」

 分かったような、分からないような。
 が、そんなことより。

「媒介物とは何なんだ?」

「異なる位相に移動する際、こちらに戻るための経路を残す必要があるんですよ。それがないと、上手く戻れない。永遠に位相を漂うことになるみたいです」

「……」

「異なる位相は無限に存在するらしいので」

 新たに創ったのか元々存在したのか分からないが、無限に存在する位相空間の中の1つに移動したと。そこから元の世界に戻るためには経路が重要だと。

「経路確保に必要なのが媒介物。異能者の所有物であるそれを目印にして道を確定するようですね」

「つまり、その媒介物を使えば、ここからも位相空間に渡れるってことだな?」

「多分?」

 多分だと!

「渡れないのか?」

「どうなんでしょ? ぼくも試したことはありませんから。それに、媒介物の使い方も知りませんし」

 自身では媒介物を利用して渡ったことがない。
 使い方も知らない。
 成否も……。

「話が違うぞ」

「えっ? ぼくは最初から何も断定してませんけど」

「……」

「やだなぁ、そんな怖い顔しないでくださいよぉ。多分、大丈夫ですから」

「……」

「有馬さんなら、できますって」

 成否は分からない。
 けど今は、媒介物を使うしか術はない。
 それを試すしかない。

「で、その媒介物はどこにある?」

「……さあ?」

 それも不明なのか!

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